なぜ、すぐに間取りを描かないのか
家づくりの相談をすると、
多くの人が期待します。
「どんな間取りになるのか」
早く見てみたい。
形にしてほしい。
それは、
とても自然な気持ちです。
けれど、
すぐに間取りを描かないことがあります。
理由は、
描けないからではありません。
まだ描かないほうがいいと
考えているからです。
間取りは、
見える形です。
だからこそ、
一度出てくると、
その形に引っ張られます。
ここがリビング。
ここが寝室。
線が引かれた瞬間、
思考はその中で
動き始める。
けれど、
その前に必要な時間があります。
どんな暮らしを
したいのか。
どんな時間を
大切にしたいのか。
どこに
安心を感じるのか。
それらが
まだ曖昧なまま、
先に間取りを描いてしまうと、
あとから
違和感を修正する作業に
なってしまうことがあります。
設計は、
線を引くことより、
線を引く理由を
見つけることのほうが
大切です。
なぜ、この位置なのか。
なぜ、この広さなのか。
その問いに
答えられる状態で
初めて、
間取りは
意味を持ちます。
急いで描けば、
それらしくは見える。
けれど、
それが本当に
自分たちに合っているかどうかは、
また別の話です。
少し遠回りに見えるかもしれません。
話をして、
考えを整理して、
価値観を見つめる。
その時間を経てから、
はじめて線を引く。
すると、
間取りは
単なる配置ではなく、
暮らしの意図を持った形になります。
すぐに描かないのは、
遅れているからではなく、
深く考えているから。
見えない時間を
大切にすることで、
見えたときの形が、
より自分たちらしくなる。
間取りは、
早く出すことが
価値ではありません。
納得できる形で
現れることに、意味があります。
だから、
すぐに描かなくていい。
その待つ時間が、
設計を
静かに支えているのだと
感じています。