なぜ“いい家”なのに満たされないのか |後悔しない家づくりのための暮らしの認識と、上質な住まいへと導く設計の感度

ユーザー やまぐち建築設計室 山口 哲央 の写真

住まいづくりを考え始めたとき、

多くの方が最初に求めるのは「正解」です。

どのような間取りが良いのか。

どのような動線が使いやすいのか。

収納はどれくらい必要なのか。

どのようなデザインが心地よく感じられるのか。

現代は情報が豊富であり、

調べればいくらでも

答えのようなものに辿り着くことができます。

それらはどれも有益であり、

決して間違いではありません。

しかし、

その一つひとつを丁寧に積み重ねたとしても、

完成した住まいの中で、

こう感じることがあるだろうなと思います。

「整っているはずなのに、どこか落ち着かない」

「便利なのに、なぜか満たされない」

この違和感は、

現代社会を反映していると思います。

むしろ、住まいづくりにおいて

最も見落とされやすい「本質」に

触れているサインのようなものです。

■“いい家”が満たされない理由

整えられた間取り。

合理的に計画された動線。

美しく調和した素材とデザイン。

それでもなお満たされない理由は、

設計に至る前の「認識」と「軸」が

整っていないことにあります。

住まいとは、

そこにある「カタチ」だけで

満たされるものではありません。

人生の時間を受け止めるために

必要な「大切な時間を過ごす為の器」。

ですから、本当は「誰かの正解や答え」

らしきものを

寄せ集めるのではなく

自分たちの人生の喜怒哀楽を

どのように受け止めていくべきかを

反映していくことが大切・・・・・。

しかし多くの場合、

住まいづくりは「カタチ」から

考えられてしまいます。

どんな間取りにするか

どんな設備を入れるか

どんな見た目にするか

これらはすべて重要です。

ですが本来は、

その前に存在するべき「問い」があります。

「どのような暮らしを望んでいるのか」

「どのような時間を大切にしたいのか」

この問いが曖昧なまま進められた設計は、

整っているのに満たされない住まいへと

つながります。

■暮らしの設計という考え方

やまぐち建築設計室では、

住まいの設計を「図面を描くこと」とは

捉えていません。

「暮らしを設計すること」

これを最も重要な起点としています。

暮らしの設計とは、

日々どのように時間を過ごすのか

どのような瞬間に心地よさを感じるのか

どのような距離感で人と関わるのか

そういった「生活の質」そのものを

見つめ直すことです。

例えば、

静かな朝の時間を大切にしたいのか。

家族と賑やかに過ごす時間を

中心にしたいのか。

一人で思考を整える余白を

確保したいのか。

これらはすべて、

間取りの前に存在する生活の「価値観」。

この価値観が

整理されていない状態では、

どれだけ優れた設計であっても、

どのような間取りであっても

空間の構成まで含まれたズレが生じます。

■自分たちの暮らしを整理するということ

ここで大切になるのが、

「暮らしを整理整頓する」という視点です。

整理整頓とは、

単に物を片付けることではありません。

思考や感覚を整えることでもあります。

何を大切にしているのか。

何を心地よいと感じるのか。

何に違和感を覚えるのか。

これらを丁寧に見つめていくことで、

自分たちの暮らしの輪郭が見えてきます。

そしてその輪郭が明確になるほど、

設計の内容は精度を高めていきます。

■空間が感情をつくる・感情がくらしをつくる

人の感情は、

意識だけでコントロール

されているわけではありません。

光の入り方

天井の高さ

視線の抜け

素材の質感

音の響き方

これらが複雑に重なり合い、

無意識のうちに感情をつくりだします。

つまり、建築空間の設計とは

感情を設計することでもあるのです。

○関連blog
人生の憂鬱を整える環境設計|人間関係と住まいが心に与える本質的な影響を建築家の視点で紐解くように

https://www.y-kenchiku.jp/blog_detail796.html

このブログを読んでいる方も

居場所によって感情の変化を

経験しているのではありませんか?

cafeやホテルのラウンジ、

馴染みの飲食店や、

お気に入りの場所で過ごす時間での

ご自身の状態。

この視点が抜け落ちると、

住まいも、

性能値としては機能的でありながら、

どこか落ち着かない空間が生まれます。

■便利さと豊かさの違い

現代の住まいは、非常に便利です。

動線は合理化され、

設備は進化し、

効率的な生活が実現しやすくなっています。

しかし、

便利さと豊かさは、必ずしも一致しません。

人は効率だけでは満たされない存在です、

意味や感覚によって、

空間を評価しながら過ごしています。

なぜこの場所が心地よいのか。

なぜここに居たくなるのか。

この「理由」が空間に宿っているとき、

住まいは単なる機能性や合理性だけではなく、

ご自身にとって大切な居場所へと変わります。

■冷暖自知という考え方

設計において大切にしている概念の一つに、

冷暖自知(れいだんじち)というものがあります。

心地よさは、

体験によってしか理解できないという

考え方です。

どれだけ情報を集めても、

どれだけ事例を見ても、

最終的に判断するのは、

自分自身の感覚です。

だからこそ、

情報よりも、流行りよりも

感覚を大切にすること。

これが、

後悔のない住まいづくりに

つながります。

■間取りの前に整えるべきもの

家づくりにおいて最も重要なのは、

暮らしの認識を整えることです。

どのような時間を増やしたいのか

どのような空気感で過ごしたいのか

何を削ぎ落とし、何を残すのか

これらが明確になることで、

設計は「意味を持った形」になります。

住まいは、

人生の質を形づくります。

正解を求めるのではなく、

自分たちの納得を見つけていくこと。

そのためには、

暮らしを見つめ直す時間が必要です。

もし今、

暮らしの中に

違和感を感じているのであれば、

その感覚を大切にしてください。

その感覚は、

住まい造りの際には

より良い暮らしへと向かうための

確かな手がかりとなります。

住まい造りの設計は、

図面から始まるものではありません、

認識から始まるものです。

やまぐち建築設計室では、

その認識を丁寧に整えることから、

住まいづくりを考えています。

家づくりとは、

正解を探すことではなく、

自分にとっての納得を見つけること

そのために必要なのは、

情報の量や

誰かの正解のようなものではなく、

認識の深さです。

今回の投稿が

家づくりを考えている方にとって、

少しでもヒントになれば嬉しく思います。

○関連blog
間取りの前に人生設計を考える|冷暖自知という設計思想が導く、本当に納得できる住まい

https://www.y-kenchiku.jp/blog_detail798.html

‐‐----------------------------------------
■やまぐち建築設計室■
奈良県橿原市縄手町387-4(1階)
  建築家 山口哲央
https://www.y-kenchiku.jp/

住まいの設計、デザインのご相談は
ホームページのお問合わせから
ご連絡ください
------------‐-----------------------------