完成後の生活を、どこまでリアルに思い描けているか

ユーザー ナイトウタカシ建築設計事務所 ナイトウタカシ の写真

打ち合わせの中で、
図面を見ながらこんなやり取りになることがあります。

 

「朝はここでコーヒーを飲んで…」

 

「帰ってきたら、ここに荷物を置いて…」

 

少しずつ、
暮らしのイメージが言葉になっていく。

 

その一方で、
ふとこう感じることもあります。

 

「本当にこんなふうに過ごすのか、
 いまいち実感が持てなくて…」

 

図面は理解できる。

 

動線も確認している。

 

それでも、
実際の生活となると、
どこか現実味が薄い。

 

この感覚も、
とても自然なものです。

 

完成後の生活を、
完全にリアルに思い描くことは、

 

簡単ではありません。

 

まだ体験していない空間の中で、
日々の動きを想像する。

 

それには、
どうしても限界があります。

 

光の入り方や、
音の感じ方、

 

空気の温度や、
時間の流れ方。

 

そうしたものは、
実際にその場に立ってみて、
初めて分かる部分でもあります。

 

だからこそ、
想像が少し曖昧でも、
問題ではありません。

 

むしろ、
ある程度の余白があることは、

 

これからの暮らしを
柔らかく受け止める余地にもなります。

 

設計の中で大切なのは、

 

すべてを正確に思い描くことではなく、

 

どんな方向の暮らしを望んでいるかを
捉えることです。

 

朝の時間を大切にしたい。

 

家に帰ったとき、
少し落ち着ける場所がほしい。

 

家族と過ごす距離感を、
心地よく整えたい。

 

そうした感覚が共有されていれば、

 

細かな部分は、
住み始めてから自然と馴染んでいきます。

 

実際の生活は、
想像よりも少しずつ
変化していくものです。

 

使いながら調整し、
過ごしながら見つけていく。

 

その中で、
本当の意味での「暮らし」が
形になっていきます。

 

完成後の生活を、
すべてリアルに思い描けていなくてもいい。

 

大切なのは、

 

いま感じている方向性と、
これからの時間に
開かれていること。

 

そのバランスの中で、
暮らしは少しずつ現実になっていくのだと
思っています。