建築確認が通っても、建てられないことがある――自然公園法という見えない落とし穴

ユーザー 建築家紹介センター 仲里 実 の写真

「市役所に確認した」「建築確認も通った」
それでも建物の撤去を命じられたケースがあります。

実際に起きた訴訟から

自然公園法で規制がかかる宮崎県日南市の海岸近くに別荘を建て、県から撤去を命じられた施主が、建築前に市に規制の有無を尋ねたのに適切な指導や情報提供がなかったとして市などを相手取り、建築費など2億円超の損害賠償を求めて東京地裁に提訴していたことがわかった。市は口頭で規制を説明したなどとして争う姿勢を示している。

https://www.yomiuri.co.jp/local/kyushu/news/20251210-GYS1T00058/

この土地は自然公園法の規制区域内にありました。
建築確認申請は建築基準法にもとづくもの。
自然公園法による許可は、まったく別の手続きです。

市役所の建築担当窓口に聞いても、自然公園法は環境担当部署の管轄であるため、「問題ない」という返答になってしまうことがあります。

建築確認と自然公園法の許可は「別物」

多くの方が混同しやすいのですが、建築に関わる手続きは建築基準法だけではありません。

建築確認と自然公園法の許可は別の手続き建築確認申請(建築主事・確認検査機関)と自然公園法の許可(都道府県・環境部局)は窓口も確認内容も異なる別々の手続きであることを示す図解 土地に建物を建てる 施主の目的 建築確認申請 建築主事・確認検査機関 建物が基準法に適合するか 自然公園法の許可 都道府県・環境部局 自然環境への影響がないか 両方の手続きが必要です窓口も・確認内容も・別々

建築確認は「建物の安全確認」です。その土地に建ててよいかどうかの許可ではありません。
同じ土地に複数の法律が重なってかかっていることは、珍しくないのです。

自然公園法とは

国立公園・国定公園・都道府県立自然公園を守るための法律です。
区域は3段階に分かれており、建築の際に都道府県への許可申請が必要になります。

自然公園法の3段階の規制区域特別保護地区(最も厳しい・建築不可)、特別地域(知事の許可が必要)、普通地域(届出が必要)の3段階を入れ子の囲みで示した図解 普通地域届出が必要(一定規模以上)特別地域知事の許可なく建築できない特別保護地区原則として建築不可最も厳しい規制規制が強くなる中心部

海岸・湖畔・山の中腹・景勝地に近い土地は、いずれかの区域に含まれている可能性があります。
別荘地やリゾートエリアは特に注意が必要です。

こんな土地は特に注意

  • 海・湖・川沿い、山の中腹など景観の良い場所
  • 別荘地・リゾートエリアに隣接している
  • 国立公園・国定公園の案内看板が近くにある
  • 不動産の重要事項説明書に「自然公園」の記載がある
  • 地図を見ると公園区域のすぐ外側に位置している

重要事項説明書に記載がなくても、規制がかかっているケースがあります。
不動産会社が把握していないことも多く、自分で確認する必要があります。

購入前・設計前に確認する方法

土地購入前に確認する3ステップSTEP1:環境省の区域図で調べる、STEP2:都道府県の環境部局に問い合わせる、STEP3:建築士に複数法令をまとめて確認してもらう、の3ステップを横並びで示した図解 STEP 1 区域図で調べる 環境省の自然公園 区域図を確認 STEP 2 行政に問い合わせる 都道府県の環境部局へ 必ず書面で記録を残す STEP 3 建築士に相談する 複数の法令を まとめて確認

行政への確認は、必ず記録に残すこと。
口頭で「問題ない」と言われても、後から確認が取れなくなります。
メール・書面でのやりとりを心がけてください。
今回の訴訟でも、口頭説明の有無が争点になっています。

建築確認だけではわからない法律は他にもある

自然公園法のほかにも、建築確認とは別に確認が必要な規制があります。

  • 農地法(農地に家を建てる場合)
  • 森林法(保安林・林地開発許可)
  • 土砂災害防止法・がけ条例
  • 埋蔵文化財包蔵地(地中に遺跡が埋まっている可能性がある土地)

こうした規制は窓口ごとに担当が異なるため、「一か所に聞いた」だけでは全部カバーできません。
土地購入前に建築士に相談しておくと、複数の規制を一度に整理してもらえます。

「この土地、本当に建てられますか?」

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