暮らしは設計通りには進まない

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住み始めてしばらくすると、
こんなふうに笑いながら話していただくことがあります。

 

「最初に思っていた使い方と、
 少し違ってきました」

 

ここに座ると思っていた場所に、
あまり座らなくなったり、

 

別の場所に、
自然と集まるようになったり。

 

図面のときには、
はっきりとイメージしていたはずの動きが、

 

実際の暮らしの中では、
少しずつ変わっていく。

 

この変化は、
特別なことではありません。

 

むしろ、
とても自然な流れです。

 

設計では、
暮らしを想像しながら、
空間の関係を整えていきます。

 

ここで過ごす時間。
ここでの動き。

 

ある程度の方向を
描いていく。

 

けれど、
実際の生活は、

 

そのときの気分や、
家族の関係、

 

季節や時間の変化など、

 

さまざまな要素が重なって
成り立っています。

 

その中で、
人の動きは少しずつ変わっていく。

 

最初に想像していた通りに
ならないこともあります。

 

だからといって、
それが良くないわけではありません。

 

むしろ、
空間が
そのときの暮らしに合わせて、

 

自然に使われている状態とも言えます。

 

設計は、
すべてを決めるものではなく、

 

暮らしが成り立つための
土台を整えるものです。

 

その土台の上で、
日々の生活が重なり、

 

少しずつ
自分たちなりの使い方が生まれていく。

 

思っていた通りに進まない部分も、

 

その人らしい暮らしの
一部になっていきます。

 

大切なのは、
設計通りに使うことではなく、

 

無理なく使えているかどうか。

 

自然に馴染んでいるかどうか。

 

その視点で見てみると、

 

少し違っていることも、
否定する必要はなくなります。

 

暮らしは、
設計図の中に収まるものではなく、

 

日々の中で、
少しずつ形を変えていくもの。

 

その変化を受け止めながら、

 

空間とともに整っていく感覚を、
大切にしていけたらと思っています。