最初に気になったことが、気にならなくなる理由
住み始めて少し経った頃、
こんなふうに話していただくことがあります。
「最初は気になっていたんですが、
今はあまり気にならなくなりました」
引っ越したばかりの頃は、
細かなことが目につきやすい。
ここはもう少しこうだったら。
ここが少し使いにくいかもしれない。
そんな感覚が、
いくつか浮かんでくる。
けれど、
時間が経つにつれて、
その多くが
少しずつ気にならなくなっていきます。
この変化も、
とても自然なものです。
最初の頃は、
空間に対して
意識が向きやすい状態です。
新しい環境に入ったばかりで、
ひとつひとつを
確かめるように過ごしている。
そのため、
細かな違いにも敏感になる。
けれど、
日常が始まると、
意識は少しずつ
生活そのものへと移っていきます。
どこで何をするか。
どう動くか。
そうした流れが
体に馴染んでくる。
すると、
空間そのものに向けていた意識が、
自然と薄れていきます。
また、
最初に感じていた違和感も、
使いながら調整されていくことがあります。
少し置き方を変える。
動き方を変える。
その小さな工夫の中で、
気になっていた部分が
自然と解消されていく。
さらに、
人は環境に慣れていくものです。
少し違っていると感じていたことも、
時間とともに
自分の中で基準が変わり、
違和感として
感じなくなっていくことがあります。
最初に気になったことが
気にならなくなるのは、
問題がなくなったというより、
暮らしと空間の関係が
整ってきた状態とも言えます。
すべてを最初から
完璧にする必要はありません。
時間とともに
馴染んでいく部分があることも、
住まいのひとつのあり方です。
その変化を
そのまま受け止めながら、
いま感じている心地よさに
目を向けていく。
その積み重ねの中で、
住まいは少しずつ
自分たちに合った場所へと
変わっていくのだと
思っています。