生活の癖が、家に残っていく

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住み始めてしばらくすると、
こんなふうに話していただくことがあります。

 

「気づいたら、いつも同じ動きをしていて…」

 

帰ってきたときに、
無意識に荷物を置く場所。

 

朝になると、
自然と立つ位置。

 

何気ない動きが、
少しずつ決まっていく。

 

最初から意識していたわけではないのに、

 

いつの間にか、
同じ流れが繰り返されるようになる。

 

この変化も、
とても自然なものです。

 

暮らしは、
日々の小さな動きの積み重ねでできています。

 

その中で、
無理のない動きや、
心地よい流れが、

 

少しずつ体に馴染んでいく。

 

そして、
その動きが繰り返されることで、

 

「生活の癖」として
定着していきます。

 

設計の段階では、
ある程度の動線を想定します。

 

こう動くだろう。

 

こう使うだろう。

 

その前提で、
空間を整えていく。

 

けれど、
実際の生活は、

 

その想定と完全に一致するとは限りません。

 

人それぞれの習慣や、
体の使い方、

 

そのときの気分によって、

 

少しずつ違う動きが生まれていく。

 

その結果、
自分たちなりの使い方が定まり、

 

空間の中に
生活の癖が残っていきます。

 

よく使う場所には、
自然と物が集まり、

 

動きの多い場所には、
少しずつ跡が残る。

 

そうした積み重ねが、

 

その家ならではの雰囲気を
つくっていきます。

 

生活の癖が残るということは、

 

その空間が、
日々の暮らしに馴染んできた証でもあります。

 

無理に整えようとしなくても、

 

自然に続けられている動きの中に、

 

すでに心地よさが
含まれていることがあります。

 

もちろん、
少し整えたほうがいい部分も
出てくるかもしれません。

 

けれど、
すべてを均一に整えることよりも、

 

自分たちの癖が
そのまま受け止められていることも、

 

住まいのひとつのあり方です。

 

生活の癖が、家に残っていく。

 

その積み重ねが、

 

少しずつ
「自分たちの家」という感覚を
つくっていくのだと
思っています。