暮らしが、空間を完成させていく

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住み始めてしばらくした頃、
こんなふうに話していただくことがあります。

 

「やっと、家らしくなってきました」

 

引き渡しのときには、
すでに空間は完成しているはずです。

 

壁も仕上がり、
設備も整い、

 

設計としては、
ひとつの区切りを迎えている。

 

それでも、
どこかまだ
整いきっていないような感覚が残る。

 

その違いは、
暮らしが重なっているかどうかにあります。

 

家具が入り、

 

日々の動きが生まれ、

 

時間の流れが加わっていく。

 

その中で、
空間は少しずつ変わっていきます。

 

どこに座るのか。

 

どこで過ごすのか。

 

どんな時間を重ねるのか。

 

そのひとつひとつが、

 

空間に意味を与えていく。

 

設計は、
空間の骨格を整えることはできますが、

 

そこにどんな暮らしが重なるかまでは、
決めきることはできません。

 

実際の生活の中で、

 

少しずつ使い方が定まり、

 

居場所が生まれ、

 

その家ならではの雰囲気が
形になっていく。

 

その積み重ねの中で、

 

空間は
はじめて完成に近づいていきます。

 

だからこそ、
完成という言葉は、

 

引き渡しの瞬間だけを
指すものではないのかもしれません。

 

住み始めてからの時間も含めて、

 

ゆっくりと
完成していくもの。

 

最初からすべてが整っていなくても、

 

暮らしの中で
少しずつ形が整っていく余地がある。

 

その余白があることで、

 

住まいは
自分たちらしいものへと
変わっていきます。

 

暮らしが、空間を完成させていく。

 

その感覚を大切にしながら、

 

日々の時間を重ねていくことが、

 

住まいをより深く、
心地よいものにしていくのだと
思っています。