図面には描けないことがあります。
設計の仕事をしていると、
毎日たくさんの図面を描きます。
線を引いて、
寸法を書いて、
窓やドアの位置を決めていく。
図面が完成すると、
「家が見えてきましたね。」
と言っていただくことがあります。
でも私は、
そのたびに思います。
図面には、
描けないものがたくさんあるな、と。
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例えば、
休日の朝、
家族みんなでゆっくり朝食を食べる時間。
仕事から帰ってきて、
「ただいま。」
という声が聞こえる安心感。
庭を眺めながら、
ぼんやり過ごす夕方のひととき。
そんな時間は、
どんなに細かい図面にも描かれていません。
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以前、お引き渡しから数年経ったお客様のお宅を訪ねたことがありました。
リビングのソファの位置が、
設計したときとは少し変わっていました。
ダイニングテーブルの横には、
お子さんの勉強机が置かれていました。
「この場所が一番落ち着くんです。」
そう話してくださいました。
図面には、
その机も、
その暮らし方も描かれていませんでした。
でも、
その光景を見たとき、
「ああ、この家はちゃんと育っているな。」
と思いました。
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家は、
完成した瞬間が終わりではありません。
住み始めてから、
家具が入り、
家族が笑い、
少しずつ暮らしが重なっていきます。
その積み重ねが、
家をそのご家族らしい場所に変えていきます。
だから私は、
図面を描きながら、
完成した家ではなく、
数年後の暮らしを想像しています。
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図面は、
家をつくるために欠かせないものです。
でも、
家族の笑顔も、
何気ない会話も、
心地よい時間も、
図面だけでは表すことができません。
だから私は、
図面の向こうにある暮らしを思い浮かべながら、
一本一本、線を引いています。
図面には描けないものがある。
だからこそ、
私はその描けないものを大切にしながら、家づくりを続けています。