「まだ建てるかどうかも決めていません。」

ユーザー ナイトウタカシ建築設計事務所 ナイトウタカシ の写真

「まだ建てるかどうかも決めていません。」

初めてお会いする方から、こんなお話をいただくことがあります。

 

「相談するには早すぎますよね。」

 

「まだ何も決まっていなくて……。」

 

少し申し訳なさそうに話される方もいらっしゃいます。

 

でも私は、その言葉を聞くと、

「そうなんですね。」

とお返事をして、

「今、どんなことを考えていらっしゃるんですか?」

そんなふうに、お聞きすることが多いんです。

 

すると、お話は家のことではなく、

暮らしのことになることがあります。

 

「子どもが小学校に上がる前には……。」

 

「転勤があるかもしれなくて。」

 

「今の家賃を払い続けるのがいいのか迷っています。」

 

「親のことも少し気になっていて。」

 

同じ「まだ決めていない」という言葉でも、

迷われている理由は、本当にさまざまです。

 

以前、ご相談いただいたご夫婦も、

「建てるかどうかも決めていないのに、相談してもいいんでしょうか。」

とおっしゃっていました。

 

そこで、

「今日は家を建てるかどうかを決める日ではありませんよ。」

とお伝えしました。

 

「今、気になっていることを整理する日だと思っていただければ。」

 

そうお話しすると、

お二人とも少し表情がやわらいだのを覚えています。

 

その後、お話を伺っていると、

実は家を建てることが不安なのではなく、

住宅ローンを背負うことが不安だったことが分かってきました。

 

家そのものではなく、

将来への心配が大きかったのです。

 

もちろん、

まだ建てると決めなくてもいい時期もあります。

 

ご家族の状況によっては、

もう少し今の暮らしを続けた方がいいこともあるでしょう。

 

反対に、

早めに考え始めたことで、

慌てずに準備できるご家族もいらっしゃいます。

 

だからこそ、

「今すぐ決めましょう。」

とも、

「まだ早いですね。」

とも、

私はあまり言わないようにしています。

 

ですから、

「まだ建てるかどうかも決めていません。」

と聞かれても、

私は、

「建てるかどうか」よりも、「何に迷っているのか」。

そこを知りたいと思っています。

 

資金のことなのかもしれません。

 

お子さんのことなのかもしれません。

 

仕事やご実家のことなのかもしれません。

 

その迷いが少しずつ言葉になると、

「建てる」「建てない」という答えより先に、

ご家族が本当に考えたかったことが見えてくることがあります。

 

家づくりは、

建てると決めた人だけのものではないように思います。

 

「まだ分からない。」

その気持ちを安心して話せる時間も、

家づくりの大切な始まりなのかもしれません。

 

私は、そんな時間もご一緒できたらと思っています。