「ホテルみたいな家に憧れます。」

ユーザー ナイトウタカシ建築設計事務所 ナイトウタカシ の写真

「ホテルみたいな家に憧れます。」

この言葉も、ご相談の中でよく伺います。

 

「生活感のない空間が素敵で。」

 

「旅行で泊まったホテルが忘れられなくて。」

 

そんなお話を聞くことがあります。

 

でも私は、このご相談にも、

「ではホテルのようなデザインにしましょう。」

とは、すぐにはお答えしないことが多いんです。

 

まずは、

「そのホテルの、何が印象に残っているんでしょう。」

そんなふうに、お聞きすることから始めています。

 

すると、ご家族によって返ってくる答えは、本当にさまざまです。

 

「照明が落ち着いていました。」

 

「静かだったんです。」

 

「窓から見える景色がきれいで。」

 

「部屋に入った瞬間、ホッとしたんです。」

 

同じ「ホテルみたい」という言葉でも、

心に残っているものは、それぞれ違うように思います。

 

以前、ご相談いただいたご夫婦も、

「ホテルみたいな家が理想なんです。」

とおっしゃっていました。

 

そこで、

「ホテルでは、どんな時間を過ごされるのが好きですか。」

と、お聞きしてみました。

 

少し考えられたあと、

奥様が、

「朝、コーヒーを飲みながら、ぼんやり外を眺めている時間ですね。」

と話してくださいました。

 

ご主人も、

「時間に追われない感じが好きなんです。」

と続けられました。

 

そのお話を伺って、

もしかすると憧れていたのは、

ホテルという建物ではなく、

そこで過ごす時間なのかもしれない、と思いました。

 

もちろん、

素材や照明、

家具の選び方によって、

ホテルのような雰囲気をつくることはできます。

 

でも、

見た目だけを似せても、

家に帰ると洗濯物があり、

子どものランドセルがあり、

毎日の暮らしがあります。

 

家は、

ホテルとは役割が少し違います。

 

だからこそ、

ホテルらしい見た目だけを目指すより、

ホテルで感じた心地よさを、

毎日の暮らしの中にどう取り入れるか。

 

その方が、そのご家族らしい家になることもあるように思います。

 

ですから、

「ホテルみたいな家に憧れます。」

と聞かれても、

私は、写真を見ながらデザインの話を始める前に、

ホテルで、どんな気持ちになっていたのか。

そこを知りたいと思っています。

 

静けさだったのかもしれません。

 

非日常のゆとりだったのかもしれません。

 

誰にも急かされない時間だったのかもしれません。

 

その思いが見えてくると、

必要なのは大理石や間接照明ではなく、

光の入り方や、

窓から見える景色、

家の中の過ごし方かもしれません。

 

家づくりでは、

ホテルを再現することよりも、

「この家に帰ると、あのホテルにいたときのように落ち着く。」

そんな感覚をつくることの方が、大切なのかもしれません。

 

私は、そんな家づくりをご一緒できたらと思っています。