「せっかく建てるなら、全部やりたくなってしまいます。」

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「せっかく建てるなら、全部やりたくなってしまいます。」

家づくりが進んでくると、こんなお話をいただくことがあります。

 

最初は、

「そんなに特別な家じゃなくていいんです。」

とおっしゃっていた方でも、

いろいろな家を見たり、設備を知ったりしていくうちに、

少しずつ欲しいものが増えていくことがあります。

 

「床暖房も気になります。」

 

「せっかくならキッチンもグレードを上げたいです。」

 

「外壁も、もう少しいいものにした方がいいでしょうか。」

 

一つひとつには、それぞれ理由があります。

 

だからこそ、どれも外しにくくなってしまうんですよね。

 

でも私は、そんなとき、

「予算が上がるのでやめましょう。」

とは、すぐにはお話ししないことが多いんです。

 

まずは、

「それがあると、暮らしの何が変わりそうですか?」

そんなふうに、お聞きしてみます。

 

以前、ご相談いただいたご夫婦も、

打ち合わせが進むにつれて、

いろいろなご要望が増えていきました。

 

大きな窓。

 

造作家具。

 

広いパントリー。

 

少しグレードの高いキッチン。

 

ご主人が、

「一生に一度だと思うと、全部やっておきたくなるんですよね。」

と話してくださいました。

 

そこで、

「この中で、なくなったら一番残念なのはどれでしょう。」

と、お聞きしてみました。

 

お二人でしばらく考えたあと、

奥様が、

「大きな窓かもしれません。」

とおっしゃいました。

 

理由を伺うと、

庭を眺めながら家族で過ごすことを、

家づくりを始めた頃から楽しみにされていたそうです。

 

一方で、

キッチンのグレードについて聞いてみると、

「ショールームで見たら、せっかくだからと思って……。」

とのことでした。

 

そこで初めて、

同じ「やりたいこと」でも、

少し違いがあることが見えてきました。

 

家づくりでは、

「せっかく」という言葉がよく出てきます。

 

せっかく新築するなら。

 

せっかく注文住宅にするなら。

 

あとからできないから。

 

もちろん、

せっかくの家づくりだからこそ、

楽しみたいという気持ちは大切だと思います。

 

ただ、

「せっかく」を一つずつ積み重ねていくと、

いつの間にか、

最初にどんな家で暮らしたかったのかが、

少し見えにくくなることもあります。

 

だから私は、

何かを追加するとき、

「必要ですか?」だけではなく、

「これがあることで、どんな時間が増えますか?」

と考えてみることがあります。

 

家族で庭を見る時間が増える。

 

料理を楽しむ時間が増える。

 

朝の支度が少し楽になる。

 

一人で落ち着ける時間が生まれる。

 

そんなふうに暮らしが見えてくるものなら、

そのご家族にとって、大切なものなのかもしれません。

 

反対に、

「せっかくだから」という言葉だけが残るものなら、

一度立ち止まってみてもいいように思います。

 

ですから、

「せっかく建てるなら、全部やりたくなってしまいます。」

と聞かれたとき、

私は、欲しいものを減らすことから始めるのではなく、

最初に、どんな暮らしをしたかったのか。

そこへ一度戻ってみたいと思っています。

 

全部やることが、

そのご家族にとって一番満足できる家づくりになることもあるでしょう。

 

でも、

全部を入れなくても、

本当に大切なものがきちんと残っていれば、

「これでよかった」と思える家になることもあります。

 

家づくりでは、

「せっかくだから何を足すか」よりも、

「せっかく建てるこの家で、何を大切にしたいのか」。

私は、そんなお話をしながら、一緒に選んでいけたらと思っています。