「最初に言っていたことと違ってもいいんでしょうか?」
「最初に言っていたことと違ってもいいんでしょうか?」
打ち合わせが進んできた頃に、こんなお話をいただくことがあります。
「最初は和モダンがいいと言っていたんですけど……。」
「最近、少し違う気がしてきて。」
「今さら変えたら、迷惑ですよね。」
少し申し訳なさそうに話される方もいらっしゃいます。
でも私は、そんなとき、
「最初のお話と違いますね。」
と考えることは、あまりありません。
むしろ、
「今は、どんなふうに感じていますか?」
と、お聞きすることがあります。
家づくりを始めるとき、
自分たちの希望を言葉にするのは、意外と難しいものです。
「ナチュラルな家。」
「ホテルみたいな家。」
「明るくて開放的な家。」
知っている言葉の中から、
自分の感覚に近いものを探して伝えていることもあります。
でも、打ち合わせを重ねていくと、
少しずつ、
「好きだと思っていたけれど、何か違う。」
「こちらの方が落ち着くかもしれない。」
そんな感覚が出てくることがあります。
以前、ご相談いただいた方も、
最初は、
「できるだけ生活感のない家にしたいです。」
とおっしゃっていました。
ところが、打ち合わせが進んだある日、
「少し変わってきたかもしれません。」
と話してくださいました。
そこで、
「どんなところが変わりましたか?」
とお聞きしてみました。
すると、
「生活感をなくしたかったわけじゃなかったみたいです。」
とおっしゃいました。
「散らかっていると落ち着かないから、そう言っていただけなのかもしれません。」
さらにお話を伺うと、
家族の写真を飾ったり、
子どものつくったものが置いてあったりすることは、
むしろ好きだったそうです。
欲しかったのは、
何もない空間ではなく、
好きなものが自然に置かれていても、落ち着いて見える家だったのかもしれません。
最初に話したことが、
間違っていたわけではないと思います。
そのときには、
まだそこまでしか言葉になっていなかった。
そんなこともあるのではないでしょうか。
家づくりについて話しているうちに、
自分でも気づいていなかったことが見えてくる。
誰かに質問されて初めて、
「そういえば、私はこっちの方が好きかもしれない。」
と気づく。
そんなこともあります。
もちろん、
工事が始まってから大きく変更するとなれば、
費用や工程への影響も考えなければなりません。
どこまでも自由に変えられるわけではありません。
だからこそ、
まだ話せる段階で違和感が出てきたなら、
「最初と違うから」と飲み込まず、
一度言葉にしてみてもいいように思います。
ですから、
「最初に言っていたことと違ってもいいんでしょうか?」
と聞かれたとき、
私は、
何が変わったのかより、なぜ変わったのか。
そこを一緒に聞いてみたいと思っています。
好みが変わったのかもしれません。
暮らしを具体的に想像できるようになったのかもしれません。
あるいは、
最初からあった気持ちに、
ようやく言葉が追いついただけなのかもしれません。
家づくりは、
最初に出した要望を、そのまま形にしていくことだけではないように思います。
話して、
見て、
考えて、
また話す。
その途中で、
自分たちでも知らなかった本音が見えてくることがある。
私は、そんな変化も受け止めながら、一緒に家を考えていけたらと思っています。