「回遊動線って、やっぱり便利ですか?」
「回遊動線って、やっぱり便利ですか?」
家づくりのご相談で、よく聞かれることがあります。
キッチンから洗面へ。
洗面からファミリークローゼットへ。
そして廊下やリビングへ戻れる。
行き止まりがなく、ぐるっと回れる間取りを見ると、
確かに便利そうですよね。
SNSでもよく見かけるので、
「せっかくなら、うちも回遊できるようにしたいです。」
とおっしゃる方もいらっしゃいます。
そんなとき私は、
「回遊動線は便利ですよ。」
と、すぐにはお答えしないことが多いんです。
代わりに、
「普段、家に帰ってきてから何をしていますか?」
と、お聞きしてみます。
例えば、
仕事から帰ってきたとき。
玄関で靴を脱ぐ。
バッグを置く。
上着を脱ぐ。
手を洗う。
買ってきたものを冷蔵庫へ入れる。
そのあと、着替える。
同じ「帰宅」でも、
その順番はご家族によってかなり違います。
買い物をして帰ることが多い方なら、
玄関からキッチンへの動きが気になるかもしれません。
帰宅してすぐ着替える方なら、
クローゼットへの動きの方が大切かもしれません。
つまり、
回れることそのものより、
自分たちが実際にどう動いているのか。
そちらの方が、間取りを考えるうえでは大切になることがあります。
以前、ご相談いただいたご家族も、
「キッチンと洗面を回遊できるようにしたいです。」
とおっしゃっていました。
理由を伺うと、
「家事動線が短くなりそうなので。」
とのことでした。
そこで、
「朝は、どんな順番で家事をしていますか?」
とお聞きしてみました。
朝食をつくる。
子どもの準備を手伝う。
洗濯機を回す。
身支度をする。
洗濯物を干す。
一つずつ聞いていくと、
実はキッチンと洗面を何度も行き来しているわけではありませんでした。
むしろ気になっていたのは、
洗濯物を洗面から干す場所まで運ぶこと。
そして乾いたものを各部屋へ戻すことでした。
「それなら、キッチンと洗面を回遊させることより、洗濯の流れを考えた方がよさそうですね。」
そんなお話になりました。
もちろん、
回遊動線がとても合うご家族もいます。
家族が同じ時間帯に動くので、
一つの通路に人が集中してしまう。
料理をしながら洗濯をすることが多い。
玄関から収納、洗面、キッチンへと、
毎日の動きが自然につながっている。
そんな暮らしなら、
回遊できることで動きやすくなるかもしれません。
ただ、回遊させるためには、
出入口が一つ増えることになります。
その分、
収納に使える壁が減ったり、
家具を置ける場所が限られたりすることもあります。
だから、
「回遊できる=便利」
と決めてしまわなくてもいいように思います。
ですから、
「回遊動線って、やっぱり便利ですか?」
と聞かれたとき、
私は間取りを描く前に、
朝起きてから家を出るまで、そして帰宅してから眠るまで、どんなふうに家の中を動いているのか。
そんなことを聞いてみたいと思っています。
何度も行き来している場所はどこなのか。
どこで家族同士がぶつかるのか。
何を持って移動しているのか。
そこで初めて、
回遊できることが便利なのか、
むしろ短くまっすぐ移動できる方がいいのかが見えてきます。
家事動線は、
図面の線を短くすることだけではありません。
その家族が毎日繰り返している動きを、少し楽にすること。
私は、間取りの形を決める前に、そんな日常の動きから一緒に考えていけたらと思っています。