「生活感を出したくないんです。」

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「生活感を出したくないんです。」

家づくりの打ち合わせで、こんなご希望をいただくことがあります。

 

キッチンには、できるだけ物を出したくない。

 

冷蔵庫も目立たせたくない。

 

洗濯物や日用品も見えないようにしたい。

 

リビングには収納をたくさんつくって、

いつもすっきりした状態にしておきたい。

 

住宅の写真を見ていると、

物がほとんど見えない空間はきれいですよね。

 

そんなとき私は、

「では、全部隠せる収納を考えましょう。」

とは、すぐにはお答えしないことが多いんです。

 

まず、

「どんなものが見えていると、気になりますか?」

と、お聞きしてみます。

 

生活感という言葉には、

いろいろなものが含まれています。

 

ティッシュの箱。

 

郵便物。

 

子どもの学校用品。

 

キッチン家電。

 

洗濯物。

 

充電しているスマートフォン。

 

読みかけの本。

 

家族の写真。

 

どれも暮らしていれば、

自然と家の中に出てくるものです。

 

でも、

すべてが同じように気になるわけではないことがあります。

 

「郵便物がダイニングに積まれているのは嫌だけれど、読みかけの本が置いてあるのは気にならない。」

 

「キッチン家電は見せたくないけれど、子どもの絵は飾っておきたい。」

 

そんな違いもあるんですよね。

 

だから、

「生活感をなくす」ではなく、「どんな生活感なら心地いいのか」。

そこを考えてみることがあります。

 

以前、ご相談いただいた方も、

「モデルハウスみたいに、生活感のないリビングにしたいです。」

とおっしゃっていました。

 

そこで、

「今の家で、特に気になるものって何でしょう?」

とお聞きしてみました。

 

すると、

最初に出てきたのは、

ダイニングテーブルの上でした。

 

郵便物。

 

学校からのお知らせ。

 

鍵。

 

バッグ。

 

買ってきたもの。

 

気がつくと、

いろいろなものが置かれてしまうそうです。

 

「では、それが全部見えなくなれば、生活感は気にならなくなりそうですか?」

と伺ってみました。

 

少し考えてから、

「全部じゃなくてもいいかもしれません。」

とおっしゃいました。

 

家族の写真は飾りたい。

 

お気に入りの器も見えるところに置きたい。

 

子どもがつくったものも、

しばらくは飾っておきたい。

 

そうやって聞いていくと、

なくしたかったのは生活の痕跡ではなく、

行き場所のないものが、いつまでも残っている状態だったのかもしれません。

 

そう考えると、

収納のつくり方も少し変わります。

 

何でも入る大きな収納をつくることより、

帰宅したバッグを置く場所。

 

郵便物を一時的に置く場所。

 

学校からのお知らせをしまう場所。

 

毎日使う家電を戻しやすい場所。

 

そうした小さな「行き先」を決める方が、

暮らしやすいこともあります。

 

隠す収納をたくさんつくっても、

戻すのが面倒な場所にあれば、

結局、物は外に出たままになるかもしれません。

 

そもそも、

家は暮らす場所です。

 

人が暮らせば、

何かが置かれます。

 

朝にはコーヒーカップがあり、

夜には読みかけの本があり、

子どもが帰ってくればランドセルが置かれる。

 

それをすべて消してしまうことだけが、

心地よい家とは限らないように思います。

 

もちろん、

物が見えない空間が好きな方もいます。

 

その感覚も大切です。

 

ただ、その場合でも、

「生活感を隠すための家」にするより、

自分たちが無理なく整えられる仕組みを考えた方が、

長く続きやすいかもしれません。

 

ですから、

「生活感を出したくないんです。」

と聞いたとき、

私はまず、

何を隠したいのか。そして、何なら残っていても心地いいのか。

そんなことを聞いてみたいと思っています。

 

見えない方が落ち着くもの。

 

見えていても気にならないもの。

 

むしろ、そこにあることで、

その家らしく感じられるもの。

 

それぞれを分けてみると、

必要な収納や空間のつくり方も変わってきます。

 

生活感のない家を目指すことより、

自分たちの暮らしの痕跡と、どう付き合っていきたいのか。

私は、そんな普段の暮らしのお話まで伺いながら、そのご家族にとって心地よく整う家を一緒に考えていけたらと思っています。