「完成したあとに、好みが変わったらどうしましょう。」

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「完成したあとに、好みが変わったらどうしましょう。」

家づくりの打ち合わせで、こんなお話をいただくことがあります。

 

今は、この色が好き。

 

この素材が好き。

 

こんな雰囲気のインテリアにしたい。

 

でも、家はこれから何十年も暮らしていく場所です。

 

「10年後も同じものを好きでいられるか、自信がなくて。」

 

そう考えると、

なかなか決められなくなることもありますよね。

 

そんなとき私は、

「飽きないデザインにしておけば大丈夫ですよ。」

とは、すぐにはお答えしないことが多いんです。

 

まず、

「これまで、ずっと好きだったものってありますか?」

と、お聞きしてみます。

 

服の好みが変わる。

 

好きな家具が変わる。

 

以前は好きだった色を、

今はあまり選ばなくなる。

 

反対に、

若い頃には興味がなかったものが、

なぜか心地よく感じるようになる。

 

人の好みは、

少しずつ変わっていくものなのかもしれません。

 

それなら、

これから何十年も好みが変わらないことを前提に家をつくる方が、

少し難しいようにも思います。

 

以前、ご相談いただいた方も、

内装を決めるときに、

とても迷われていました。

 

「今は木の雰囲気が好きなんですけど、10年後に飽きませんかね。」

と。

 

そこで、

「木そのものがお好きなんですか。それとも、木のある空間のどんなところがお好きですか?」

とお聞きしてみました。

 

すると、

少し考えて、

「落ち着く感じでしょうか。」

とおっしゃいました。

 

さらにお話をしていくと、

木をたくさん使った空間にしたいというより、

自然な素材が少しあって、

静かに過ごせる雰囲気が好きだということが見えてきました。

 

そうなると、

「木をどれだけ使うか」だけで考えなくてもよくなります。

 

色を変えても、

家具が変わっても、

その方が大切にしたい、

落ち着いて過ごせる感じは残せるかもしれません。

 

家づくりでは、

今好きなものを選ぶことも大切だと思います。

 

将来好みが変わるかもしれないからと、

何も特徴のないものばかり選んでしまえば、

今の自分たちが好きだと思える家から、

離れてしまうこともあります。

 

だからといって、

今の好みをすべて建築に固定する必要もありません。

 

変えにくいもの。

 

あとから変えられるもの。

 

そこを少し分けて考えてみることがあります。

 

例えば、

間取りや窓の位置、

階段や大きな壁などは、

あとから簡単には変えにくいものです。

 

一方で、

家具やカーテン、

照明、

アートや小物などは、

暮らしながら変えていくことができます。

 

壁の色や仕上げも、

時間が経ってから変えることができる場合があります。

 

すべてを完成した瞬間の好みに合わせ切るのではなく、

変えられるところを、少し残しておく。

そんな家のつくり方もあります。

 

暮らしそのものも変わります。

 

子どもが小さい頃と、

独立したあとでは、

家の使い方も違うでしょう。

 

仕事の仕方が変わることもあります。

 

好きな家具が増えることも、

趣味が変わることもあります。

 

そう考えると、

「ずっと変わらない家」を目指すより、

変わっていく人に、

家の方が少し付き合ってくれる方が、

長く暮らしやすいのかもしれません。

 

ですから、

「完成したあとに、好みが変わったらどうしましょう。」

と聞かれたとき、

私はまず、

今の好みの中にある、変わりにくそうな部分は何だろう。

そこを一緒に探してみたいと思っています。

 

木が好きなのか。

 

木に囲まれたときの落ち着きが好きなのか。

 

白い空間が好きなのか。

 

光がきれいに見える静かな空間が好きなのか。

 

表面の好みが変わっても、

その奥にある心地よさは、

案外残っていることがあります。

 

家は、完成した日にすべてを決め切ってしまうものではないように思います。

 

家具が変わり、

色が変わり、

家族の過ごし方も変わっていく。

 

変わらない家をつくるのではなく、変わっていく暮らしを受け止められる家をつくる。

私は、今の「好き」も大切にしながら、その先にある変化まで一緒に考えていけたらと思っています。