「廊下って、できるだけ少なくした方がいい?」
「廊下って、できるだけ少なくした方がいいですよね?」
間取りのお話をしていると、
こんなご質問をいただくことがあります。
廊下に面積を使うくらいなら、
その分リビングを広くしたい。
収納を増やしたい。
部屋を少し大きくしたい。
「廊下って、通るだけの場所ですよね。」
そう考えると、
できるだけ少ない方が効率的に思えます。
そんなとき私は、
「そうですね。廊下はなくしましょう。」
とは、すぐにはお答えしません。
まず、
「その廊下の先には、どんな場所がありますか?」
と、お聞きしてみます。
確かに、
廊下は何かをするための部屋ではありません。
料理をするわけでもない。
食事をするわけでもない。
眠る場所でもない。
図面だけを見れば、
「ただ通るための面積」に見えることがあります。
でも、
暮らしの中で考えてみると、
廊下には別の役割が見えてくることがあります。
例えば、
リビングから寝室へ向かう。
玄関からリビングへ入る。
家族がいる場所から、
一人で過ごす場所へ移る。
その間にあるのが、
廊下だったりします。
つまり廊下は、
単に人が移動する場所ではなく、
場所と場所の間にある距離でもあるんですよね。
以前、ご相談いただいたご家族も、
「できるだけ廊下のない間取りにしたいです。」
とおっしゃっていました。
そこで、
リビングから直接、
いくつかの部屋へ入れる間取りを考えていました。
確かに、
面積はとても効率的でした。
廊下がない分、
リビングも少し広くできます。
でも、
図面を見ながら奥様が、
「寝室の扉を開けたら、すぐリビングなんですね。」
とおっしゃいました。
そこで、
「それって、どう感じますか?」
とお聞きしてみました。
少し考えて、
「寝るときは、もう少し離れたいかもしれません。」
と。
リビングでは、
テレビがついている。
家族が話している。
明るい。
そこから寝室へ入ると、
すぐに眠る場所になる。
ほんの少し間があった方が、
気持ちを切り替えられそうでした。
そのご家族にとって廊下は、
単なる移動スペースではなく、
家族と過ごす時間から、自分の時間へ移るための場所にもなりそうでした。
玄関でも同じようなことがあります。
玄関を開けると、
すぐにリビング。
それが気持ちいいご家族もいます。
一方で、
家に帰って、
靴を脱いで、
上着を置いて、
少し歩いてからリビングへ入る。
その数歩で、
外から家へ気持ちが切り替わる人もいます。
廊下の窓から庭が少し見える。
その先にリビングの明かりが見える。
家族の声が聞こえてくる。
そんな時間も、
暮らしの一部なんですよね。
もちろん、
必要以上に長い廊下をつくれば、
その分だけ面積も必要になります。
限られた面積の中では、
できるだけ効率よく計画した方がいい場合もあります。
だから、
廊下をたくさんつくった方がいい、
という話ではありません。
大切なのは、
「廊下だから無駄」と決めてしまう前に、
その距離がなくなったら、暮らしがどう変わるだろう。
と考えてみることだと思います。
廊下があることで、
音が少し遠くなる。
視線が直接届かなくなる。
部屋の扉がリビングから見えなくなる。
生活の場と、
落ち着く場所との間に距離ができる。
反対に、
廊下をなくすことで、
家族の気配が近くなったり、
移動が短くなったりすることもあります。
どちらがいいかは、
そのご家族が求める距離によって変わります。
ですから、
「廊下って、できるだけ少なくした方がいいですよね?」
と聞かれたとき、
私は、
「その廊下をなくしたら、どことどこが直接つながりますか?」
と、一緒に考えてみたいと思っています。
リビングと寝室。
玄関とリビング。
家族の場所と、
一人になる場所。
そこが直接つながっても心地いいのか。
それとも、
ほんの数歩の距離があった方がいいのか。
廊下は、
面積表だけを見ると、
何もしていない場所に見えるかもしれません。
でも、
何もしていないように見える場所が、暮らしの距離を整えていることもある。
私は、廊下が何平方メートルあるかだけではなく、その数歩の間にどんな意味があるのかまで、ご家族と一緒に考えていけたらと思っています。