「天井って、高い方が広く感じますよね?」

ユーザー ナイトウタカシ建築設計事務所 ナイトウタカシ の写真

「天井って、高い方が広く感じますよね?」

間取りのお話をしていると、

こんなご質問をいただくことがあります。

 

リビングは、できるだけ開放的にしたい。

 

吹き抜けも気になる。

 

天井を高くすれば、

同じ広さでも広く感じられそう。

 

住宅展示場などで、

天井の高いリビングを見て、

「こういう感じ、いいですよね。」

とおっしゃる方もいます。

 

そんなとき私は、

「そうですね。できるだけ高くしましょう。」

とは、すぐにはお答えしません。

 

まず、

「そのリビングでは、どんなふうに過ごしたいですか?」

と、お聞きしてみます。

 

確かに、

天井が高くなると、

視線が上へ抜けます。

 

空間の体積も大きくなりますから、

広がりを感じやすくなることもあります。

 

でも、

天井が高ければ、

どんな場所でも心地よくなるかというと、

少し違うように思います。

 

例えば、

家族みんなで過ごすリビング。

 

一人で本を読む場所。

 

ダイニングで食事をする場所。

 

ソファで横になる場所。

 

同じ家の中でも、

心地よく感じる高さは、

少しずつ違うことがあります。

 

以前、ご相談いただいたご夫婦も、

「リビングは天井をできるだけ高くしたいです。」

とおっしゃっていました。

 

そこで、

「どうして高くしたいと思われましたか?」

とお聞きしてみました。

 

「やっぱり、広く感じたいからですね。」

と。

 

さらに、

「リビングでは、どんな時間を過ごしていそうですか?」

と伺いました。

 

休日は、

ソファに座って映画を見る。

 

夜は、

照明を少し落として過ごす。

 

ご主人は本を読むこともある。

 

そんなお話が出てきました。

 

すると奥様が、

「ずっと開放的じゃなくてもいいのかもしれませんね。」

とおっしゃいました。

 

家族で過ごす場所には広がりが欲しい。

 

でも、

ソファに座る場所は、

少し包まれている感じも欲しい。

 

そこで考えたのは、

家全体の天井を同じように高くするのではなく、

場所によって高さを変えることでした。

 

高いところがあるから、低いところが落ち着く。

反対に、

少し低いところから高い場所へ移るから、

その広がりを強く感じることもあります。

 

天井の高さは、

数字だけで感じるものでもありません。

 

例えば、

同じ天井高でも、

窓がどこまで伸びているのか。

 

視線の先に何が見えるのか。

 

部屋の幅や奥行きがどうなっているのか。

 

光がどこから入ってくるのか。

 

それによって、

感じ方は変わります。

 

天井がそれほど高くなくても、

視線が庭まで抜けていれば、

広く感じることがあります。

 

逆に、

天井は高くても、

視線が壁で止まれば、

思ったほど広がりを感じないこともあります。

 

だから私は、

高さの数字だけではなく、

その場所に立ったとき、身体がどう感じるのか。

そこを考えてみたいと思っています。

 

そして、

人はいつも立って家を見ているわけではありません。

 

ソファに座る。

 

椅子に腰掛ける。

 

床に座る。

 

ベッドに横になる。

 

身体の位置が変われば、

天井との距離の感じ方も変わります。

 

立って見たときには少し低く感じた天井が、

ソファに座ると、

ちょうどよく包まれる感じになることもあります。

 

住宅展示場では、

歩きながら空間を見ることが多いですよね。

 

でも実際の家では、

座っている時間の方が長い場所もあります。

 

見るための高さと、過ごすための高さは、少し違うのかもしれません。

 

もちろん、

大きな吹き抜けや高い天井が、

とても心地よい家もあります。

 

朝の光が上から入る。

 

二階にいる家族の気配が届く。

 

大きな窓から空が見える。

 

その高さだからこそ生まれる体験もあります。

 

だから、

高い方がいい、

低い方がいい、

ということではないんですよね。

 

ですから、

「天井って、高い方が広く感じますよね?」

と聞かれたとき、

私は、

「広く感じたいのは、どんなときでしょう?」

と、お聞きしてみたいと思っています。

 

家族で集まっているときなのか。

 

庭を眺めているときなのか。

 

ソファでくつろいでいるときなのか。

 

家に入った瞬間なのか。

 

そこが分かってくると、

家中の天井を高くしなくても、

そのご家族が求める広がりをつくれることがあります。

 

天井の高さは、

数字だけで決めるものではありません。

 

広がりたい場所と、少し包まれたい場所。その違いをつくることも、家の心地よさにつながる。

私は、何センチの天井にするかを決める前に、そこでどんな姿勢で、どんな時間を過ごすのかをお聞きしながら、その場所に合った高さを一緒に考えていけたらと思っています。