玄関を開けて、すぐリビングが見えるのは嫌なんです

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「玄関を開けて、すぐリビングが見えるのは嫌なんです。」

間取りのお話をしていると、

こんなご希望をいただくことがあります。

 

宅配便の方が来たときに、

リビングまで見えてしまう。

 

来客があったとき、

散らかっているところを見られそう。

 

家族がソファでくつろいでいる姿まで、

玄関から見えてしまう。

 

だから、

玄関とリビングの間には、

何かあった方がいい。

 

そう考える方も多いと思います。

 

そんなとき私は、

「では、壁で見えなくしましょう。」

とは、すぐにはお答えしません。

 

まず、

「玄関を開けたとき、何が見えるのは嫌ですか?」

と、お聞きしてみます。

 

「リビングが見えるのが嫌」

といっても、

少しずつ理由が違います。

 

ソファにいる人を見られたくない。

 

テレビの周りが見えるのが嫌。

 

ダイニングテーブルの上が、

いつも片付いているとは限らない。

 

キッチンまで見えてしまうのは困る。

 

あるいは、

家の奥まで全部見通せてしまうこと自体が、

なんとなく落ち着かない。

 

その理由が分かってくると、

必ずしも、

玄関とリビングを完全に切り離さなくてもいいことがあります。

 

以前、ご相談いただいたご家族も、

「玄関からリビングが見えない間取りにしたいです。」

とおっしゃっていました。

 

そこで、

「何が見えることが一番気になりますか?」

とお聞きしました。

 

奥様は、

「家族がくつろいでいるところですね。」

と。

 

ご主人は、

「僕は、玄関を開けたときに壁しか見えないのも、ちょっと嫌かもしれません。」

とおっしゃいました。

 

そこで、

もう少し話をしてみました。

 

玄関から、

ソファは見えない。

 

ダイニングテーブルも、

直接は見えない。

 

でも、

家の奥に庭の緑が少し見える。

 

あるいは、

リビングの窓から入る光だけが、

玄関まで届いている。

 

そんな状態ならどうでしょう、と。

 

すると奥様が、

「それならいいですね。」

とおっしゃいました。

 

お二人が求めていたのは、

リビングを完全に隠すことではなく、

暮らしている姿は守りながら、家の奥の気配は感じられることだったんです。

 

玄関は、

少し不思議な場所です。

 

まだ外でもあるような。

 

もう家の中でもあるような。

 

そんな場所ですよね。

 

だから、

玄関から何が見えるかによって、

家に入ったときの感じ方も変わります。

 

正面に壁がある。

 

その先に廊下が続く。

 

庭が見える。

 

階段が見える。

 

家族のいる場所から、

明かりが漏れてくる。

 

どれも間取りとしては成立します。

 

でも、

そこで感じるものは違います。

 

例えば、

一日の仕事を終えて、

家へ帰ってくる。

 

玄関の扉を開ける。

 

そのとき、

家の奥に少し光が見える。

 

家族の声が聞こえる。

 

庭の木が見える。

 

それだけで、

「帰ってきたな」と感じる人もいます。

 

反対に、

玄関から生活のすべてが見えてしまうと、

外と家の境目が少し薄く感じられる人もいます。

 

だから私は、

玄関からの景色を考えるとき、

「何を隠すか」だけではなく、

「家に入った瞬間、何を感じたいか」

も、お聞きしてみたいと思っています。

 

もちろん、

玄関からリビングが見えることを、

まったく気にしないご家族もいます。

 

子どもが帰ってきたら、

すぐに顔が見える方がいい。

 

玄関とリビングが近い方が、

家族の気配を感じやすい。

 

そんな暮らし方もあります。

 

一方で、

来客と家族の場所は、

少し分けておきたいご家族もいます。

 

どちらが正しいということではありません。

 

大切なのは、

玄関と暮らしの場所との間に、どれくらいの距離が欲しいのか。

そこなのかもしれません。

 

ですから、

「玄関を開けて、すぐリビングが見えるのは嫌なんです。」

と聞いたとき、

私は、

「では、何が見えたら心地よさそうですか?」

とも、お聞きしてみます。

 

庭の緑なのか。

 

窓から入る光なのか。

 

お気に入りの絵なのか。

 

階段なのか。

 

あるいは、

何かがはっきり見えなくても、

家族の気配だけが伝わればいいのか。

 

「見せたくないもの」から考えるだけでは、

玄関は隠すための場所になってしまいます。

 

でも、

「帰ってきたときに見たいもの」まで考えてみると、

玄関は少し違って見えてきます。

 

見えないようにするだけではなく、何を見せるかを選ぶ。

 

玄関の扉を開けた瞬間は、

毎日ほんの数秒です。

 

それでも、

一日に一度は必ず、

外から自分の家へ戻ってくる場所です。

 

私は、リビングを隠すかどうかだけではなく、その扉を開けたときに「帰ってきた」と感じられるものは何なのか。そんなところから、そのご家族らしい玄関を一緒に考えていけたらと思っています。