「家の中の音って、どれくらい響くんですか?」
「家の中の音って、どれくらい響くんですか?」
吹き抜けやリビング階段のお話をしていると、
こんなご質問をいただくことがあります。
一階のテレビの音が、
二階まで聞こえてしまわないか。
子どもが寝たあとに、
リビングで話していても大丈夫なのか。
トイレやお風呂の音も気になる。
できれば、
静かな家にしたい。
そんなとき私は、
「できるだけ音が響かないようにしましょう。」
とは、すぐにはお答えしません。
まず、
「どんな音が聞こえると、気になりそうですか?」
と、お聞きしてみます。
家の中には、
いろいろな音があります。
テレビの音。
食器を片付ける音。
洗濯機の音。
ドライヤーの音。
子どもが走る音。
扉を閉める音。
誰かが話している声。
階段を上がっていく足音。
すべてを同じように、
「聞こえない方がいい音」と考える必要はないのかもしれません。
例えば、
二階にいて、
玄関の扉が開く音がする。
「あ、帰ってきたな。」
と分かる。
キッチンから、
家族が話している声が少し聞こえる。
何を話しているかまでは分からないけれど、
誰かがいることは分かる。
そんな音は、
気になる音というより、
家族の気配になることもあります。
以前、ご相談いただいたご家族も、
「吹き抜けにすると、音が全部二階へ上がりますよね?」
と心配されていました。
そこで、
「二階まで聞こえると困るのは、どんな音でしょう?」
とお聞きしました。
ご主人は、
「テレビですね。」
奥様は、
「子どもが寝たあとに、キッチンで片付ける音も気になります。」
と。
さらにお話を伺っていると、
少し違うことも分かってきました。
お子さんが二階の自分の部屋にいるとき、
家族の声がまったく聞こえなくなるのも、
少し寂しい気がする、と。
そこで、
「全部聞こえない方がいいわけではなさそうですね。」
とお話ししました。
ご家族が気にしていたのは、
音があることそのものではなく、
休みたいときまで、必要のない音が届いてしまうことだったんです。
音の話になると、
つい「防音」という言葉を考えます。
でも、
住宅の中で考えたいのは、
音を完全に消すことだけではありません。
どこから、
どこへ、
どんな音が届くのか。
その関係を考えることも大切です。
例えば、
トイレの音は、
ダイニングまで聞こえない方がいいかもしれません。
寝室には、
リビングのテレビの音が届きにくい方がいい。
一方で、
子どもが帰ってきた音や、
家族がいる気配は、
少し伝わってもいい。
つまり、
聞こえていい音と、聞こえると困る音がある。
ということなんですよね。
そして、
音は壁だけで決まるものでもありません。
部屋と部屋の位置。
扉の位置。
階段の場所。
吹き抜けの位置。
廊下を挟むのか。
収納を間に置くのか。
家の中で、
音がどう通っていくのかによっても、
聞こえ方は変わります。
だから私は、
間取りを見るとき、
人の動線だけではなく、
音がどこへ動いていきそうかも考えることがあります。
例えば、
夜十一時。
子どもは二階で寝ている。
一階では、
ご夫婦がテレビを見ている。
食洗機が動いている。
誰かがお風呂に入る。
そんな場面を想像してみる。
反対に、
休日の昼間。
子どもは二階。
親は一階。
完全に静かで、
お互いの気配が何も分からない方がいいのか。
それとも、
どこかから少し生活の音が聞こえる方が、
心地いいのか。
同じ家でも、
時間によって欲しい静けさは変わります。
もちろん、
仕事や趣味で静かな環境が必要だったり、
楽器を演奏したり、
生活時間が大きく違ったりするご家族もいます。
そういう場合には、
遮音や吸音について、
もう少し具体的に考える必要があります。
だからこそ、
最初から「音が響かない家」を目指すのではなく、
どの音を、どこまで届かせたくないのか。
そこを整理しておくことが大切だと思っています。
ですから、
「家の中の音って、どれくらい響くんですか?」
と聞かれたとき、
私は、
「どんな音なら聞こえてもよくて、どんな音は聞こえない方がいいですか?」
と、お聞きしてみたいと思っています。
テレビの音は届いてほしくない。
でも、
家族が帰ってきた気配は分かりたい。
寝室は静かにしたい。
でも、
家の中が完全に分断された感じにはしたくない。
そんな希望が同時にあってもいいんです。
静かな家とは、
何も聞こえない家とは限りません。
必要のない音は遠ざけながら、家族の気配になる音は少し残す。
私は、音を全部消すことから考えるのではなく、そのご家族にとって心地いい「聞こえ方」はどんなものなのか。暮らしの場面を一つずつ想像しながら、一緒に考えていけたらと思っています。