「朝、明るいリビングにしたいんです。」
「朝、明るいリビングにしたいんです。」
窓や方角のお話をしていると、
こんなご希望をいただくことがあります。
朝起きて、
リビングへ行ったときに、
明るいと気持ちがいい。
できれば、
朝日が入る家にしたい。
そんなイメージを持っている方も多いと思います。
そんなとき私は、
「では、東側に大きな窓をつくりましょう。」
とは、すぐにはお答えしません。
まず、
「朝起きてから家を出るまで、どこで過ごしていますか?」
と、お聞きしてみます。
朝の時間というと、
つい「朝日が入るリビング」を思い浮かべます。
でも、
実際の朝をたどってみると、
意外とリビングにいる時間が短いこともあります。
起きる。
洗面所へ行く。
着替える。
キッチンで朝食を準備する。
ダイニングで食べる。
子どもの支度をする。
荷物を持って、
玄関へ向かう。
朝の時間は、
家のいろいろな場所を移動しながら過ぎていきます。
そう考えると、
明るくしたいのは、
本当にリビングだけなのでしょうか。
以前、ご相談いただいたご夫婦も、
「朝日が入る明るいリビングがいいです。」
とおっしゃっていました。
そこで、
「朝はリビングで、どんなふうに過ごされていますか?」
とお聞きしました。
すると、
平日の朝は、
ほとんどソファに座らないとのこと。
ご主人は起きたら洗面所へ行き、
着替えて朝食。
奥様は、
キッチンで朝食とお弁当の準備。
お子さんは、
ダイニングで食事をして、
そのまま学校の準備をする。
家族が朝いちばん長くいる場所は、
リビングではなく、
キッチンとダイニングだったんです。
そこで奥様が、
「そう言われると、朝明るくしたいのはキッチンかもしれません。」
とおっしゃいました。
欲しかったのは、
明るいリビングという形ではなく、
朝の支度をしている時間に、自然な光を感じられることだったんですね。
もちろん、
朝日が入るリビングは気持ちのいいものです。
でも、
光は部屋の名前に合わせて入ってくるわけではありません。
朝食を食べる場所。
顔を洗う場所。
料理をする場所。
着替える場所。
玄関へ向かう途中。
そこに少し光が入るだけでも、
朝の感じ方は変わることがあります。
だから私は、
「リビングを明るくする」というより、
朝の光と一緒に、家の中をどう動くのか。
そんなふうに考えることがあります。
そして、
「明るい」にも、
いろいろあります。
朝日が直接入る明るさ。
壁に反射した、
やわらかな光。
窓から空が見えることで感じる明るさ。
庭の木の葉に光が当たって、
その明るさが室内へ届くこともあります。
必ずしも、
強い朝日が部屋の奥まで差し込むことだけが、
気持ちのいい朝とは限りません。
夏の朝には、
強い日差しが暑く感じることもあります。
季節によって、
太陽の位置も変わります。
だから、
「朝日を入れる」だけではなく、
どんな光なら心地いいのかも、
一緒に考えてみたいところです。
以前、
朝が少し苦手だという方がいました。
その方は、
「朝、明るい家にしたいです。」
とおっしゃっていました。
でも、
お話をしていくと、
眩しい光が欲しいわけではありませんでした。
起きて寝室を出る。
廊下の先が少し明るい。
洗面所へ行くと、
小さな窓から空が見える。
ダイニングへ行くと、
庭に朝の光が当たっている。
そんなふうに、
少しずつ朝になっていく感じが好きだと分かりました。
一つの部屋を明るくするのではなく、家の中で朝を感じていく。
そんな考え方もあるんですよね。
ですから、
「朝、明るいリビングにしたいんです。」
と聞いたとき、
私は、
「朝起きてから家を出るまで、どんな順番で家の中を動いていますか?」
と、お聞きしてみたいと思っています。
最初に行く場所はどこなのか。
どこで朝食を食べるのか。
誰がキッチンに立つのか。
どこで身支度をするのか。
そして、
その中のどこで光を感じられたら、
朝が少し気持ちよくなりそうなのか。
そこが分かってくると、
「東向きの大きな窓」だけではない答えが見えてくることがあります。
朝の光は、見るためのものだけではなく、一日を始める時間に寄り添うものでもある。
私は、リビングを何時にどれくらい明るくするかだけではなく、目を覚ましてから玄関を出るまでの時間を一緒にたどりながら、そのご家族にとって心地いい朝のある家を考えていけたらと思っています。