「夜は、もう少し落ち着いた感じにしたいんです。」
「夜は、もう少し落ち着いた感じにしたいんです。」
照明のお話をしていると、
こんなご希望をいただくことがあります。
昼間は、
明るくて開放的な家がいい。
でも夜になると、
少し雰囲気を変えたい。
ホテルやレストランのような、
落ち着いた感じも好き。
「照明を暗めにすればいいんでしょうか?」
と聞かれることもあります。
そんなとき私は、
「では、照明を少なくしましょう。」
とは、すぐにはお答えしません。
まず、
「夜は、家のどこで何をして過ごすことが多いですか?」
と、お聞きしてみます。
家づくりの写真を見ると、
昼間に撮影されたものが多いですよね。
大きな窓から光が入って、
部屋全体が明るい。
庭の緑も見える。
空間の広がりもよく分かる。
でも、
実際に暮らし始めると、
夜の家で過ごす時間もかなりあります。
仕事から帰ってくる。
夕食を食べる。
お風呂に入る。
テレビを見る。
本を読む。
家族と話をする。
そして眠る。
昼間とは、
家の使い方も少し変わります。
以前、ご相談いただいたご夫婦も、
「夜は落ち着いたリビングにしたいです。」
とおっしゃっていました。
そこで、
「夜はリビングで、どんなふうに過ごされていますか?」
とお聞きしました。
夕食のあと、
ご主人はソファでテレビを見る。
奥様はダイニングで、
本を読んだり、
少し仕事をしたりする。
同じLDKにはいるけれど、
それぞれ違うことをしていました。
そこで、
「夜も部屋全体が同じ明るさである必要はありそうですか?」
とお聞きすると、
奥様が、
「そう言われると、必要なところだけ明るければいいですね。」
とおっしゃいました。
お二人が求めていた「落ち着いた感じ」は、
単に部屋を暗くすることではなく、
自分たちがいる場所のまわりに、必要な光があることだったんです。
例えば、
ソファの近くに小さな灯りがある。
ダイニングテーブルの上には、
食事や本を読むための光がある。
壁に光が当たって、
その反射で部屋がぼんやり明るくなる。
廊下の先に、
小さな灯りが見える。
部屋全体を均一に明るくしなくても、
暮らすために必要な明るさをつくることはできます。
むしろ、
明るいところと、
少し暗いところがあることで、
落ち着いて感じることもあります。
夜の心地よさは、「どれだけ明るいか」だけではなく、「どこが明るいか」で変わる。
そんなふうに思います。
そして夜になると、
窓の見え方も変わります。
昼間は、
窓の向こうに庭や空が見えていた。
でも夜になると、
外は暗くなります。
室内が明るければ、
窓には自分たちの姿が映る。
昼間とは、
まったく違う景色になるんですよね。
だから、
庭の木を少し照らして、
夜にも外を感じられるようにする。
室内の明るさを抑えて、
窓の向こうに視線が抜けるようにする。
そんな考え方もあります。
昼間には、
庭まで含めて広く感じていたリビングが、
夜になると窓のところで終わってしまう。
反対に、
夜でも外に少し光があれば、
家の中と庭との関係が続くこともあります。
もう一つ、
夜の家で考えてみたいのが、
「どこにいたくなるか」です。
部屋全体が明るいと、
空間全体が一つに感じられます。
でも、
ソファの近くだけに光があると、
そこが小さな居場所のように感じられることがあります。
ダイニングのペンダントだけを灯せば、
テーブルのまわりに家族が集まる。
少し離れた場所に小さな照明があれば、
一人で過ごす場所ができる。
光は、
ものを見るためだけではなく、
夜の家の中に、居場所をつくるものでもあるのかもしれません。
もちろん、
料理をするとき。
片付けをするとき。
子どもが宿題をするとき。
しっかりした明るさが必要な場面もあります。
ですから、
ずっと暗い家にするわけではありません。
必要なときには明るくできる。
でも、
一日の終わりには、
少しずつ光を減らしていける。
そんな選択肢があると、
同じ部屋でも違う過ごし方ができそうです。
ですから、
「夜は、もう少し落ち着いた感じにしたいんです。」
と聞いたとき、
私は、
「夜、どこに座って、何をしている時間が好きですか?」
と、お聞きしてみたいと思っています。
ソファでテレビを見る。
ダイニングで本を読む。
夫婦で話をする。
一人でお茶を飲む。
庭を眺める。
その時間が見えてくると、
必要な光も少しずつ見えてきます。
昼間の家は、
自然の光がつくってくれます。
でも夜の家は、
どこを照らし、
どこを少し暗いまま残すのかによって、
感じ方が大きく変わります。
家全体を明るくするのではなく、過ごしている場所に光を置いていく。
私は、照明器具をいくつ付けるかを決める前に、夕食が終わってから眠るまで、ご家族がどこでどんな時間を過ごしているのかを伺いながら、その家らしい夜の光を一緒に考えていけたらと思っています。