「このスペース、何に使うんですか?」
「このスペース、何に使うんですか?」
間取りをご覧いただいていると、
こんなご質問をいただくことがあります。
リビングでもない。
廊下でもない。
書斎というほどでもない。
窓の近くに、
少しだけ空いている場所がある。
図面を見ると、
「ここ、何のための場所なんだろう?」
と思いますよね。
そんなとき私は、
「ここは〇〇をする場所です。」
と、すぐに名前をつけないことがあります。
むしろ、
「何に使えそうだと思いますか?」
と、お聞きしてみます。
家づくりでは、
それぞれの場所に名前があります。
リビング。
ダイニング。
キッチン。
寝室。
子ども部屋。
書斎。
収納。
名前がついていると、
分かりやすいですよね。
何をする場所なのか、
すぐに想像できます。
でも、
実際の暮らしを見ていると、
人は必ずしも、
部屋の名前どおりに過ごしているわけではありません。
ダイニングで仕事をする。
リビングの床で洗濯物をたたむ。
階段に座って話をする。
廊下の窓辺で、
少し外を見る。
子どもが、
なぜか部屋ではなく、
キッチンの近くで宿題をする。
そんなこともあります。
以前、ご相談いただいたご家族に、
リビングの窓際に、
少しだけ余白のある場所をご提案したことがありました。
図面を見ながら、
ご主人が、
「ここは何に使うんですか?」
と聞かれました。
確かに、
何か家具を置くために計画した場所ではありませんでした。
そこで、
「今のところ、特に決めていません。」
とお答えしました。
少し不思議そうな顔をされました。
そこで、
「休日だったら、ここで何をしていそうですか?」
とお聞きしてみました。
奥様が、
「椅子を置いて、本を読むかもしれません。」
と。
するとご主人は、
「子どもが床で遊んでいるかもしれないですね。」
さらに、
「観葉植物を置いてもよさそう。」
という話にもなりました。
一つの場所なのに、
使い方がいくつも出てきました。
そこであえて、
何か一つに決めないことにしました。
使い方が決まっていないから、そのときの暮らしに合わせて使える。
そんな場所があってもいいのではないかと思ったんです。
家づくりでは、
どうしても面積を有効に使いたくなります。
せっかくつくるなら、
無駄な場所はなくしたい。
何かに使えるようにしたい。
収納にできないか。
カウンターをつけられないか。
棚を置けないか。
そう考えるのも自然なことです。
ただ、
すべての場所の用途を、
家を建てるときに決め切ってしまうと、
暮らしの方が、
その用途に合わせることになる場合もあります。
例えば、
最初は子どもの遊び場になる。
数年後には、
宿題をする場所になる。
さらに時間が経つと、
椅子を置いて本を読む場所になる。
植物が増えれば、
鉢を並べる場所になるかもしれません。
何も置かず、
ただ窓の前の余白として残ることもあります。
暮らしは変わっていきます。
家族の年齢も、
好きなことも、
家で過ごす時間も変わります。
だから、
家のすべてを、完成した瞬間の暮らしだけに合わせなくてもいい。
私はそんなふうにも思います。
もちろん、
限られた面積の中で、
意味もなく空間を余らせる必要はありません。
収納が足りないのに、
使わない場所をたくさんつくる。
必要な部屋を小さくしてまで、
用途のない場所をつくる。
それでは、
暮らしにくくなることもあります。
だからこそ、
「余白をつくりましょう」と、
最初から決めるわけでもありません。
その場所があることで、
何か違う過ごし方が生まれそうか。
そこを考えてみます。
そして、
用途の決まっていない場所は、
意外と人が見つけてくれることがあります。
設計した側が、
「ここに座ってください」
と言わなくても、
いつの間にか子どもが座っている。
家族の誰かが、
そこに椅子を持ってくる。
猫がいつもそこで寝ている。
気づけば、
そこが家の中で好きな場所になっている。
そんなことがあります。
場所の使い方を、家ではなく住む人が決める。
そういう余地が残っているのも、
住まいの面白さかもしれません。
ですから、
「このスペース、何に使うんですか?」
と聞かれたとき、
私は、
「今、決めなくてもいい場所があってもいいと思いますか?」
と、お聞きしてみたいと思っています。
本を読むかもしれない。
子どもが遊ぶかもしれない。
植物を置くかもしれない。
何もしないかもしれない。
数年後になって、
初めて使い方が見つかるかもしれません。
家をつくるときには、
すべての場所に役割を与えたくなります。
でも、
暮らしのすべてを、
今の自分たちが予想できるわけではありません。
何に使うか分からない場所が、あとからその家らしい場所になっていくこともある。
私は、最初からすべてを決め切るのではなく、住み始めたご家族が自分たちで使い方を見つけていける。そんな少しの余白も、間取りの中に残せたらと思っています。