家具って、家ができてから選んでも大丈夫ですか?
「家具って、家ができてから選んでも大丈夫ですか?」
間取りのお話をしていると、
こんなご質問をいただくことがあります。
まずは家を決める。
家具は、
完成してから実際の部屋を見て選ぶ。
その方が、
大きさも雰囲気も分かりやすそうです。
「今からソファやテーブルまで決めるのは、まだ早いですよね。」
とおっしゃる方もいます。
そんなとき私は、
「家具はあとで大丈夫ですよ。」
とは、すぐにはお答えしません。
まず、
「新しい家では、どこで一番長く過ごしそうですか?」
と、お聞きしてみます。
もちろん、
家づくりの途中で、
家具をすべて決める必要はありません。
ソファの商品名。
ダイニングチェアの種類。
テーブルの色。
そこまで早い段階で決めなくても、
家づくりは進められます。
でも、
「どんなふうに過ごしたいか」は、
家具と切り離しにくいんですよね。
例えば、
リビング。
大きなソファに、
家族みんなで座りたいのか。
一人掛けの椅子も置いて、
それぞれ好きな場所で過ごしたいのか。
床に座ることが多いのか。
テレビを見るのか。
庭を眺めたいのか。
それによって、
同じリビングでも、
窓や壁のつくり方が変わってきます。
以前、ご相談いただいたご夫婦も、
「家具は完成してから考えます。」
とおっしゃっていました。
そこで、
間取りを見ながら、
「ソファに座るとしたら、どちらを向いていたいですか?」
とお聞きしてみました。
ご主人は、
「テレビですかね。」
と。
奥様は少し考えて、
「私は庭を見たいです。」
とおっしゃいました。
そこで、
図面の中に、
仮にソファを置いてみました。
テレビへ向けると、
庭が横になる。
庭へ向けると、
テレビの位置を少し考え直したくなる。
さらに、
ダイニングテーブルも置いてみると、
人が通る場所との関係も見えてきました。
家具を決めたかったわけではありません。
家具を置いてみることで、
そこで家族がどちらを向いて過ごすのかが見えてきたんです。
家具は、
部屋の中に置かれるものですが、
暮らしている人の身体に、
とても近いものでもあります。
ソファに座る。
椅子を引く。
テーブルを囲む。
ベッドに横になる。
本棚の前に立つ。
家の中で人が何をするかを考えると、
その間には、
たいてい何か家具があります。
だから私は、
家具を単に、
「完成した部屋にあとから置くもの」
とは考えないことがあります。
家具の置き方は、その家で人がどう過ごすかに近い。
そんなふうに感じています。
例えば、
大きな窓をつくったあとで、
ソファを置いてみる。
すると、
ソファの背中で窓の一部が隠れてしまう。
コンセントが、
ちょうど家具の後ろになる。
ダイニングテーブルを置いたら、
椅子を引く場所が思ったより狭い。
お気に入りの棚を置こうとしたら、
壁がほとんど残っていない。
完成してからでも、
家具を置くこと自体はできます。
でも、
家具を置いた状態まで少し想像しておけば、
窓や壁、照明、コンセントの位置を、
違う考え方で決められることがあります。
そして、
家具には、
部屋の中に小さな場所をつくる力もあります。
窓の近くに椅子を一脚置く。
そこが、
本を読む場所になる。
ダイニングテーブルを、
キッチンのすぐ横に置く。
そこが、
料理をしながら家族と話す場所になる。
ソファを部屋の真ん中に置くことで、
リビングの中に、
少し違う二つの場所ができることもあります。
家具は、
空いているところを埋めるためだけのものではないんですよね。
もちろん、
住み始めてから家具を選ぶ楽しさもあります。
実際の光を見る。
部屋の広さを感じる。
暮らしてみて、
必要なものを少しずつ足していく。
それも、
とてもいいと思います。
だから、
最初からすべての家具を決めてしまう必要はありません。
ただ、
家を考えている段階で、
「ここでは、どう座るんだろう。」
「どちらを向いて過ごすんだろう。」
「何人でテーブルを囲むんだろう。」
そこまでは考えておく。
それだけでも、
間取りの見え方は変わってきます。
ですから、
「家具って、家ができてから選んでも大丈夫ですか?」
と聞かれたとき、
私は、
「家具そのものはあとでも選べます。でも、そこでどう過ごすかは今から考えてみませんか?」
と、お話しすることがあります。
どんなソファを買うかではなく、
どんなふうに座りたいのか。
どんなテーブルを買うかではなく、
そこで誰と何をしたいのか。
どんな椅子を置くかではなく、
どこに自分の居場所が欲しいのか。
そこが見えていれば、
家具はあとから変わっても大丈夫かもしれません。
家具を決めるのではなく、家具が置かれた先の暮らしを先に考えてみる。
私は、何センチのソファを買うかまで決めるのではなく、図面の中に家具と人を少し置いてみながら、その家でどんな時間を過ごしたいのかを一緒に考えていけたらと思っています。