「家族それぞれの居場所って、つくった方がいいですか?」

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「家族それぞれの居場所って、つくった方がいいですか?」

間取りのお話をしていると、

こんなご質問をいただくことがあります。

 

家族が集まるリビング。

 

子どもには子ども部屋。

 

ご主人には書斎。

 

奥様にも、

自分のスペースがあった方がいい。

 

そう考えていくと、

家族それぞれに場所を用意した方が、

暮らしやすそうに思えます。

 

そんなとき私は、

「一人ひとりの場所をつくりましょう。」

とは、すぐにはお答えしません。

 

まず、

「ご家族は、家にいるとき、いつも同じ場所で過ごされていますか?」

と、お聞きしてみます。

 

家の中での居場所は、

意外と一定ではありません。

 

朝はダイニング。

 

昼は窓の近く。

 

夕方はキッチンのそば。

 

夜はソファ。

 

休日には、

庭へ出ることもある。

 

同じ人でも、

時間や気分によって、

居たい場所は変わります。

 

仕事をしたいとき。

 

誰かと話したいとき。

 

少し一人になりたいとき。

 

ぼんやりしたいとき。

 

そのたびに、

心地いい場所も違うんですよね。

 

以前、ご相談いただいたご家族も、

「家族それぞれに居場所をつくりたいです。」

とおっしゃっていました。

 

ご主人には書斎。

 

奥様には小さな家事スペース。

 

お子さんには子ども部屋。

 

それぞれ専用の場所をつくれば、

うまくいきそうに見えました。

 

そこで、

「休日は、皆さんどこにいることが多いですか?」

とお聞きしてみました。

 

ご主人は、

仕事をするときには静かな場所が欲しい。

 

でも、

本を読むときはリビングにいたい。

 

奥様は、

一人でコーヒーを飲むなら窓際がいい。

 

でも、

パソコンを使うときはダイニングが楽。

 

お子さんも、

宿題は自分の部屋ではなく、

キッチンの近くですることが多いそうです。

 

お話を聞いていると、

それぞれに専用の場所が欲しいというより、

そのときの気分や過ごし方に合わせて、居場所を選びたい

ということが見えてきました。

 

「お父さんの場所」

「お母さんの場所」

「子どもの場所」

 

そうやって決めてしまうと、

分かりやすくはなります。

 

でも、

暮らしはもう少し曖昧です。

 

今日は家族の近くにいたい。

 

明日は、

少し静かなところにいたい。

 

午前中は明るい場所。

 

夜は、

少し落ち着いた場所。

 

その日の状態によって、

人は居場所を変えます。

 

だから、

居場所を考えるときには、

「誰の場所か」だけではなく、

「どんなときにいたくなる場所か」

を考えてみることがあります。

 

例えば、

家族の真ん中にあるソファ。

 

少し離れた窓際の椅子。

 

ダイニングの端。

 

庭が見える場所。

 

階段の近く。

 

小さなカウンター。

 

それぞれに、

違った距離があります。

 

家族と話したいなら、

リビングへ行く。

 

同じ空間にはいたいけれど、

自分のことをしたいなら、

少し端の場所へ行く。

 

集中したいなら、

もう少し静かなところへ移る。

 

そうやって、

家の中にいくつか選択肢があると、

自分で心地いい距離を選べます。

 

これは、

広い家だからできること、

とも限りません。

 

部屋をたくさんつくらなくても、

窓の向きが違う。

 

少し天井が低い。

 

壁が少しだけある。

 

家具の向きが違う。

 

そんな小さな違いだけでも、

場所の感じ方は変わります。

 

一つのLDKの中にも、

いくつかの居場所が生まれることがあります。

 

居場所の数は、部屋の数と同じではないんですよね。

 

そして、

家族の関係も変わっていきます。

 

小さな子どもは、

親の近くにいたがるかもしれません。

 

少し大きくなると、

一人で過ごす時間が増えていく。

 

さらに年月が経てば、

子どもが家を出ることもあります。

 

大人の働き方や趣味も、

変わるかもしれません。

 

今の家族一人ひとりに、

専用の場所を固定してしまうより、

その時々で使い方を変えられる場所がある方が、

暮らしに合うこともあります。

 

もちろん、

専用の場所が必要なこともあります。

 

仕事でオンライン会議をする。

 

音を出す趣味がある。

 

集中する時間が長い。

 

そういう場合には、

扉のある個室が必要かもしれません。

 

大切なのは、

家族全員に同じような専用スペースを用意することではなく、

その人がなぜその場所を必要としているのか、

ということだと思います。

 

ですから、

「家族それぞれの居場所って、つくった方がいいですか?」

と聞かれたとき、

私は、

「それぞれ専用の場所が欲しいですか。それとも、そのときに居たい場所を選べる方がよさそうですか?」

と、お聞きしてみたいと思っています。

 

一緒にいたいとき。

 

少し離れたいとき。

 

話したいとき。

 

静かにしたいとき。

 

集中したいとき。

 

何もしたくないとき。

 

家族だからといって、

いつも同じ距離で過ごしたいわけではありません。

 

「自分の場所」が一つ決まっていることより、その日の自分に合う場所を家の中から選べること。

私は、家族それぞれに場所を割り当てるのではなく、一つの家の中に少しずつ違う居心地をつくりながら、そのときの自分に合う場所を自然に選べる。そんな家のあり方も、ご家族と一緒に考えていけたらと思っています。