「将来のことって、どこまで考えておけばいいんでしょう。」
「将来のことって、どこまで考えておけばいいんでしょう。」
家づくりのお話をしていると、
こんなご質問をいただくことがあります。
子どもが大きくなったら。
独立したら。
仕事の仕方が変わったら。
親との暮らし方が変わったら。
そして、
自分たちが年齢を重ねたら。
家は長く使うものだから、
できるだけ先のことまで考えておいた方がいい。
そう思う一方で、
二十年後、三十年後のことなんて、
正直よく分からない。
そんな戸惑いもありますよね。
そんなとき私は、
「将来のことまで、しっかり考えておきましょう。」
とは、すぐにはお答えしません。
まず、
「今、想像できている将来って、どんなことでしょう?」
と、お聞きしてみます。
家づくりを始めると、
未来のことをたくさん考えるようになります。
子ども部屋はいくつ必要か。
将来、一階だけで暮らせる方がいいのか。
在宅勤務が増えるかもしれない。
親と一緒に暮らすことになるかもしれない。
子どもが独立したあとの部屋を、
どう使うのか。
考え始めると、
いくらでも出てきます。
でも、
その未来が本当にそうなるかは、
誰にも分かりません。
以前、ご相談いただいたご家族も、
将来のことをとても丁寧に考えていました。
お子さんが二人いるので、
それぞれに個室をつくる。
将来は夫婦二人になるので、
二階を使わなくても暮らせるようにする。
在宅勤務が続くかもしれないので、
書斎も必要。
親との同居の可能性もあるので、
そのための部屋も考えておきたい。
一つずつ聞けば、
どれももっともな話でした。
でも、
全部を間取りに入れていくと、
家はどんどん大きくなっていきます。
そこで、
「この中で、かなり可能性が高いことと、まだ分からないことを分けてみませんか?」
とお聞きしました。
すると、
少しずつ整理されていきました。
子どもが成長することは、
かなり想像できる。
でも、
在宅勤務が二十年続くかは分からない。
親との同居も、
可能性はあるけれど決まってはいない。
そこで考えたのは、
未来を一つずつ間取りにしておくことではありませんでした。
未来が変わったときに、家の使い方も変えられるようにしておくこと。
そちらの方が、
このご家族には合っていそうでした。
例えば、
最初は子ども二人で使う部屋を、
あとから分けられるようにしておく。
子どもが独立したら、
仕事や趣味にも使えるようにしておく。
今は家族で使う場所が、
将来は別の役割を持てるようにする。
家具の置き方を変えることで、
使い方を変えられるようにしておく。
最初から、
「ここは二十年後に〇〇として使う部屋」
と決め切らなくても、
変えられる余地があれば、
そのときの暮らしに合わせることができます。
私は、
将来を考えることと、
将来を決めることは、
少し違うと思っています。
未来を考えないまま家をつくれば、
困ることもあるかもしれません。
でも、
まだ起きていないことを、
すべて今の間取りに反映しようとすると、
今の暮らしが窮屈になることもあります。
まだ分からない未来のために、今の暮らしを我慢しすぎない。
これは、
家づくりでは意外と大切なことかもしれません。
例えば、
子どもが小さい今だからこそ、
家族で一緒に過ごす場所を大切にしたい。
庭で遊ぶ時間を楽しみたい。
キッチンの近くで宿題をする姿を見たい。
休日には、
みんなで同じ場所にいたい。
その時間は、
ずっと続くわけではありません。
十年後には、
同じ家でも、
まったく違う過ごし方をしているかもしれません。
だからこそ、
遠い未来だけではなく、
今しかない時間をどう暮らしたいか
も、一緒に考えておきたいと思います。
もちろん、
年齢を重ねたときのことや、
身体の変化について、
考えなくていいということではありません。
あとから変えるのが難しいこと。
構造に関わること。
階段や水まわりの位置。
そういった部分は、
先を見ながら考えておいた方がいいこともあります。
一方で、
用途や家具の置き方など、
あとから変えられることもあります。
その違いを見ながら、
どこまで今決めるのかを考えていく。
そんな進め方もあります。
ですから、
「将来のことって、どこまで考えておけばいいんでしょう。」
と聞かれたとき、
私は、
「その未来が違っていたとき、この家は別の暮らし方を受け止められそうですか?」
と、お聞きしてみたいと思っています。
子どもが想像とは違う成長をする。
働き方が変わる。
家族の人数が変わる。
好きなことが変わる。
今は思ってもいない暮らし方をする。
未来は、
なかなか予定通りにはいきません。
だから、
すべてを当てようとしなくてもいいのかもしれません。
将来に備えるというのは、未来を正確に予想することではなく、未来が変わっても受け止められる余地を残しておくこと。
私は、二十年後の暮らしを決めてしまうのではなく、今の家族にとって大切な時間をきちんと受け止めながら、その先で暮らし方を変えられる余地も残す。そんな将来の考え方を、ご家族と一緒に探していけたらと思っています。