三菱地所の欠陥億ションについて
ニュースの内容
三菱地所レジデンスが販売していたマンションに工事の不具合が発覚して販売中止というニュースがJ-CASTニュースに掲載されていました。
東京・青山の三菱地所「欠陥億ション」 ネットの書き込みで発覚、異例の販売中止に
三菱地所レジデンスが販売していた東京・港区青山の一等地に建設中の超高級マンション「ザ・パークハウス グラン南青山高樹町」が、工事の不具合が発覚して販売中止となった。
その不具合というのが、「スリーブ」といわれる、水道管などを設置するための「孔」が開いていなかったためというから、なんともお粗末だ。三菱地所とともに施工を請け負った鹿島建設に配管設備を担当した関電工と、「一流」の看板が泣いている。
不具合が発覚したのはインターネット上にあった書き込みだそうです。
ただ、問題はそのことがわかったのが、インターネット上にあったカキコミだったことだ。カキコミを見た契約者が問い質したことで事実確認が始まった。
記事には書かれていないのでどこにその書き込みがされていたのかはわかりません。
しかし、検索してみると下記のサイトを見つけたのでおそらくこちらで書き込まれたのではないかと思います。
ザ・パークハウス グラン 南青山高樹町【旧称:(仮称)南青山高樹町プロジェクト】
ネット上の誤解
この記事を書くためにネット上の記事をいくつか読んでみたのですが、中には完全に誤解している記事もあります。
例えば、下記の記事を書いた人は「水道が使えない」と思い込んでいるみたいですが、そんなことはないです。
三菱地所、明日ママがいないのスポンサーを最後まで粘る ⇒ 南青山の億ション「ザ・パークハウス グラン南青山高樹町」に致命的な欠陥発覚!!全戸販売中止に!!!なんと「水道が使えない」という中国並みの酷さ…これも法則発動か 2ch「これネットの書き込みで発覚しなかったら売るつもりだったろ」「明日ママの呪いか」
まずは用語を知らないとニュースの本質がわからないと思いますので、用語の解説をしながら説明します。
スリーブとは
配管などを通すためにコンクリートに穴を開けておく必要があります。
そのためにはコンクリートを打つ前に事前にスリーブというものを設置しておきます。
ただ、どこでもスリーブを入れればOKというわけではなくて、入れていい位置・直径・間隔などが基準で定められています。
またスリーブを入れた場合の補強方法なども決められています。
施工図とは
コンクリート工事を行うためにはまず型枠大工と呼ばれる大工さんが型枠というものを組みます。
設計図を型枠大工さんに渡しても型枠大工さんは型枠を組み立てることはできません。
なぜなら設計図には、コンクリートの詳しい寸法などは書かれていないからです。
そのため、建設業者の方で施工図という図面を作成します。
施工図は他にもたくさんの種類がありますが、コンクリート工事の前に作られるのは躯体図と呼ばれる図面です。
スリーブの配置などはこの躯体図の中に書き込んでいきます。
スリーブ図として別の図面にする場合もあります
一般的に躯体図は建築会社がスリーブ図は設備会社が作成します。
ニュースによると今回はこの施工図を書く段階で、必要なスリーブの約1割が抜け落ちてしまったようです。
コア抜きとは
スリーブが入っていないと配管を通すことができません。
配管を通すためにコンクリートに穴を開ける必要が出てきます。
コンクリートに穴を開ける作業の事をコア抜きなどと呼んでいます。
告発されたと思われるサイトを見ていると「コア抜きは犯罪」という言葉が出てきます。
しかし、コア抜きそのものは決して法律違反でも悪いことでもありません。
非耐力壁などの構造的に問題のない部分であればコア抜き自体はそれほど大きな問題ではありません。
今回、三菱地所レジデンスが販売中止したということは、梁や耐力壁などの構造的に重要な部分にまで大量にコア抜きされていたからだと思います。
コア抜きをするとコンクリート内の鉄筋を切ってしまうこともありますし、入れておくべき補強筋を入れることもできません。
大量のコア抜きによって、構造強度が低下している可能性があります。
梁とは
梁というのは柱と柱を横につなぐ水平方向の材で、普段は床の荷重を柱に伝える役割を果たしています。
地震の際には柱や床と一体になって水平荷重に耐える役割を果たします。
耐力壁とは
耐力壁とは柱や梁と一体になって地震時の水平荷重などに耐える役目を果たしています。
ニュースの本質
このマンションの問題点は「水道が使えない」ということではありません。
「スリーブを忘れて配管工事を行うために大量のコア抜きを行ったので構造強度が低下している可能性が高い」という点です。
たとえ、コア抜きを行っていても構造的に問題のないように補強をしているのであれば、販売中止などにはならないと思います。
配管工事の担当者&現場監督はかなり以前から知っていたはず
コンクリート工事が終わると型枠を外して、配管などの工事を行った後、壁や天井などの仕上げ工事を行います。
配管工事をしていると必要なところにスリーブが設置されていないのはすぐに分かるはずです。
それだけ大量のコア抜きを現場監督に気付かれずに行うわけにも行きません。
少なくとも設備会社の担当者と建設会社の現場監督はかなり以前からこの不具合を知っていたと思われます。
引き渡し予定日が2014年3月20日・ニュースの日付は2014年2月1日なので、工事は終了目前といってもいい時期です。
すでに内装工事や外装工事も完了目前と思われます。
今から補強工事を行うとなると、完了した内装工事を壊してから行うしかないのでは・・・と思われます。
発覚した段階で構造設計者に相談して、何らかの補強をした上で工事を進めておけばこんな大問題にはならなかったのではと思います。