コートハウス(中庭のある家)のすすめ

ユーザー 三浦尚人建築設計工房 三浦尚人 の写真

日頃、地元の住宅街を通っているとたいていの家には、必ずといっていいほど「庭」があります。

ただその庭は、残った敷地と思わざるを得ないようなものがほとんどで、だいたい道路側に面しているか敷地の南側にあります。
特に敷地が南面道路に面している家だと道路側に庭があり、道を通る人々からは庭がほとんど丸見えの状態で干された洗濯物が目に入り、庭に面した1階リビングらしきスペースの窓はすべて日中にもかかわらずカーテンが閉められていることが多い気がします。

このような状況をいくつも目の当たりにするたびに「外部空間である庭が軽視されている」といつも思ってしまいます。

一般的な住宅地の場合、建ぺい率は50%前後であるから、敷地面積のおよそ半分程度は建築物を建てられないことになります。
もちろん、自家用車を所有しているケースが多いので車庫スペースが不可欠であろうし、そのほかバイクや自転車の駐車スペースも必要となる場合も多いでしょう。

民法上敷地境界ギリギリまで建築物を建てることは難しいので、残りの敷地をすべて庭にするわけにはいきません。

しかし、そういう状況でもまず建築物ありきで余った空間を庭とするような消極的な外部空間はなんとももったいない気がします。
とはいうものの、限られた予算の範囲内ではやはり建物本体にお金をかけたいであろうし、どうしても庭を含む外構部分は蔑ろにされてしまい、費やすお金を削ってしまいがちです。

けれども、住まいというものは建築物単独で成立するものではなく、その敷地全体で成り立つものだと私は考えます。

もっと自分達の敷地全体を有効活用して、積極的に外部空間を取り入れた住まいはできないだろうか?

この問いに対する答えとして、私は「コートハウス(中庭のある家)」を提案したいと思います。

コートハウスとは建築物や塀、壁などで囲まれた中庭のある住宅のことで、平面的にはロの字型やコの字型やL字型などと呼ばれているものがあります。

中庭は外部に対して閉鎖的な空間であるため、外部からの視線を遮ることができ防犯上のメリットがありますし、さらにプライバシーを確保してプライベートな半屋外の空間として利用が可能ですので、住まいの内部と外部とが一体となって広く感じられます。

また中庭は土のままにする場合もあるが、たいていは木製のデッキ敷きやタイル、石貼りやモルタル仕上げなどにして植栽することが多いです。
そして植栽の種類も庭の位置によって常緑樹や落葉樹とを使い分けます。

さらに中庭に面して設けられた開口部によって採光や通風を確保できるため、中庭を通して明るく開放的な住まいが実現できるといった利点もあります。

つまり、中庭という外部空間を内部空間と同じレベルで意識的に作った「内部の延長空間」という考え方です。

中庭は植栽を眺めるだけでなく、イスやテーブルを置いて読書をしたりお茶を飲んだりと、生活の一部として活用できます。

さらにコートハウスが優れていると感じることのひとつに「家の中にいながら自分の家を見ることができる。」という点が挙げられます。

中庭を囲むように建築物が建っているので、普通の住宅よりも距離感があります。
対角線としての空間の広がりがあり、中庭を介して空間から空間、つまり室内に居ながら自分の家を眺めることができるなんて素敵なことではないですか?