木造住宅における地盤改良の検討と検証

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今回は、建物の新築にあたって必ず行う地盤調査と、
その調査結果に基づく補強の検討に関するお話です。

一般的な木造住宅であればボーリング試験までは行うことはなく、
スウェーデン式サウンディング試験という簡易な調査とすることが一般的です。
建物の重量が鉄筋コンクリート造等のように重くないことによるものです。

先月より工事を開始した住宅でも既設の建屋の解体が終わり、この試験を行いました。

試験結果は補強(地盤改良)を行う必要があるかどうか微妙な判断となるのものでした。

建て主さんに調査結果を報告し、構造設計者とも相談をして、
基本的には補強を行うこととしました。

まずは地盤調査をしてもらった会社に地盤改良工法の検討を依頼したのですが、
今回にあっては、同時に他社にも検討を依頼して、
その内容を比較した上で地盤改良業者を決定することにしました。

基本的には施工が不確実になりがちな表層改良ではなく、
柱状地盤改良工法とすることを前提として検討を依頼したものです。
柱状地盤改良というのはいわゆる杭により建物の荷重を受け、
建物の沈下を防止する工法です。

当初、前述の試験結果と共に設計上必要な基本条件のみを各社それぞれに提示して検討をしてもらったのですが、
計算結果をもとに出てきた検討書は、杭の長さ、太さ、数量等、
2社の内容が全く異なるもので、単純に比較ができるものではありませんでした。

そこで、杭の長さ(支持層)、太さを2社とも同じ条件として、
数量、配置に関する再検討を依頼したのですが、
これもまた各社異なる検討結果でした。

最終的には、私が信頼する構造設計者と協議をして、
今回の地盤改良の仕様を決めると同時に業者さんの選定を行ったのですが、
施工業者によって検討結果が大きく異なるというのは不思議なものでした。

異なる計算結果となった根拠に関してまではここで記すのは省略しますが、
地盤に対する安全性の検討は、保証の観点からも一般的には、
このように専門業者さんに委ねるケースが多いかと思います。
おそらく工務店や住宅メーカーでも、専門業者さんから提出された検討結果であれば、
そこに口出しをすることは少ないのではないでしょうか。
しかし今回のように、計算の基本となる公的な指針があるにも関わらず、
会社により検討結果にかなりの差が生じるという事は望ましいことではありません。
極端に言えば、どちらかが耐力不足か、或いは過剰な仕様になるというものです。
もちろん、双方共「適正な範囲内」であれば特段に問題視をする必要はありませんし、
計算上は安全率も充分に見込むものですので、危険性を伴うものではないともいえます。

毎回、地盤調査結果や地盤改良が必要なケースにあっては、その内容を確認しているのですが、
今回は上記のように少し珍しいケースだった為、コストを含めて地盤改良の仕様を計算根拠と
その基になる各種の想定も含めて精査をしたものです。

更地に建てる家であれば、設計段階で地盤調査を行い、充分に検討をしておくことが可能ですが、
今回のように、建物の解体後でなければ正確な地盤調査ができないようなケースにおいては、
検討に要する時間も限られます。

住宅の現場ではこのようなケースは珍しい事ではないと思いますが、
しっかりと監理を行うケースとチェック体制が希薄な現場とでは、
建物を支える地盤の強度からして性能が異なることになるのは、
エンドユーザー(建て主さん)にはあまり知られていないであろうと思います。

今回の地盤改良工法の確定は、工事のスタート時点ではありますが
監理の重要なポイントのひとつといえるものでした。

他の物件においても参考にして頂けるケースがあると思い、
このブログに経緯を含めて記したものです。