広島県のがけ条例はわりと緩やかだと思う

ユーザー 建築家紹介センター 仲里 実 の写真

 

幼い兄弟犠牲の家は崖条例対象外だった

 
広島県で2014年8月20日に発生した土砂災害では大きな被害がありました。 
被害に遭われた方には謹んでお見舞い申し上げます。 
またお亡くなりになられた方の御冥福をお祈りします。 
 
下記のようなニュースがインターネット上に載っていたので気になりました。
写真も掲載されていました。
 
兄弟犠牲の家、崖条例対象外 広島土砂災害
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/national/article/111543
「広島市の土砂災害で、幼い兄弟が犠牲となった安佐南区山本8丁目の住宅が、崖近くに建物を建てる場合に安全対策を求められる広島県の「崖条例」の対象外だったことが1日、分かった。同様に崖下に立つ2軒隣の住宅は対象だった。」
 
著作権法上の問題がありますので写真は転載しませんが、上記のページなどをご覧ください。
左から2軒めの家が土砂災害で兄弟が犠牲になった家、その2軒隣の右端の家は崖条例の対象になっているそうです。
 

崖条例とは

 
崖条例とは崖に近接する住宅の安全を確保するための法律です。
崖が崩れた場合のことを想定して崖から一定の距離を離しなさいという主旨の条例です。 
離すことができなければ擁壁を作るなどがけ崩れを防止するための対策をする必要があります。
地域によっては鉄筋コンクリート造の建物ならOKの場合もあるようです。
 

広島県の崖条例の概要

 
最初に広島市のがけ条例を調べてみました。
下記のページで調べた限りでは広島市では崖条例は特に制定されていないようです。
http://www.city.hiroshima.lg.jp/www/contents/0000000000000/1266363725483/
 
次に、広島県のがけ条例はどのように規定されているのか調べてみました。
下記のページの第四条の二に記載されています。
http://www3.e-reikinet.jp/hiroshima-ken/d1w_reiki/347901010016000000MH/3...
 
「住居の用に供する建築物を建築する場合には、その敷地(災害危険区域内にあるものを除く。)が、二メートルを超える高さのがけ(地表面が水平面に対し三十度を超える角度をなす土地をいう。以下同じ。)の上にあるときにあつてはがけの下端から、五メートル以上の高さのがけの下にあるとき(特別警戒区域内にあるときを除く。)にあつてはがけの上端から、当該建築物との間にそのがけの高さの一・七倍以上の水平距離を保たなければならない。」
 
わかりやすく言うと
「5M以上の高さの崖の下に家を建てる場合は、がけの上端から崖の高さx1.7倍、離しなさい」
となっています。
ただし、緩和規定が書いてあり、がけ崩れの災害防止工事などをした場合は離す必要がありません。
 
調べて見た時、わりと緩やかな規定だと感じました。
 

福岡県の崖条例の概要

 
参考までに、福岡県の崖条例だと下記のようになっています。
 
http://www1.g-reiki.net/pref_fukuoka/reiki.html
からログインして、「第12編 建築」→「福岡県建築基準法施行条例」とクリックして第五条に書いてあります。 
 
「がけ(地表面が水平面に対し三十度を超える傾斜度をなす土地をいう。以下同じ。)の高さ(がけの上端と下端との垂直距離をいう。以下同じ。)が三メートルを超える場合においては、当該がけの上にあつては当該がけの下端から、下にあつては当該がけの上端から水平距離が当該がけの高さの二倍に相当する距離以内の位置及び当該がけには、居室を有する建築物を建築してはならない。ただし、次の各号の一に該当する場合においては、この限りでない。」
 
わかりやすく言うと
「3M以上の崖の下に家を建てる場合は崖の上端から崖の高さx2倍、離しなさい」
となっています。
こちらも緩和規定があって、がけ崩れの災害防止工事をした場合などは離す必要がありません。
 

広島県と福岡県の崖条例の比較

 
比較してみると下記の表になります。
下記の表は崖下に家を建てる場合に限定しています。
全国のがけ条例を調べたわけではありませんので、全国的にはどうなのかよくわかりません。
福岡県のがけ条例と比べるとかなり緩やかだと思います。
もちろん、なんでも厳しくすればいいというわけでもありませんので難しい問題です。
 

地域規制を受ける崖の高さ離す距離
広島県5m崖の上端から崖の高さx1.7倍
福岡県3m崖の上端から崖の高さx2倍

 

崖条例の対象外になった理由

 
写真で見る限り、2軒隣の対象外になっている家よりも崖は高く見えます。
5メートルは超えているように見えます。
 
がけからの距離は同じくらいに見えます。
2軒隣の対象になっている家もがけの高さの1.7倍以上離れているようには見えませんが、がけの災害防止工事などを行っているものと思われます。
 
被害にあった家がどうして対象外になったのか写真を見た限りではよくわかりません。
 
崖条例の対象になっていれば幼い兄弟が死亡するような被害は防げたかもしれません。