リビングに森を取り込む。
敷地内にもともと既存樹林があったり、隣接する敷地が森になっている場合があります。首都圏近郊などの住宅街にも行政が積極的に残している保存樹林や公園があります。
竹などは1年で育ちますが、一般的に樹木は成長が遅く数十年かけなければ立派な森になりません。また、造園で植樹をしても運搬やコストの問題でせいぜい2mの中木を植えるのが関の山でしょう。なのに新築時に簡単に伐採してしまいます。・・・・もったいない。と、私は思うのです。
私が横浜市に設計したこの事例では、隣接する横浜市の保存樹林を借景としてリビングに取り込んでいます。樹林の中には孟宗竹もあり、あまり勢力を伸ばされると根が建物に悪さをするので成長を制御する必要がありました。境界部に防根・防竹シートを敷いて竹の侵入を防ぎ、雑草が生えないように地衣類を植樹し、森の枯葉を集めて敷き詰めました(木チップでもok)。さらに建物際に濡れると青っぽくなる砂利(一般的な舗装用の砂利からわざわざ良い色を選ぶのです)を敷き詰めて雑草の繁茂を抑制しています。植物なんて・・・と放っておくわけにはいきません。実際はこのように結構手間がかかるものですが、唯一無二の環境を手に入れることができます。
日本は温帯ですので放っておくと全ての森はカシやシイ、クスノキなどが主木の常緑広葉樹林による照葉樹林になります。(明治神宮を思い出していただければお分かりと思います。)
落葉が少ないので年中日を遮りますが、日当たりと言ってもリビングに直射日光が年中当たる状況はいかがなものでしょうか?。むしろ洗濯物を気にされている場合が多いように思います。日本は直射日光を遮る庇や障子などの遮光方法を伝統的に発達させてきました。
森と適度な距離を取り、日光を自然に制御した「しっとりと落ち着いた」環境もまたリビングにふさわしいのではないでしょうか。
敷地をご購入の際や、建て替えの際は設計を依頼される前に今一度周囲をよく見てください。もしかしたら掛け替えのない木(森)があるかもしれません。それは新築するあたなの家に掛け替えの無い豊かさをもたらしてくれるかもしれません。
この場所は東京のベットタウンで周辺は住宅街で埋め尽くされている場所です。いかがですか?まるで軽井沢にでも居るような・・・・・・・・鳥の声、虫の声、風の音、葉音、緑の香り。5感で感じる家とはまさにこのことではないでしょうか。私は過去にまさに明治神宮のように、建築の外構でゼロから森を作ったこともありますが、その話はまた今度。
(撮影:北嶋俊治)