変形地

ユーザー ❨株❩アトリエ Y&R 栗城裕一 の写真

 変形地といいますと、まず四角くない土地というのが思い浮かびます。三角形、多角形、細長い土地などですね。ごく小さい敷地も広く捉えればこの中に含まれるかもしれません。
 変形敷地でしかも小さい土地の建物で真っ先に思い出されるのが、東孝光氏の東京・神宮前の自邸です。新宿西口広場の工事で上京された東さんが、東京に住まいを探すときに出会ったのが約6坪の三角形の土地でした。建物が建てられそうもない土地だったためとても安かったと、東さんは語っておられました。地下1階地上5階の階段室が住いになったという形です。
 私も18坪の土地に店舗併用の5階建ての住宅を作ったことがありますが、概して日本の設計者は変形敷地や狭小敷地は得意ではないでしょうか。都心部では変形で小さい土地というのが結構あります。
 このような土地に建築する場合は、設計の段階から施工のことについても十分に検討をしていく必要があります。外回りの足場のこと、外壁のこと、設備のことなど、多方面からの検討が大事になります。変形の土地に建築するのですから、建物も変形になることが多いです。そのような各種の検討をふまえてその構造方法は最も適したものが選ばれることになります。鉄骨造なのか鉄筋コンクリート造なのか、あるいは木造でしたら、在来の軸組み工法なのかツーバイフォーのような壁式の工法なのか等々、慎重に選択をします。これらの検討は設計者(設計事務所)が行いますが、建築主はその検討結果をよく理解し同意することが大事です。三角形の角部分は建物の使用勝手に支障をきたすこともありますから、より一層慎重な計画が求められます。外構を含めた一体的な計画を行わないと全体の計画が不調和なものになることも多いのです。それらを上手く処理して計画されれば、他にない独自の建築になり、大きな満足を得られることになりましょう。
 といったわけで、建築主の方々には、信頼できる設計者と出会って、普通の敷地にはないその土地を生かした設計をして、独自性と満足感を獲得していただきたいと願うところです。