用途変更について その3

ユーザー 一級建築士事務所 株式会社 竹内建築研究所 竹内健 の写真

用途変更について その3
弊社が行いました別事例を概略ご説明します。
都内某区内、既存建物は鉄骨4階建延440㎡ 1階店舗(テナント)2~4階 賃貸住戸、平成3年完成、確認済証はありますが完了時検査は受けておりませんでした。
建物所有者様より1階空テナント部分に高齢者デイサービス施設を誘致したいと依頼がありました。
用途が店舗から社会福祉施設に変わります。また1階部分は100㎡をやや超えておりました。ところで、この100㎡を超える部分の解釈について当該区では用途変更する部分ではなく、建物全体としてとの解釈です。所轄行政により判断が異なる場合があるようですので留意が必要です。このような訳で用途変更申請が必要でした。(なお、令和元年の建築基準法改正により、用途変更部分の床面積が200㎡以内の場合は建築確認申請の手続きが不要となりました)
ちなみに、申請が必要でない場合でも、変更後の用途に法適合しているかどうかは建築士がチェックする必要があります。
平成3年築ですから新耐震の建物なので耐震診断の必要はありませんでしたが、そもそも、検査済証がないのでまず建築申請時点での法規に適合しているかどうかの建物調査、図面と現地との照合確認等が用途変更申請の前段階で必要になりました。
当該区と事前相談をして調査内容等を決め、建物所有者様に調査内容、掛る費用につき、ご説明し、ご了解頂き、実施しました。建物所有者様にとっては想定外の費用ではありました。(多くの同様な事例ではこの段階で断念することがほとんどではないかと思います。)
調査において構造体に関わる部分(鉄骨柱・梁の溶接部分の超音波探傷試験、コンクリート強度試験など)は専門調査会社によるもので、費用の大半を占めました。その他、構造計算書のチェック、建築基準法上での現地確認、チェックなどを行いました。この建物は構造上では問題はありませんでしたが、申請をしないで増築をした一部分がありましたので、用途変更工事時に除去し、申請時の状態に戻す必要がありました。
 当時の建築主様は完了時検査済証の取得の重要性、増築申請の義務など理解されておりませんでしたが、今後、建築後、維持管理してゆく上でそうしたことの重要性を改めて、ご説明しました。
 このように、用途変更申請の前段階で法適合確認の為の既存建物調査が必要になる場合があります。