助成金を使って住宅の建替え費用を節約する方法
住宅密集地に住んでいる方の中には「老朽化した家を建て替えたいけど予算がない」と悩んでいる方も多いのではないでしょうか?
木造住宅が密集した地域では、火災が発生した場合、延焼によって大規模な火災になってしまう可能性があります。
阪神淡路大震災の際に被害を受けた建物の多くは、新耐震基準が導入された1981年以前に建てられたものでした。
これらの住宅が密集した地域で大規模火災が発生しました。
耐震・防火性能が十分でない住宅密集地で大地震が発生した場合、倒壊や火災による被害が大きくなります。
また、住宅密集地は道路幅が狭く行き止まりも多いので、災害発生時に消防車や救急車などの緊急車両が現場まで到達するのに時間がかかるという問題もあります。
そこでこの記事では「助成金を使って住宅の建替え費用を節約する方法」について紹介したいと思います。
東京都において、「木造住宅密集地域整備事業」という事業があります。
この事業は、
「木造住宅が密集し特に老朽住宅の立地割合が高く、かつ道路・公園などの公共施設等の整備が遅れている地域において、老朽建築物等の建替を促進するとともに、道路・公園などの公共施設を整備し、防災性向上と居住環境の整備を総合的に行うことを目的とし、事業を行う区市町村に対して都が支援する制度です。」
(都のホームページより)
この事業の対象となる地域は現在、新宿、台東、墨田、江東、品川、目黒、大田、世田谷、渋谷、中野、杉並、豊島、北、荒川、板橋、練馬、足立、葛飾、江戸川の各区内で指定された地域となっています。
(その詳細の地域は都のホームページに記載があります。)
この地域内において、ある一定の助成条件を満たせば、建替え時の除去費、設計監理費の一部が助成されます。建替えをご検討されている方にはとても有益な制度です。
なお、各区により、また建替え後の建物などにより、助成条件、助成金額などが異なります。
また、現時点(平成29年度)におけるもので、年度により条件、金額等が変ることがありますので専門の建築士事務所などに相談をした方が良いか思います。
私の関わった事例では、目黒区内の木造店舗併用住宅を鉄筋コンクリート造6階建て、店舗・共同住宅に建替えた場合で、総事業費約1億7000万円のうち、約1100万円の助成を受けました。
事前の区との助成金相談から助成金申請や設計、工事監理業務を担当しました。
建築主様は事業費が軽減され、テナント、賃貸住戸などもあり、事業収支計画上とても有利であったと言われました。
また、地域防災の向上や街並みの美観化、及び商店街の活性化にも寄与しました。
そして、この地域のご近所の方がこの事例を知り、私が再び依頼をうけ、その後すぐにこの制度により、ほぼ同様に建替えを実施しました。このように、地域の不燃化が繋がってゆくことが大事であると思います。
更に東京都では上記事業地域内で特に重点的に改善を図る地区を「不燃化特区」と指定して強化しています。
助成条件等各区により異なりますが、例えば、目黒区内の特区に指定された地区での場合、参考例は以下のようです。(目黒区ホームページから抜粋)
- 事業期間 :平成32年度まで
- 助成対象者: 個人、中小企業者であり、要件を満たしたもの
- 戸建建替え助成: 老朽化建物120㎡から不燃化住宅180㎡への建替えの場合、除去費及び設計・工事監理費の一部の助成として 296.5万円
なお、戸建住宅から共同住宅等に、又は共同住宅等から共同住宅等に建替える場合は、除去費、設計・工事監理費の一部の助成の他に、建物の共用部分の一部に掛る工事費「共同施設整備費」の助成があります。
その他に東京都において「都市防災不燃化事業」と言う制度があります。
一部、「不燃化特区」と重なる地域があるようですが、主に幹線道路沿いで耐火建築物等にすることにより、「延焼遮断帯」を形成し、隣接する防災生活圏の安全性を確保する目的の事業です。
(都のホームページより)
主な助成しては、建築助成費(耐火又は準対耐火建築物にする場合、1階から3階までの床面積に応じて 一部を助成)、除却助成費、仮住居助成があります。
(助成内容は各区により異なる可能性があります。)
また、昭和56年以前の旧耐震の住宅(及び共同住宅)の場合、耐震診断の必要がありますが、耐震診断の結果、耐震性能値が基準以下であれば、耐震改修工事をするのではなく建替えて、現行の耐震性能を確保するなど、要件を満たせば、耐震診断費、除去費用、建替え費用の一部の助成が受けられることがあります。(要件、金額等は区、市、町村により異なります。)
但し、様々な助成制度は重複して受けられないことが原則となっています。
近年、空き家対策が喫緊の課題となっています。
防災上においても、木造等の老朽化している建物の除却、不燃化への建替えは必要なことです。
是非、これらの助成制度に対象となっている場合にはご活用して頂き、建替え費用の節約の一助として頂ければと思います。