多世帯住宅について
複数の世帯が共生する理想的な集合住宅が多世帯住宅です。
多世帯住宅の基本となる、二世帯住宅から多世帯住宅を考えます。
1.二世帯住宅の特徴とメリット
二世帯を一体の建物でつくると敷地を有効につかえます。
そこに生まれる敷地の余白を積極的に生かし、庭や室内の吹抜け等、余白を活かした空間の広がりをつくることができます。
庭の緑で季節感の共有をし、余白を活かしての採光換気など、機能上の快適性を得ることが出来ます。
同じものを共有する生活の繰返しから、家族の絆が生まれます。
二世帯住宅は家族の皆が大切にすることを共有し、適度な距離感が保てる理想的な集合住宅(集まって暮らす住い)です。
2.二世帯住宅の設計に当たり配慮すべきこと
二世帯住宅は、親子、兄弟等近しい家族が1つの建物を共有しますが生活スタイルは、それぞれです。
次の点に配慮する事が大切です。
- □二世帯間の日常生活の違いを十分配慮する。
- 世帯間のプライバシーの確保し、両世帯間が仲違いしている間も、各世帯の生活が普通に保たれる「間合い」が大切です。
- □集まる事を前提にせず、自然に家族がふれあうつくりとする。
- 場、時間、記憶を共有する共生型のすまい。
- □緊急時の連絡設備(警報システム)を備えること。
- ■親世帯住宅の配慮すべきこと
- 今まで住み慣れた家の雰囲気を感じるつくりとし、使い慣れた既存の家具はそのまま使えるように間取りを工夫しましょう。
また、バリヤフリー住宅とすることは必須です。 - ■子世帯の配慮すべきこと
- 子世帯は、生活時間等、生活スタイルが親世帯とは違うことが多いです。
子世帯の住宅は、独立した一つの住宅と考え、生活音が親世帯に響かない配慮することが大切です。
また、子供(孫)は親世帯との絆です。
子供(孫)の部屋は親世帯との中間につくると良いです。
3.二世帯住宅のつくり方
世帯間の距離感を考慮すると二世帯住宅は次のタイプに分けることができます。
- □ 世帯分離型 平面分離型(母屋+離れ)
- 平面分離型(タウンハウス型)
上下階分離型 - □ 世帯半分離型
- □ 世帯共有型((同居)
それぞれの特徴は、次にまとめました。
1) 世帯分離型 平面分離型(母屋+離れ)
現在のお住まいを母屋とし、新たに独立された世帯用に別棟を計画する考え方です。建築基準法上、一敷地に建てられる建物は1棟のため、敷地を分割して計画する必要があります。
2) 世帯分離型 平面分離型(タウンハウス型)
見かけ上は、一つの建物ですが、内部で2世帯に分けます。世帯間のプライバシー、特に遮音に配慮して計画することが大切です。
遮音する境界は、出来るだけ単純な方が良いため、世帯同士は、重ならないように計画すると良く、世帯間を隔てる壁は、遮音壁とします。
世帯間を完全に分離をすると、建築基準法上建物が「長屋1」若しくは「共同住宅2」として扱われ、法規上の制約が住宅に比べて大きくなります。
一部廊下等で行き来できるようにするなどして建物内部でつなぐことにより「一戸建ての住宅」としてあつかわれるように計画するのが良いです。
完全に分離する場合は、より法規上の制約の少ない「長屋」扱いとするように計画することが良いと思います。
3) 世帯分離型 上下階分離型
敷地に制約がある場合、上下に二世帯を重ねます。
世帯間のプライバシー、特に遮音に配慮して計画することが大切です。
下階を鉄筋コンクリート造、上階を別の構造形式(例えば木造)としたり、両世帯間の床に防音処置を施したりします。
タウンハウス型と同じように完全分離をすると建築基準法上「長屋」若しくは「共同住宅」となります。
建物内部で世帯間をつなぐ場合は、階段玄関でつなぐのが良いと思われます。
完全に分離する場合は、より法規上の制約の少ない「長屋」扱いとするように計画することが良いと思います。
4) 世帯半分離型
一部を共有しながら、互いの独立性を確保する計画です。
共有する部分は、玄関であったり、浴室や洗面所であったりします。
浴室等を共有すると、コストのかかる水廻りが1ヶ所で済み、工事費がおさえられます。
5) 世帯共有型(同居)
個室以外を共有します。
お互いの個室は、共用の居間を挟んで配置する等、独立性を十分保つよう計画する「同居のスタイル」です。
キッチンや浴室、洗面所などの設備を共有するので工事費がおさえられます。
敷地に余裕がある場合は更に賃貸住宅の併設も計画できます。
世帯分離型とする場合は、将来の生活の変化に備え、水道、電気、ガスの配線配管やメーターは世帯別にすると良いでしょう。
また、将来に備えて一方を賃貸住宅としても機能するように計画することも考えると良いでしょう。
4.二世帯住宅+賃貸住宅(賃貸併用に世帯住宅)
二世帯住宅と併用して賃貸住宅を計画します。
住宅と賃貸住宅の玄関アプローチは分離して計画します。
賃貸住宅をつくり、家賃収入を見込むことができます。
家を建てる際に一番ネックになるのがローン返済です。
賃貸併用にすれば建築費用は多くかかるものの、家賃収入により月々の返済額は通常より安く抑えることができます。
小規模の土地でも計画可能です。
5.多世帯住宅(三世代住宅)
二世帯住宅も時の流れと共に子供が大きくなり多世帯で住まう可能性があります。
建物のライフサイクルを長くとらえ、循環型のプランを考えます。
例えば、庭を囲んで各々の世帯が場を融通しあうシステムが考えられます。
建物を三世代にわたって残すべき部分と変化する部分とにわけて考え、違う機能を持つ部屋への変更の可能性も考慮したフレキシブリティーのある計画すると良いでしょう。
6.アジアの伝統的な多世帯住宅
歴史的に大家族ですむアジアには沢山の興味ある多世帯住宅があり、
現代に生かせる知恵があります。
□ 中国の伝統的な多世帯住宅
敷地を塀で囲い込み、住居の間に庭が配置されています。
連続する中庭が採光や風の通りをつくり、世帯間の間合いを取るのにとても役立っています。
□ 韓国の伝統的な多世帯住宅
中庭を家の中心とし、中庭に向かって各個室が並びます.
生活の中心は、中庭と中庭に向かって開放された食事室(テーチョン)です。玄関から直接中庭へアクセスします。アメリカンスタイルのリビングアクセスと同じスタイルです。
日本のように玄関の構えばかり大きくせず、広いリビングをつくれる実質的な考えです。
□ 日本伝統的な多世帯住宅
外部に向かって開放的なつくりとなっています。
各個室どうしは、必要に応じて「ふすま」で自由に仕切る、フレキシビリティの高い間取りです。
個の独立性を確保したうえで、「ふすま」で自由に仕切る部屋の構成は、多世帯住宅を計画する際の参考になります。
- 共用部無い集合住宅を指します。住戸内の制約は、「一戸建ての住宅」と変わりませんが、玄関までのアプローチについて規制があります。
- 共用部のある集合住宅を指します。