渡辺篤史の建もの探訪ー上下ダブル”ロの字”ハウス(萩原健治、萩原健治建築研究所)

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感想: 

今年ももう、梅仕事の季節。
去年1kgだけ漬けた自家製梅干しの美味しさに味をしめ、今年は5kgに挑戦予定。
今週は、まずは梅酒と梅シロップ。
 
            ◇ ◇ ◇
 
今回の建ものは「上下ダブル”ロの字”ハウス」。
http://www.tv-asahi.co.jp/tatemono/backnumber/#!/2015/22
 
             ◇ ◇ ◇
 
南、東、北を隣家に、西を擁壁に囲まれた旗竿地。
そんな敷地に建つ5人家族のための家。
普段着みたいな建てものだ。
 
男の子3人が元気に動き回る。
たっぷりのごはんを作って、大騒ぎの食事をして、
がしがしお洗濯をして、どんどん片付けをして、
たくさん笑って、たくさん声を出して、、、、、。
エネルギーに満ちた賑やかな毎日が想像できる。
頭も体もフルに使って立ち向かう暮らしを、確実に支えてくれるお家だなと思った。
とにかく、使いやすそうだ。
 
             ◇ ◇ ◇
 
まず何より、光がちゃんとお部屋に注がれ、風がちゃんと抜けてとても健やか。
リビングの高い天井、プライバシーが守られたルーフテラスはとても伸びやか。
 
そして、タイトル”ロの字”は、とっても効果的だ。
2階のロの字は半分がテラス、半分が居間と食堂・台所。
L字になった居間と食堂は、ゆるやかにそれぞれのエリアが区切られる。
それでいて、中庭を介して気配を感じ合える一体感もある。
ロの字のおかげで家事の動線や目線もとてもスムーズ。
台所、食堂、そして洗濯物干しにも使うルーフテラスが直接繋がっていて、
台所からは、居間にもちゃんと目と気を配れる。
そして、グルグル回れる楽しさ!
 
土間が広くとられた玄関は、みんなで出かける時も込み合わない。
 
3人の息子たちにはどーんと1部屋。
3人で自由にのびのび使えて、そしてゆるやかに主寝室やお風呂に繋がる。
 
毎日の暮らしやすさ、動きやすさ、楽しさをたくさん感じることができた。
とっても、居心地のよい家だと思う。
 
             ◇ ◇ ◇
 
13mのアプローチの先に見えるのは、明るい色の四角い箱。
上の角にぽちょんと四角く切り取られた穴があるだけで、
大きな窓は見当たらない。
そんな建ものの姿から、内部にこんな伸びやかな空間が広がっているなぞ、
なかなか想像できないだろう。
 
イギリスに行った時、プライバシーが守られた裏庭のある長屋が、
ひとつの住宅の形としてとても一般的だったのが印象的だった。
そんなお宅をいろいろ訪ねる機会があったけれど、
どの家も、それぞれに個性的な庭作りをしていて、
そこで自分達の大切な時間を楽しんでいた。
道路に面した玄関からは、こんな素敵で個性的な庭が広がっているなぞ想像できなくて、
いつでもとってもワクワクした。
その楽しみを、この建ものを見ると鮮明に思い出す。
 
居心地のいい家、それはやっぱり、「自分たちの空間」が
ちゃんとあるということだなあ、と改めて思った。
 
その一方で、外に開いていない家、街との関係が希薄な家はいやだなぁとも、
私はやっぱり思う。
今はまだ、このお家も周りのお家も新しく、
敷地の境界も整理されきっていない様子だけれど、
それぞれにいい関係になるようなお庭作りがされると素敵だと思う。
 
             ◇ ◇ ◇
 
このお家の空間は、とても健やかで健康的だ。
そして、「家は暮らしのベースです」というふうに、シンプルだ。
そんな様相が、ちょっと色気がないような、ちょっと心地悪いような、
そんな感じもした。
そこは、好き好き、のところだけれども。