渡辺篤史の建もの探訪ー20年ぶりの再開 息子が建てた家(杉山靖彦、原島建築)
カルチャーセンターの9月始まりのチラシが入ったり、
夏休みにお休みだった保育園の遊び場が再開したり、
私も少し、新学期な気分。
今学期もとにかく笑顔でゆきたい。
どんなに散らかし、いじける子がいたとて。
◇ ◇ ◇
今回の建ものは「20年ぶりの再開 息子が建てた家」。
http://www.tv-asahi.co.jp/tatemono/backnumber/#!/2015/31
20年前に番組で紹介された家で大きくなった長男が、
その家の前隣に建てた家だ。
今回の建主である長男は、お父さんの後を追った大工さん。
義理のお兄さんが設計し、建主自らが施工に携わったという。
紹介を見終わった時、この番組で紹介される家にしては印象が薄くて、
よくありそうだけどな、と思ってしまった。
ただ、のびのびと広くて、でもその広さがとても心地よく生かされていると思った。
そして、大工さんの家らしいなとも思った。
自分で必要に応じて手を加えながら建物を育てられる自由さがある。
◇ ◇ ◇
20年ぶりの再開 息子が建てた家
今回のこのタイトルは、すごくぴったりなのだと思う。
番組では、冒頭から20年前の映像が盛り込まれていた。
渡辺さんは、あの大空間は圧巻だった、と懐かしそうに話され、
お父さん、息子さんとの再開を楽しんでいらした。
今回取り上げられた息子世帯の家の原点といえるような実家は、
番組内でちらっと映っただけだったけれど、とても印象的なものだった。
まさに圧巻の大空間で、家の中に大きなスロープが架けられていて、
真っ白な螺旋階段が立ち上っていて、、、、、。
これが一般の家庭の生活空間なのだといわれても、
なかなかその暮らしのイメージがつかないようでさえあった。
葛西潔氏による設計の、「大きい木箱」という作品とのこと。
葛西潔設計事務所のウェブページから、作品をじっくりみてみる。
(http://www.kasaikibako.com/ookii/ookii.htm)
すると改めて、今回の息子世帯の家は、この実家の建物の子供みたいなものだなと思った。
いろんなアイディアや感覚が継承されている。
大空間、シンボルのような螺旋階段、レベル差のあるLDK、
そして、大工さんとしての建主が、生活の中で建物を作り込んでいける自由さ。
空間に対する感覚や家族との時間はこうありたいという思いは、
育ってきた家が育ててくれる部分が大きいと思う。
私もいろんな感覚の下地は、やっぱり生まれ育った家だと思う。
「大きい木箱」で育った少年が建てた家。
とてものびのびとした、美しい家だと思う。
◇ ◇ ◇
さて、この息子世帯の家、広々として開放的な空間が魅力的だ。
1階は1部屋になったLDK。
2階は寝室が1部屋と、吹き抜けに面した開放的な子供たちのあそびば。
広ーいけれど、1階も2階も、床にレベル差があって、
ただ広い、というのではない心地よさがあった。
1階は、玄関からつながる部屋の手前が舞台のように高くなっていて、
螺旋階段がオブジェのように、舞台のセットのように据えられている。
この舞台は、一段下がったリビングスペース、キッチン・ダイニングスペースを
ゆるやかに区切るものであるし、また、腰掛けにもなる。
リビングのソファーと並んで座ることができるし、
キッチン・ダイニングスペースの食卓では、掘り炬燵のように舞台が椅子になる。
1部屋だけれど、リビング、キッチン・ダイニング、ホールと
大空間をうまく3つに区切ってあって、そして心地よくそれぞれが繋がっている。
2階のあそびばも、奥は舞台になっている。
この舞台は天井を低くした風呂場の真上。
舞台の下と風呂場の上に、6畳ほどの物置が作られている。
舞台は子供にとっては特別な遊び場。滑り台も楽しめる。
将来は3人の子供たちそれぞれの個室に作り替える予定とのこと。
こうして広々したオープンな一部屋にしてある時期でも、
想像力、創造力豊かに、遊び倒せる場所だと思う。
実家の「大きな木箱」あってのお家。
そのことを、楽しませてもらった。