渡辺篤史の建もの探訪ー殻に守られたコートハウス(河野有悟、 河野有悟建築計画室)
娘の初めての運動会は、みーんなで金メダルをもらった。
10メートルくらい走ったり、ボールを拾ったりしただけだけれど、
小さい人には大満足なひととき。
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今回の建ものは「殻に守られたコートハウス」。
http://www.tv-asahi.co.jp/tatemono/backnumber/#!/2015/33
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何より印象的だったのは、中庭やテラスの植物たちが、それはそれはイキイキ
あおあおしていたことだった。
屋上テラスの手すりに這わせたカボチャとメロンには、おおきな実がぶら下がる。
大振りの鉢に植えられたバジルは、本当にこん盛り。
玄関前のハイビスカスには、大きな花がふたつ。
渡辺さんをお迎えすべく、その日の朝咲いたという。
鉢植えのベリーには、赤や青のぷっくり豊かな実がたっぷり。
バスコートに植えられたみかんの木は、葉がとても美しかった。
メインの中庭には、鉢植えの蔓バラを誘引したりするのに使われるようなお洒落な支柱
(どうも『オベリスク』と呼ばれるようだ)が立てられた鉢がふたつ。
そこにはミニトマトが形よく枝葉を広げて、赤い実をたくさんつけていた。
こんなにも見栄えよく、素敵に仕立てられたミニトマトは見たことがなかった。
育て上手の手を持ったご夫婦に違いないけれど、
このコートハウスが健やかなところなのだなと、しみじみ思った。
タイルが貼られた中庭、デッキになった屋上テラスは大地の庭とは違う。
それでも、植木鉢でこんなに豊かな庭が楽しめるのだ。
むしろ部屋の一部のような外スペースだからこそ、人と植物との距離がぐっと近く、
植物を家族の一員のように眺め、手をかけ気をかけて一緒に暮らせるのだと思う。
園芸を楽しむ庭は、こんな形でもこんなに美しく、楽しく実現する、
そのことが面白く、そして本当に嬉しかった。
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今回の建物は、三角に突き出したような角地、多角形の敷地に建つコートハウス。
建物は直接道路や隣地に面していて、敷地いっぱいに「殻」をかぶせたような形になっている。
黒を貴重にした「殻」には何カ所か割れ目があって、採光、視界、出入り口が確保されている。
それがすごく格好いい。
玄関部分の割れ目からは、真っ白な壁が覗く。
道路に面した角っこの割れ目からは、ダイナミックなガラスの開口と真っ白な螺旋階段が見える。
内のための採光、視界、出入り口ではあるけれど、
外からも見る人が想像力をかき立てられるような割れ目だ。
「殻」の中に入ると、すっぽり守られて、そして空にぱっと開ける開放感がある。
建物は、多角形の敷地を生かしてムの字のように居室がある。
メインの棟の両脇から洗面所とお風呂、半地下になった予備室がそれぞれ斜めに突き出ていて、
そのムの字の真ん中が中庭になっている。
洗面所とお風呂、予備室の屋上はテラスになっていて、
メインの棟の2階から外へ出ると、高低差のある屋上テラスを回遊できる。
1階の中庭、2階の屋上テラスの2段になった庭は、奥行きと立体感がある。
メインの棟の1階、リビングから眺めれば、
てんてんと並べられた前述の植木鉢の豊かな緑が、立ち上るようですごく面白い。
2階の寝室から庭を眺めれば、中庭を隔てて見えるテラスに広がりがあり、
覗き込むように見下ろす中庭も楽しい。
多角形の敷地を巧みに生かした高低差のある庭、これが本当に豊かだった。
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完全に洋のスタイルの暮らし、
黒と白、そして赤でまとめられたセンスあるインテリア。
建物のかっこよさに決して負けない暮らしぶり。
憧れの気持ちでいっぱいになった。