渡辺篤史の建もの探訪ー巨大アーチ型本棚の家(西久保 毅人、 一級建築士事務所ニコ設計室株式会社)
家の外も中も、どんぐりだらけ。
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今回の建ものは「巨大アーチ型本棚の家」。
http://www.tv-asahi.co.jp/tatemono/backnumber/#!/2015/37
物語が生まれる家。
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”お父さんの工場の後に生えた大きな大きな幹に、
娘が家族を連れて帰ってきた。
そんな物語。”
番組HPでは、建築家はこんな表現でこの建ものを紹介していた。
東京足立区。この建ものが建つ場所は、住宅街ではない。
3階建て程度のビル型の住居や事務所などが連なっているようだ。
そんな中にあって、そこだけ「ポン!」と魔法をかけたようなお家だ。
楽しい魔女でも住んでいそうで、建ものまでもが、「わっはっはっ!」と笑いそう。
3階建てに、中心が少しずれた切妻屋根が軒を深く出してのっかっている。
建ものの正面には、階段室である円筒が太い木の幹を思わせるように立てられて、
それに寄り添うように、緑が配されている。
その脇に、木の洞に入る入り口ような木製の玄関扉があって、
その上にはツリーハウスを思わせるようなベランダテラスが。
森のような、森の中の小さな家のような外観なのだ。
建ものの中も魔法がかかった森のよう。
1階は、曲面の壁で囲まれた玄関ホール、お風呂、そして寝室。
2、3階は吹き抜けになっていて、天井まで届く壁一面が書棚。
その書棚はどーんと馬蹄形にくりぬかれ、
馬蹄形アーチをくぐると2階部分はキッチン、3階部分は子供室となる。
天井まで届く棚は圧巻で、それをどーんと貫くアーチは壮快で楽しい。
格子状に区切られたその棚の一マスごとは、
家族の「好き」で埋め尽くされていていかにも賑やかだ。
大胆に黄色に塗られた壁はとにかく元気になれそう。
渡辺篤史さんは、「物語がありますね。」そんな表現を
何度もされていた。
建築家がこのご家族と表現した物語を、渡辺さんは読み取られたのかもしれない。
想像の世界がぱーっと開くような、そんな建ものだ。
◇ ◇ ◇
ビルが並ぶという形で建てられている建ものだから、庭はない。
隣家はぴっちりとすぐ横に肩を並べる。
そんな環境だけれど、開放感は十分で、外を存分に楽しめる工夫があった。
各階には、テラス、ベランダがそれぞれに配されている。
1階は全体が土間のような仕上げになっていいるのだけれど、
その延長のようにテラスがある。
2階のベランダは、デッキのような床リビングから一続き。
ベランダはぐるりと囲むように腰をかけられるようにベンチのような縁になっていて、
心地よい人の和ができるような空間だった。
3階のベランダは見晴らし抜群で、夏は打ち上げ花火を望めるのだそう。
1階、2階とも、床の仕上げが外のような雰囲気があって、
外を上手に引き込んで、そして、暮らしを外に上手に引っ張り出していた。
◇ ◇ ◇
この建ものを設計したニコ設計室の作品は、
以前にもこの番組で紹介されたのをよく覚えている。
それもまた、楽しいことで満ちていて、ごにょごにょ動いているような
建ものだった。
そんな建てもの、飽きがきたり、古びたりするのではないかとも思うのだけれど、
今回の建ものに住むご家族もまた、本当によく住みこなしていらした。
ニコファミリー、そんなふうに呼びたくなる。
ニコファミリーはイキイキ楽しい。