渡辺篤史の建もの探訪ーロの字型+スキップフロアの家(関本竜太、株式会社リオタデザイン)

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感想: 

初めての手作り味噌ができあがった。
手作り味噌は美味しいと方々で聞いてはいたけれど、本当に美味しい!
こんなに旨味が豊かなお味噌、なかなか買えないと思う。
 
             ◇ ◇ ◇
 
今回の建ものは「ロの字型+スキップフロアの家」。
http://www.tv-asahi.co.jp/tatemono/backnumber/#!/2015/41
愛車を愛でる中庭のある家。
 
             ◇ ◇ ◇
 
建ものの脇の屋根なし駐車スペースには2台、
そして、高さがぐっと抑えられた穴蔵みたいなガレージの中に1台、
大切に、大切に乗られている個性的な愛車が納められていた。
ガレージの奥にはご主人のアトリエ。
アトリエには横長の窓がつけられていて、
車を眺めて過ごせるスペースになっている。
これだけでも「ガレージのある家」という印象が強く残ってもよさそうなのに、
不思議と残らなかった。
それがこの建ものの一番すごいところだと思う。
 
番組HPの「建築家のひとこと」でも書かれている通り、
建主のご希望のひとつは、
”3台の個性的な愛車のうち1台をビルトインして、
家中のどこからでも眺められる家にして欲しい”
ということだったという。
 
家中のどこからでも
 
すごい愛で方だなあ、と思うのだけれど、
その要望に対して建築家が出した答えは、「 ロの字型+スキップフロアの家」。
「ガレージのお家」という印象を残さないのに確かにしっかり愛でられる。
とても品がいいと思った。
 
              ◇ ◇ ◇
  
家中から愛車を眺められる家は、中庭のあるロの字型だ。
中庭はウッドデッキ状になっていて、真ん中にヒメシャラが植えられている。
2階はキッチンとダイニング、リビング、そして寝室とウォークインクローゼット、
1階はガレージとアトリエ、和室、そして水廻りがぐるりと中庭を囲んでいる。
それぞれの階は、中庭を囲んだワンルームのような一体感があるけれど、
スキップフロアのおかげでメリハリがある過ごし方ができそうだ。
 
中庭を介して、それぞれの場所からの視線が交差する。
リビングからキッチン、寝室からダイニング、
和室からキッチン、お風呂からリビング、
そしてもちろん、リビングからガレージ。
ガレージと中庭との間の壁には、額縁のようなはめ殺しの窓が開けられていて、
他のお部屋からは、中庭越しの愛車を一枚の絵のように眺められる。
中庭越し、というつながり方が、なんとも言えず、いい。
そして、視線はガレージだけに特別に注がれるわけではなく、
ちょっと台所に目をやる、それと同じ目でガレージに目をやる、
そんなさりげない関係であることが、いい。 
 
             ◇ ◇ ◇
 
素材が醸し出す雰囲気もまた、面白くて素敵だった。
 
「川越らしさがある家」が建主の要望であったとのこと。
趣のある黒色のガルバニウム鋼板張りで、直方体の近いようなコロンと四角い建もの。
そこに、真四角の窓が控えめに配されている。
塀などは設けないで、建てものを取り巻くように植栽が施されている。
鋼板張りや緑の風合いがとても味わい深いけれど、
がっちりと手堅いのような、そんな印象のある外観だった。
 
そして中に入ると、、、明るい木の色にほっとなるような美しさだった。
壁には節の模様のない板が貼られていた。
漆喰の壁なんかよりはかたい印象があるけれど、
そのつるりとした明るさと清涼感がいい。
ちょっと強い印象の外観を目にしてから中に入ると、
ごつごつした木の皮を剥いたら真っ白な木肌が現れて嬉しくなるような、
そんな感じがした。
 
そして中庭はというと、レッドシダーという材の板が、荒い表面を露わにして張ってあった。
中庭は、1階部分はデッキになっていて土が露わでないから、
屋内の延長のような感覚がある。
だからよけいに、荒い壁面の表情が「外である」ということを強調しているようで、
そのメリハリがとても新鮮だった。
 
画面では広く見えるこの建ものは、
実際にはずいぶんコンパクトなのだと思う。
それでも、内と外、それぞれの部屋との間には細やかな変化が施されていて、
心がたくさん動く建ものだと思った。