渡辺篤史の建もの探訪ー光る壁と天窓の白い箱(大橋崇弘 + 熊澤英二 + 田部井章 + 中里裕一 + 村上勝、studio LOOP 建築設計事務所)
節分の豆を買いそびれ、今年は小豆を元気よくまいた節分。
さて次は、いよいよ雛様の時。
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今回の建ものは「光る壁と天窓の白い箱」。
http://www.tv-asahi.co.jp/tatemono/backnumber/#!/2016/4
「建もの探訪」ファンの家。
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33歳のご夫婦。
ご主人は、中学生くらいからの「建もの探訪」ファンだという。
そして、自分たちも番組に出たいのです、と最初に建築家に伝えたそうだ。
私と同じように番組を見ていた中学生がいたと、嬉しくなった。
建築家との出会いもこの番組なのだろうか。
この建もの探訪ファンの感性が選んだのは、5人組のスタジオループ。
”依頼主をボーカリストと考え、
様々な分野を学んだ5人がそれぞれの楽器を演奏するように担当し、
思いや願いを込めたこの世に一つしかない大切な一曲を
作曲するバンドのように共に制作していけたら”
と、事務所のHPにメッセージがある。
きっとすごく楽しい家づくりだったろう。
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タイトルにある通り、この建ものは光の採り方がとても特徴的だ。
西側道路に広く面した敷地で、しかし南側からの採光が難しかったという。
建もの全体に光を行き渡らせる方法として考えられたのが、
吹き抜けの「屋内中庭」だ。
西側が接道する敷地だが、玄関は南面の建もの中ほど。
玄関扉を開けると、建物を東西に分ける吹き抜け廊下と、
その廊下に沿う形で設けられた階段が現れる。
天窓からの光が降り注ぐ吹き抜けの玄関ホール兼廊下だ。
1階の各部屋の吹き抜けに面する壁全面には、ワーロンシートが貼られている。
このことで、天窓からの光が壁で遮られることなく各部屋に届く。
そして夜になると、1階の各部屋の明かりはこの屋内中庭にもやわらかに届く。
1階は、主寝室、和室、将来の子供部屋ともなる多目的室になっていて、
その光の加減は、落ち着いた時間を過ごせそうだった。
2階もまた、天窓の光を全体に行き渡らせることができるように、
階段を挟んで設けられたLDKとワークスペースとが一続きになっている。
さらに、東西両側からもたっぷり光が採られていた。
西側はLDKで、LDKと一体に感じられる広いバルコニーが解放的だ。
東側は吹き抜け部に沿ったワークスペース、その奥がトイレと洗面・浴室。
しかし洗面・浴室とワークスペースとの壁は、
腰の高さより上はガラス張りとなっていて、
洗面・浴室に設けられた大きな窓から入る光が、
ワークスペース、LDKへと届く。
1日を通して、あちらから、こちらから、豊かに光が入り、
その変化が楽しい建ものだ。
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台所は、ちょっと使いにくそうという印象があった。
リビングダイニングと一体になった、対面式の台所だ。
白い箱のようなシンプルな調理台が家具のように据えられていて、
その背面に食器、ゴミ、冷蔵庫、その他家電などのための収納棚がある。
それをガバッと隠すように、棚には2枚の引き戸がつけられている。
その様は押入れのよう、といったらよいだろうか。
作業台は、フラットなつくりで、コンロ部分に透明の
飛び散り防止のパネルがつけられている。
デザインも美しいし、お花などもセンスよく飾られているけれど、
手元を隠すようなしきりがないと、作業の手の荒い私は、
水をびちゃびちゃ飛ばしちゃったり、食器洗いスポンジや洗剤、石鹸、
まな板をどこで乾かそうかと困ってしまう。
また、冷蔵庫も隠したいものではあるけれど、
引き戸を開けて、冷蔵庫を開けるなど面倒くさい。
調理時は引き戸をガバッと開けておきたくなる。
しかしそうすると、結構ガバッと見えてしまう。
台所は、使わない時のが短いし、来客時にももちろん使うものだから、
私はやっぱり、もう少し手元が隠れる作業台の方が実用的だし、
収納についても、「使わない時は隠す」ものより、
「見えても美しいもの」がいいなと思う。
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この建ものは、中も外も真っ白だ。
そんなシンプルな空間は、素敵にアレンジされた鉢植えや切り花、
ちょっとした雑貨や装飾品がちりばめられていた。
住み手がセンスよく味付けして、自分たちのものにしていたことがとても印象的だった。
植物の緑、色味のある家具、カラフルな雑貨。
そのバランスがとても上手で素敵だった。
物を置かずに美しくするのはセンスがなくてもできそうだけれど、
物を置いて美しくできるのにはセンスがいる。
少々感化されたむきもあり、アンティークショップのセールで、
私は、ええい、と大きな買い物をしてしまった。