渡辺篤史の建もの探訪ー東西を借景する 階段中心の家 (小宮歩、有限会社 TAU 設計工房 一級建築士事務所)

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感想: 

みんなそろそろ春休み。
1歳児のお遊びクラスも修了式。
春のお別れの寂しさを、久しぶりに味わった今日この頃。
 
             ◇ ◇ ◇
 
今回の建ものは「東西を借景する 階段中心の家」。
http://www.tv-asahi.co.jp/tatemono/backnumber/#!/2016/10
家族も建ものも、とーっとも明るかった。
 
             ◇ ◇ ◇
 
白い鉄製の背骨に木製の肋骨を並べたよう。
手すりのポールは控えめに細い。
そんな階段が、建物の中心に据えられていた。
階段は、1階の玄関ホールを出発して、2階の解放的なLDKを抜け、
3層のスキップフロア状になった3階に到達する。
その階段は、1階、2階、3層の3階、と5層を繋げる。
軽やかだけれど、なかなかインパクトのある姿だった。
1階の玄関ホールからそのスケルトン状の階段を見上げた渡辺さんは、
博物館の恐竜の骨みたいで楽しいですね、と。
ダイナミックなひとつのオブジェのようだった。
 
1階の玄関ホールと主寝室、2階のLDK、そして3階のこども室の各階は、
壁や扉で分断されず、緩やかに階段によって繋がっている。
実際に身を置いてみないと分からないけれど、
特に2階のLDKと3階のこども室の関係には、
ロフトのような一体感がありそうだ。
 
空気が繋がり、場が繋がる。
屋内全体の空気が循環する一体感のあるつくり。
とても気さくで賑やかなご家族が、
毎日ワイワイ暮らしていらっしゃる楽しい雰囲気が溢れるお家だった。
 
             ◇ ◇ ◇ 
 
解放的な階段を持つこの建物は、
冷暖房ももちろん屋内全体でのシステムになっているようだった。
 
冷房は、階段の最上部に大きなクーラーが取り付けられていて、
階段部をつたって冷気が建もの全体に降りていくようになっていた。
お寺が隣接する敷地とあって、広いきれいに手入れされた庭が
LDKの幅いっぱいに設けられた窓からめいっぱい望める。
そんな大きな窓をはじめ、2階、3階にはベランダもいくつも設けられている。
また、LDKは明るいけれど、南の窓からサンサンと光が注ぐというものではないので、
夏場でも、窓を開けたら随分と風が通って過ごしやすそうだった。
 
さて、暖房はどうだろう?
1階にガスファンヒータが設置されている。
1階は、床下に空気経路が設けられていて、そこにヒーターの熱を送ることで床暖房に、
また、玄関ホールと主寝室を分ける壁も暖気が通るようになっていて、
さらに壁材としてレンガを用いて蓄熱効果を期待しているとのこと。
2階、3階のことは説明がなかったけれど、
このヒーターの熱がどれくらい届くものなのだろうか。
3階の子供室にはオイルヒーターが置いてあるのが目についたので、
1階のヒーターだけで全体でポカポカとはいかないのだろう。
トイレも寒くない家がいいなあと常々思う私は、
こういう屋内全体での暖房設備はとても興味深い。
渡辺さんの、「あったかいですねぇ。」が聞きたい。
実際のところ、どうですか?
 
             ◇ ◇ ◇ 
 
この建ものは、要所を絞って木のぬくもりを大切にしていた。
印象的なのは、お風呂と台所。
 
建ものの雰囲気からタイルの浴室かな?と予想していたけれど、
ばーんと木の壁だった。
ここは譲らなかったのだ、となんだか感心。

そして何より台所は特筆だ。
長く使っている無垢の木の食卓の手触りがとても気持ち良くて好きだから、と、
シンク周りもガス周りもすべて天板はウォルナット製。
家具屋さんに設えてもらったのだという。
手入れは?というのが気になるところだけれど、
「大切に、と思うから、汚れたらすぐに拭き取る習慣がついて、
めんどくさがりな私もきれいに保てているところがいい。」
と奥様はおっしゃっていた。
そうだね、そういうものだよね、と納得。
暖かくなってきたし、我が家の台所もピッカピカに大掃除して、
「大切に、汚さないように」
と心を入れ替えて所作を見直してみようかな。
 
こんなこだわりが光る建ものだった。