渡辺篤史の建もの探訪ー趣味を楽しむビンテージハウス (柳 勉、ブリックス。一級建築士事務所)

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建もの探訪ファン
感想: 

ギターの練習でも再び始めようかと思うこの頃。
そのうち一緒にできるかな?と期待も膨らむ。
さてさて、新学期。
どんな出会いがありますか?
 
             ◇ ◇ ◇
 
今回の建ものは「趣味を楽しむビンテージハウス」。
http://www.tv-asahi.co.jp/tatemono/backnumber/#!/2016/13
ひとつひとつ集めたものが、真新しくない新しいものになっていた。
 
             ◇ ◇ ◇
 
「これは?」
「○○年前にアメリカで使われていた○○です。」
「これは?」
「米軍払い下げのものです。」
「これは?」
「ヴィンテージではないのですが、○○社製作のものです。」
「これは?」
「工場で使われていた照明なんです。」
 
今回の番組は、こんな会話で成り立っていた。
室内は、家具や小物、タイルや板材、洗面台や鏡まで、
年月を経た味わいを持つものばかり。
ご家族が集めてこられたアンティークやインダストリアル系の
家具や小物類だ。
そんなだから、渡辺さんの好奇心は収まらない。
それはもう、いちいち、いちいち尋ねたくなるのだ。
 
真新しいのはいやだから、というご夫婦のの希望に応えて、
外壁は、藁入りのモルタルを素人仕事のように粗く仕上げている。
食堂と階段室とを隔てる壁は、これもご主人の古材コレクションが
パッチーワークのように張られていた。
この壁、大きな絵が一枚どーんと飾られているような、そんな存在感があった。
台所に張られたタイルは、アメリカの地下鉄駅で使われていたもの。
きれいに磨かれているとはいえ、駅のものがキッチンに、というのは
私はなんとなく抵抗があるなあ、と思うのだけれど、
そのタイルによって出された雰囲気はとっても素敵。
新しく作られた明るい色の木製の収納棚やキッチン台とよく馴染んでいた。
 
ご夫婦が長年集めてこられた品々をどう生かすか工夫したり、
新たに趣向にあった素材や設備を探し出したり、
楽しい家づくりだったろうなと思う。
 
             ◇ ◇ ◇ 
 
ご両親の家が建つ敷地を分筆した敷地で、敷地面積は88坪とゆったりだ。
番組HPの建築家からのひとことを読むと、
広い土地ながらも、ご両親が住む建ものとの関係や、もともとあった庭木、
高低差、周辺環境との関係など制約はいろいろとあったとのこと。
しかし、見ればただただ、ゆったりとした土地に、
ゆうたりと建っているという印象を受けた。
 
2棟に分かれた建もので、その2棟を屋根付きデッキが繋ぐ。
離れは趣味のオーディオルーム!
母屋の中心にある小さな玄関扉より、
このデッキから「こんにちはー」、と入ってしまいそうだ。
このデッキの有り様が、「ゆうたりと」なのだ。
どこか、アメリカの田舎のお家の玄関ポーチ(映画でしかみたことがないけれど)
を思い起こすようなデッキで、そういう伸びやかさがあった。
 
             ◇ ◇ ◇ 
 
敷地と建ものの佇まいはゆうたりとしているのだけれど、
建もの自体はそれほど広くはない。
でも、そのサイズ感がなんだかとても心地よく、
家族が集う場所として、ほどよい親密感があって。
とてもすごしやすいように感じた。
 
玄関、階段、食堂、居間との間にはドアがなく、
ひとつながりの空間になっている。
でもそれが、つい立のような壁や段差をもって、とてもうまく空間が区切られていて、
それぞれがちょうど家族が過ごすのに心地よい広さ。
そして、よい具合に視線や空気が抜けていくようだった。
 
玄関を入ると正面に踊り場を持つ階段がある。
その踊り場を隔てた先が居間スペース。
居間スペースは、階段の踊り場がちょうど玄関からの目隠しとなり、
また、玄関や食堂から一段下げて作ってあるために、
ぐるり囲われたような落ち着きがある。
玄関を入って左手には扉のない門型の出入り口があって、
そこを入ると食堂だ。
この食堂も、隣り合う食堂と階段は、先にも少し記述した
古材パッチワークのつい立てのような壁によって空間が区切られているけれど、
空間的には玄関や居間とひとつながりになっている。
そういう、家全体の一体感がとてもよいなと思った。
 
建築家からのひとこと、にもあるように、
自然豊かなゆったりした土地でありながら、窓は必要最小限。
食堂や居間では、開放的な窓、景色が印象的な窓はなかった。
でもそれが、よい安心感をもたらしていると感じた。
このお宅には、デッキや庭など、外を楽しめる場所が十分ある。
だからこそ、外と内とのそれぞれの役割や雰囲気を十二分に楽しめると思った。
 
土地とご家族、そして建ものが、よくなじんだお宅だ。