渡辺篤史の建もの探訪ー2つの庭と2つの吹き抜けの家(山縣 洋・ 山縣洋建築設計事務所)

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建もの探訪ファン
感想: 

公園に入ったら、ふうわりと甘い香りがした。
見回したら、クチナシの白い花が満開!
雨あがりの庭で〜♪ クチナシの香りの〜 ♪ やさしさに 包まれたなら〜 ♪  きっと〜 ♪
ユーミンの歌は、なんてぴったりとくるのかしらと思う。
 
娘をだっこして、毎日お散歩へ出る。
引っ越してきて1年足らずのこの街には、まだまだ知らない道がたくさんあって、1本入ってみる楽しさをまだまだ味わえる。
そんな散歩エリアには、新しくはなくとも丁寧に手入れされたお家が多い住宅街があって、それを眺めながら歩くととりわけ心躍る。
掃き清められた玄関。
こざっぱりと選定された庭木。
きちんと整えられた窓辺。
家主のしっかりした家事技術のもと、お家がよい具合に年を重ねてきた様子がとても心地よいのだ。
 
            ◇ ◇ ◇
 
今回の建ものは「2つの庭と2つの吹き抜けの家」。
http://www.tv-asahi.co.jp/tatemono/backnumber/#!/2014/17
都心にあってもゆったりとした敷地に建てられた、とても大らかな表情の建ものだった。
 
            ◇ ◇ ◇
 
このお宅は、ご実家の敷地を分筆して建てられている。
ご実家はとてもすっきりとした白い壁のお家で、丁寧に住まわれてきたことが分かる、まさに私がお散歩で楽しみにしているようなお家だった。
そういうお家で育ってきた人が、新しい自分の家族のために建てた新しいお家。
 
番組HPでは、「そんな敷地内の既存の建ものに『折り合いをつけるように』設計した」と設計者はコメントしているけれど、その「折り合いをつけるように」という関係性がとても素敵な建ものだと思った。それは、建ものと建ものの関係性というだけでなく、ご両親と若い家族との関係性ということもあると思うのだ。
 
とってもモダンでも既存の古い塀によく似合っていて、独立しています、と、どっしりと構えたような表情がある。
1階リビングの大きな窓はとても開放的で、既存のお庭を隔ててご実家のリビングの窓へとふんわりと繋がる。お互いの生活を尊重しながらも、気軽に行ったり来たりしながらちゃんとご両親の暮らしとつながっていけるのだと思う。とっても大らかな建ものだ。
 
            ◇ ◇ ◇
 
「2つの庭と2つの吹き抜けを持つ家」
番組を見終わって、このタイトルの「庭と吹き抜け」が強く心に残ったわけではなかったけれど、大らかな建ものだったと改めて思い返してみると、どうもその大らかさを作っているのが「庭と吹き抜け」のような気がするのだ。
光の変化や空間の広がりが、とても伸びやかで安心感のある感じがした。