渡辺篤史の建もの探訪ー景色を切り取る大窓の家(岩﨑浩平+阿部任太、一級建築士事務所 EANA)

ユーザー 建もの探訪ファン の写真
建もの探訪ファン
感想: 

娘のカーディガンをと編物をはじめたけれど、ちっとも進まない。
本当に進まない。
出産前は、姪に、甥に、と没頭してせっせと編んだのになあと、口惜しい。
春は遠いはずだから、焦らずゆこうと思うけれども。
 
            ◇ ◇ ◇
 
さて、今回の建ものは「景色を切り取る大窓の家」。
http://www.tv-asahi.co.jp/tatemono/backnumber/#!/2014/44
高層マンションの眺望のよい1戸がぽんと取り出されたような印象のお家だ。
 
            ◇ ◇ ◇
 
我が家の窓のレースのカーテンは、普段、閉じたまんまだ。
お向かいの建物が迫っているわけではない。
大きな出窓とベランダへの掃き出し窓があるから、いつもたっぷり光も入る。
気温が穏やかな季節ならば、窓を開ければ、風は気持ちよく抜ける。
それでも、「景色を楽しむ窓」ではないと思っていた。
窓からは外の気配や光を感じるだけで、たいていの日は、 外の様子をじっくり眺めもせずに
分厚いカーテンをひく時間になる。
私は毎日、この部屋で何を見て過ごしていたのかしら。
  
視界の抜ける窓のレースのカーテンを半分、思い切って開けてみた。
遠くに公園のこんもり茂る木々が、秋色に色づいているのが奇麗に見えた。
食卓の一席に座ると、青空と色づいた木々と青い屋根のお家が絵みたい見えた。
娘と一緒にごろんとしてみると、出窓のシクラメンが青空にぽっかり浮かんで見えた。 
なあんだ、我が家にもいい窓があるじゃあないの。
 
            ◇ ◇ ◇
 
できるなら、私は一戸建てに住みたいと思っている。
地面にすぐ降りられて、その地面が自分達の生活空間と密に繋がっていたいと思うのだ。
田舎育ちの私は、一戸建てとはそういうものだと思うのだけれど、
このお家は、マンションみたいだ。
1階は、掃き出し窓があるわけでもなし、窓なし穴蔵みたいな個室に水回り。
その上に、天井高4mのリビングが広がる。
大窓は、眼下に広がる街と公園の木々の豊かな風景を大きく切り取る。
まるで高層マンションの眺望を楽しむ部屋のようだと思うのだ。
 
1階が地面に繋がる喜びは封印して、とっておきの展望室から外を楽しむことを選んだお家。
敷地の限られる都心での生活には、こんな暮らしとお外との関係もまた素敵だなと思った。
庭に降りる、公園に散歩に行く。
そういうこととは違う、お外の生活への取り込み方。

番組Webページに、建築家は書いている。
”一度にすべての外部環境を体感するのではなく、
生活になぞらえてそこにシーンを切り取り、
もたらすことで豊かな環境に付加価値を付けて受け取ることが
できるのではと考えました。”
少々難解で、この言葉を真に理解できているか自信はないけれど、
私は今、窓が持つ力のことをぐるぐるっと考えながら、
自分達の窓を、今までよりちょっと愛情を持って眺めている。