二世帯住宅を検討するとき、必ず出てくるのが「玄関を一つにするか、二つにするか」という悩みです。
この選択は、家の雰囲気だけでなく、家族関係や日々の暮らしやすさにも大きく影響します。
10年以上二世帯住宅で暮らしてきた建築家として、実体験を踏まえた視点から、それぞれのメリット・デメリットをご紹介します。
1. 玄関一つタイプの特徴
親世帯と子世帯が同じ玄関を使う「共用タイプ」です。
メリット
コストを抑えられる
玄関ドアや外構工事が一つで済むため、初期費用を抑えられます。
自然なコミュニケーションが生まれる
出入りのタイミングで顔を合わせる機会が増え、家族のつながりを感じやすいです。
空間を効率的に使える
玄関ホールを広く取り、収納やシューズクロークを共有すれば省スペースに。
デメリット
プライバシーが低い
誰が出入りしたか一目でわかるため、生活リズムの違いが気になることも。
来客対応の負担
宅配や来客が重なったとき、どちらの世帯が対応するか迷うことがあります。
共有スペースのルールが必要
「靴をどう並べるか」「宅配物はどこに置くか」など、事前の取り決めが大切です。
2. 玄関二つタイプの特徴
親世帯と子世帯が別々の玄関を使う「分離タイプ」です。
メリット
プライバシーをしっかり守れる
生活時間や来客がかぶっても干渉せず、気兼ねなく暮らせます。
生活スタイルの違いに柔軟に対応
親世帯は早寝早起き、子世帯は夜型でも、お互いに音や出入りを気にしません。
将来の資産価値が高い
二世帯同居をやめた後も、賃貸や完全分離住宅として活用しやすくなります。
デメリット
コストが上がる
玄関ドアや外構工事が二倍になるため、初期費用が高くなります。
面積が必要
二つの玄関スペースを確保するため、敷地や間取りに余裕が必要です。
顔を合わせる機会が減る
別々の生活感が強くなり、家族の交流を意識的につくる必要があります。
3. 「一つ+半分」タイプという選択肢
最近は、「セミ分離型」と呼ばれる中間タイプも増えています。
玄関ドアは一つだが、中で親世帯と子世帯用に二方向へ分岐
共有のシューズクロークから、それぞれの動線に分かれる
普段は別々、必要なときだけ顔を合わせられる
この方法なら、省スペース・コスト抑制・プライバシー確保のバランスが取りやすく、限られた敷地にも向いています。
4. 家族に合う玄関は「会う頻度」で決める
玄関を一つにするか二つにするかは、正解があるわけではありません。
大切なのは、家族同士で「どれくらい顔を合わせたいか」を最初に話し合うことです。
「毎日お互いの顔を見たい」 → 玄関一つタイプ
「生活は分けたいけど交流もしたい」 → セミ分離型
「完全に独立した生活を送りたい」 → 玄関二つタイプ
家族の距離感を間取りに反映させることが、同居ストレスを防ぐ最も大切なポイントです。
まとめ
二世帯住宅で玄関をどうするかは、単なる設備の問題ではなく、家族関係をデザインする大切な選択です。
費用、スペース、暮らし方、将来のライフプラン…。
どれを優先するかによって最適な答えは変わります。
「うちにはどのタイプが合うのか分からない…」
そんなときは、10年以上二世帯住宅で暮らしてきた建築家に相談してみてください。
実体験を踏まえた設計で、家族みんなが心地よく暮らせる二世帯住宅を一緒に考えていきましょう。