車やバイクが身近な存在になるビルトインガレージ・中川龍吾建築設計事務所 中川龍吾さん


 
ビルトインガレージのある家を建てると、車好き・バイク好きの人にとっては常に車やバイクが身近な存在になります。
 
ビルトインガレージについて中川龍吾建築設計事務所 中川龍吾さんに伺いました。
 

お話を伺った建築家

 

ユーザー 中川龍吾建築設計事務所 中川龍吾 の写真
東京都練馬区関町南4-8-13
03-3929-7684

 

ビルトインガレージとはなんですか?

車やバイク等の駐車・格納スペースを建物内の一部に取り込み、シャッターやオーバードア等を設置して室内化したガレージ(車庫)の事です。

貴社がビルトインガレージを手がけるようになったきっかけがありましたら教えてください

特別なきっかけがある訳ではありません。
建て主さんからのご要望により、こちらで手掛ける住宅においてその割合が近年非常に増えてきているものです。

東京では車を持たない人が増えてきていることからすると、それとは逆行する傾向ですが、より利便性の高い家に住みたいとか、狭い敷地に駐車スペースを設けたいというニーズが増えてきていることが主な要因かと思っています。

ご参考までに、あくまで私の事務所で手掛けた住宅の実績に限定しての話ですが、これまで手がけた住宅においてビルトインガレージを設けた住宅は約30%、その大半はこの12年位の間に集中しています。

ビルトインガレージのメリット・デメリットを教えてください

まずメリットに関しては、

  • 風雨が強い日でも車の出し入れ・人の乗り降りが簡単で、荷物の搬出入が楽。
  • 盗難の被害(防犯)や風雨から車が守られる。
  • 趣味の部屋、屋外用品の収納場所などとして使用が可能。
  • 狭い土地でも駐車スペースを確保することが可能。
  • 車好き、バイク好きの人にとっては常に車やバイクが身近な存在とできる。

といったことが挙げられます。

一方、デメリットとしては、

  • 主に玄関・アプローチ、その他の間取りや配置、構造計画に関する制約が多くなる。
  • エンジン音、振動、排気ガスの臭い等、程度の差はあっても対策が必要となる。
  • 建屋としての工事費が必要となる。

といったことが挙げられます。

ビルトインガレージの間取りで工夫している点を教えてください

まず第一には玄関との関係性です。
玄関やアプローチの雰囲気を壊さず、利便性の高いつながりを持たせることは毎回重視していることのひとつです。

次は、キッチンや食品庫等との関係性です。
買い物等、玄関に持ち込むよりもいわゆる勝手口から運び込んだ方が良い場合も多いものです。
上記の双方を両立できるケースもあれば、片方だけの時もありますが、ビルトインガレージを計画する上で最も時間をかけて検討すべきはこの機能的な動線計画とプランニングだと思っています。

話は逸れますが、私の事務所の設計作業の部屋はかつてビルトインガレージであった場所を改装して使用しています。
住宅は時の経過と共に求められるニーズが変わっていくもので、家族構成も変わることがあります。

私のようにガレージを仕事場にするケースもあれば、その他の居室にしたりすることもあるかと思います。
家へのニーズが変わった時に、まず手をつけやすいのがガレージでもあります。

ガレージ新設の計画時にはなかなかそこまでは考えることは少ないでしょうが、家の中の第3の部屋として、さまざまな可能性を考慮しておくこともガレージを造る際には必要だと思っています。

ビルトインガレージのサイズはどれくらいでしょうか?

これまで手掛けたビルトインガレージ(1台用)の内法寸法としては、間口は2.6~4.3m、奥行きは4.6~6.7mと、家によってかなり差があります。
この寸法は棚等を除いた車用のスペースの寸法ですが、想定する車種やガレージに対するご希望、その他の条件によるものです。

標準的な乗用車1台用のガレージとしては、2.6m×5.2mは確保する必要があると考えています。

ビルトインガレージのシャッターはどのようなものを使っていますか?

電動シャッターを使用することが最も多く、防火仕様とするか否かは法的な条件次第です。
防火仕様の場合、意匠的に非常に限定されたデザイン(色)の物しかないのに毎回悩まされています。

電動のオーバードアを使用するケースもありますが、この場合は室内の照明計画が難しくなったりと、ベストといえるスタイルや定番といえる形式がないため、毎回ご要望や諸条件により検討、打合せをしながら決めています。

ビルトインガレージの建ぺい率はどうなりますか?

ビルトインガレージは壁で囲まれて屋根もありますので、建築基準法上、建築物として扱われます。
一般的な造り方の場合は建築面積に算入する必要があり、建ぺい率の制約を受けるもので、緩和規定はありません。

傾斜地等に建つ住宅等で、ガレージが地下階であれば建ぺい率の制限は受けません。
戸建ての敷地内なら、自由に駐車場やガレージを造ることが出来ると思っている方もおられますが、建ぺい率の点では制約が多いものです。

ビルトインガレージの容積率緩和とはどのようなものでしょうか?

自動車用車庫については、建築基準法上、その面積が延べ床面積の1/5までは床面積に含めなくてもよいとされています。
また地下に設ける場合は、容積率上も延べ床面積の1/3までは、地下の面積は算入しなくてもよいとされています。

ビルトインガレージの価格はどれくらいでしょうか?

主要構造が木造かRC造か、或いは鉄骨造かで価格は変わってきます。

また、平屋のガレージか、2階建てや3階建ての住宅の1階に設けるのか、或いは地下階に設けるのか。
これらによって建築に関わるコストは大きく変わってきます。
また、遮音や断熱、シャッター等の仕様をどの程度のグレードにするかによってもコストに影響します。

通常、木造2階建て住宅の1階部分に設けるのであれば50~60万円/坪で、RC造の地下階であれば100万円/坪はかかるものとなります。

ビルトインガレージには固定資産税がかかるのでしょうか?

ビルトインガレージの固定資産税の評価額は、居室よりも低くなりますが、基本的にはかかります。
ガレージの大きさや自治体ごとに定められている規定によって、固定資産税の金額はさまざまのようです。
評価員によっても変わることがあるようにも思っています。

また、ガレージの入口に電動シャッターがついている場合、ぜいたくな設備として固定資産税の評価対象となるケースもあるようです。
しかし建物全体から見ればその割合は大きくはないですし、何台も置く大きなガレージでなければ、年間で数千円から数万円といわれていますのですので、そのメリットからはあまり気にしなくても良いものと思っています。

ビルトインガレージの平屋も設計していただけますか?

もちろん可能です。

ビルトインガレージの賃貸住宅も設計していただけますか?

ローコストの賃貸住宅は経験がなく難しいと思いますが、中~高級賃貸住宅であれば対応可能です。

善福寺の家(広い庭とガレージの2世帯住宅)で工夫した点を教えてください

ガレージに限定してお話をさせて頂きます。
この家のガレージは、大型の乗用車と自転車2台を置き、外部で使用する用具類や冬タイヤ等、収納スペースを充分に設けることが建て主の方から受けたご要望でした。

ガレージは2階建ての住居部分とつながってはいますが、道路と住居の間に平屋のガレージとして計画したものです。
道路に面しては低層の建物としたかった事、エンジン音や振動、臭気等を住まいの部分に入れたくなかった事が主な理由です。

プランとしては、分離型の2世帯住宅にあって双方の世帯からこのガレージを使用できるようにした事、ガレージから北庭に通り抜けができるようにした事が大きな特徴です。
また変形した敷地形状に合わせて、道路に面する間口を広くとった台形状のガレージです。これにより道路に出る際の死角も少なくなるようになっています。

ガレージの有効間口は道路側が4.9mで奥は2.8m、奥行きは6.7mとこれまで手掛けたガレージの中では最も広いスペースのガレージで、ガレージ内に設けた壁面収納棚は間口3.7m、奥行き60センチという大きなものです。

木造のガレージですが、内壁は外壁と同様にモルタル塗の上ウレタン塗装とすることで火や水、衝撃にも強い仕上材、天井は不燃材、床は摩耗や油に強い駐車場専用の塗床仕上げとしています。壁や屋根の断熱は、居室と同じ仕様です。

また、ビルトインガレージは窓の少ない薄暗い場所になりがちですが、南北に窓を設けることで明るく自然な換気が可能なスペースとしました。

中川龍吾建築設計事務所 中川龍吾さんのビルトインガレージ・設計事例

 

画像 建物の名称 紹介文
田端の家(防音室とお茶室のある2世帯住宅)

「2世帯のより良い関係性を築くことができる家」
「家族それぞれがゆったりと自分の時間を過ごせる家」
「機能性や耐久性の高いしっかりとした家」
「明るく風通しの良い家」
「ワンランク上の性能を有する家」

市ヶ谷の家(外断熱工法の2世帯住宅)

周囲のオフィスビルや道路からの視線等からプライバシーが守られる家とするため、
外部には閉じて、中庭に開く家としました。
中庭は光を採り入れ、各室の自然な通気をはかると同時に、
上下階の各室の気配を感じることができるようにも意図したものです。

府中の家(ペットとゆったり暮らす家)

この住宅は、仕事を引退されたご夫妻が、愛犬と共に郊外の住宅地に移住してゆったりと暮らすための住まいです。

比較的広い敷地であったことから、愛犬を放す庭を可能な限り大きく残しながらも、1階に生活の場の大半を設けた住宅です。

善福寺の家(広い庭とガレージの2世帯住宅)

杉並区善福寺の住宅地に建つ木造2階建ての2世帯住宅です。
もともと広い庭のある敷地に建っていた昭和初期の建物の建て替えです。
1階はご両親の住まいで2階は子世帯という、2世帯住宅としてはオーソドックスといえる構成の住まいです。

大泉学園の家(薪ストーブと自然素材の家)

練馬区大泉学園の住宅地に建つ家です。
南と西側が道路に面する陽当たりの良い敷地にこれまでよりもゆったりと過ごせる家が求められた住まいです。
1階はリビングダイニング、キッチン、食品庫、洗面・トイレとガレージ、

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