その土地ならではの魅力を建物に取り込んだペンション・株式会社 本多建築設計事務所 本多 和夫さん


ペンション建築では、その土地ならではの魅力を建物に取り込むことが重要です。
眺望、光、風、季節の変化、周囲の自然や街並みなどを生かすことで、宿泊者の印象に残る施設になります。
 
ペンションについて株式会社 本多建築設計事務所 本多 和夫さんに伺いました。

お話を伺った建築家

 

ユーザー 株式会社 本多建築設計事務所 本多 和夫 の写真
新宿区新宿1-24-7-413
03-3359-5612

本多さんがペンション・宿泊施設の設計を手がけるようになったきっかけがあれば、教えてください

 
住宅設計を通じて、建物と人の暮らし方、過ごし方を丁寧に考える仕事を続けてきたことが、ペンションや宿泊施設の設計につながっています。
 
ペンションは、単に泊まるための建物ではなく、オーナーの人柄、土地の魅力、食事、景色、滞在中の時間の流れが一体となって成立する建築です。
住宅設計で培った「居心地の良さ」や「暮らしに近い空間づくり」の経験が、宿泊施設の設計にも生かせると考え、取り組むようになりました。

ペンションと旅館やホテルとの違いは何ですか?

 
ホテルは機能性や効率性、旅館は和のもてなしや格式が重視されることが多いと思います。
一方、ペンションは、より個人経営に近く、オーナーの考え方や生活感、地域性が建物に表れやすい施設です。
 
宿泊者にとっては、ホテルのような匿名性ではなく、「その場所ならではの体験」や「オーナーとの距離感」が魅力になります。
そのため建築としても、大規模施設のように画一的に計画するのではなく、敷地、景色、食事、共用空間、客室の雰囲気を一体で考えることが重要です。

ペンション建築・設計で最も重要な注意点は何ですか?

 
最も重要なのは、宿泊者にとっての快適性と、オーナーにとっての運営しやすさの両立です。
 
客室の居心地、音の問題、断熱性、暖房・冷房、浴室やトイレの使いやすさ、食堂や共用部の雰囲気など、宿泊者が実際に過ごす場面を具体的に想像して設計する必要があります。
 
同時に、ペンションはオーナーが日々運営する建物です。
厨房、リネン、清掃動線、バックヤード、スタッフ動線、設備管理などが無理なく行えることが、長く経営を続けるうえで非常に大切です。

ペンション経営が成功するためには、建築・設計の段階でどのような工夫が必要ですか?

 
まず、その土地ならではの魅力を建物に取り込むことです。
眺望、光、風、季節の変化、周囲の自然や街並みなどを生かすことで、宿泊者の印象に残る施設になります。
 
また、客室数を増やすことだけを優先するのではなく、適切な客室数、共用スペースの広さ、厨房やバックヤードの機能、維持管理費のバランスを考えることが重要です。
 
ペンションは、建設費だけでなく、運営費、修繕費、光熱費、人件費にも大きく影響されます。
そのため、設計段階から断熱性能、設備計画、メンテナンス性、清掃のしやすさを考えておくことが、経営面でも大きな効果を持ちます。

『ペンショングスベリー』(北海道・富良野)を設計する際に工夫した点を教えてください。特に「立地を生かした設計」という観点から

 
北海道・富良野という場所の魅力を、建物の中でどのように感じてもらうかを大切にしました。
 
富良野は自然環境が非常に豊かで、四季の変化、広がりのある風景、空の大きさが大きな魅力です。
そのため、建物を単に敷地内に置くのではなく、周囲の景観との関係を意識し、窓の取り方、共用部の向き、外観の表情などを検討しました。
 
特に、宿泊者が食事をしたり、くつろいだりする時間に、外の風景を自然に感じられることを重視しました。
客室だけでなく、ダイニングや共用スペースからも、富良野らしい自然を感じられるようにすることで、滞在そのものが記憶に残るような建物を目指しました。
 
また、北海道の気候を考えると、断熱性や暖房計画も非常に重要です。冬でも快適に過ごせること、雪や寒さに対して建物が無理なく維持できることを意識して設計しました。

ペンションの客室設計(間取り・面積)では、どのような配慮をされていますか?

 
客室は、広ければ良いというものではなく、宿泊者が落ち着いて過ごせる寸法、ベッド配置、荷物置場、窓の位置、照明、収納、音の配慮が大切です。
 
ペンションの場合、宿泊者は部屋に長時間こもるというより、食事や共用スペース、周辺観光も含めて滞在します。
そのため、客室は過不足のない面積としながら、清潔感、落ち着き、使いやすさを重視します。
 
また、隣室や廊下からの音、トイレや浴室の位置、空調の効き方、窓からの景色にも配慮します。
特に宿泊施設では、夜間の静けさや睡眠の質が満足度に直結するため、防音や動線計画は重要です。

ペンションのダイニング・共有スペース設計で大切にしていることは何ですか?

 
ペンションでは、ダイニングや共有スペースが建物全体の印象を決める重要な場所になります。
宿泊者が食事をし、くつろぎ、オーナーや他の宿泊者との交流が生まれる場所だからです。
 
そのため、単にテーブルを並べるのではなく、天井の高さ、窓からの景色、照明、素材感、厨房との距離、配膳のしやすさなどを総合的に考えます。
 
特に食事の時間は、ペンションの大きな魅力になります。
料理を出しやすく、宿泊者が落ち着いて食事を楽しめること、さらにその場所から見える風景や空間の雰囲気が記憶に残ることを大切にしています。

ペンション建築にかかる費用(建築費・設計費)について、目安となる数字や考え方があれば教えてください

 
建築費は、地域、構造、規模、仕様、設備、客室数、浴室の形式、厨房の規模、外構工事の内容によって大きく変わります。
 
木造の小規模ペンションであっても、一般住宅と比べると、厨房、客室、共用部、浴室、消防設備、避難計画、断熱・空調設備などが必要になるため、単純な住宅単価では考えにくい面があります。
近年は建設費も上昇しているため、計画初期の段階で概算予算を慎重に検討する必要があります。
 
大まかな考え方としては、建築本体工事だけでなく、外構、設備、厨房機器、家具、照明、カーテン、サイン、設計監理費、各種申請費用、予備費まで含めて総事業費を考えることが重要です。
 
設計監理料については、規模や業務範囲によりますが、一般的には工事費の一定割合、または業務内容に応じた見積方式で算定します。
宿泊施設の場合は、法規確認、保健所・消防協議、設備計画、運営動線の検討などが必要になるため、早い段階で設計者に相談されることをおすすめします。

ペンション設計で、景観や周辺環境(立地)がどの程度の影響を持ちますか?

 
非常に大きな影響があります。ペンションは、建物だけで完結するものではなく、「どこに建っているか」が魅力の大部分を占めます。
 
山、森、畑、海、湖、街並みなど、周辺環境によって建物の向き、窓の取り方、外観、外部空間、アプローチ、駐車場の配置まで変わります。
 
良い景観がある場合は、それを最大限に生かすことが大切です。
一方で、隣地や道路、騒音、視線、積雪、風向きなどの条件が厳しい場合もあります。
その場合は、建物の配置や開口部の工夫によって、マイナス要素を抑えながら、敷地の良さを引き出す設計が必要です。

旅館業法などの法律面での制約と、その中での創意工夫について教えてください

 
ペンションは住宅とは異なり、旅館業法、建築基準法、消防法、保健所の基準など、さまざまな法規制を受けます。
 
客室面積、採光・換気、避難経路、階段、廊下幅、非常照明、誘導灯、火災報知設備、消火設備、厨房、浴室、トイレ、衛生管理など、計画初期から確認しておくべき項目が多くあります。
 
ただし、法規制は単なる制約ではなく、安全で快適な施設をつくるための基本条件でもあります。
その条件を満たしながら、どのように魅力的な空間にするかが設計者の役割です。
 
例えば、避難経路や廊下を単なる通路にせず、光や景色を感じられる空間にする。
消防上必要な区画や設備を、建物のデザインと違和感なく納める。
保健所や消防との協議を早めに行い、無理のない計画にまとめる。
そうした工夫が大切です。

これからペンション建築・設計を依頼したいと考えている方に、アドバイスをお願いします

 
まず、建物のイメージだけでなく、どのような宿泊体験を提供したいのかを整理することが大切です。
 
どのようなお客様に来てもらいたいのか、食事を重視するのか、景色を楽しむ施設にするのか、家族連れ向けか、大人向けか、長期滞在向けかによって、必要な建物は大きく変わります。
 
また、建設費だけでなく、開業後の運営、清掃、修繕、設備更新、光熱費、人件費まで考えた計画が必要です。
初期投資をかけすぎると経営を圧迫しますし、逆に建物の魅力や性能を落としすぎると集客に影響します。
 
土地探しや計画の初期段階から、設計者に相談することをおすすめします。
法規制や予算、敷地条件を早めに整理することで、無理のない計画になり、結果的に良い建物につながります。

貴社に設計・監理を依頼できるエリアを教えてください

 
本多建築設計事務所は、東京都を拠点に、首都圏を中心として設計・監理を行っています。
 
また、計画内容や条件によっては、北海道を含む地方の宿泊施設についてもご相談をお受けできます。
ペンションや宿泊施設は、敷地の魅力や地域性が特に重要ですので、現地の状況を確認しながら、施主様と一緒に計画を進めていきたいと考えています。

株式会社 本多建築設計事務所 本多 和夫さんのペンション・設計事例

 

画像 建物の名称 紹介文
ペンショングズベリー

ペンショングスベリーは北海道・富良野にある、家族で経営する小さなペンションです。

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