住宅密集地でも癒される住空間・ARKSTUDIO一級建築士事務所 茶之木宏次さん・羽木みどりさん


 
住宅密集地のメリットは、日常生活の利便性にあります。
徒歩で、日常の様々な用が済み、駅が近いので、どこへ行くにも便利です。
 
その反面、敷地が狭く、家の中で快適な日常生活を過ごすという面からいえば、通例的なプランニングでは、なかなか良い環境での暮らしが出来にくくなっています。
 
住宅密集地についてARKSTUDIO一級建築士事務所 茶之木 宏次さん・羽木みどりさんに伺いました。
 

お話を伺った建築家

 

ユーザー ARKSTUDIO一級建築士事務所 茶之木宏次+羽木みどり の写真
大阪市平野区加美鞍作1-11-6-3403
06-6796-0105

 

貴社が住宅密集地の建築設計を手がけるとき、心がけていることがありましたら、教えてください

 
大阪市内はもとより、京都市内、神戸市内の中心部の住宅地も大半の住宅地が住宅密集地となっております。
そのような住宅地は、隣棟間隔が狭く、建蔽率一杯に建物を建てざるを得ない状況で、敷地に空きスペースも僅かしか残りません。
 
建売住宅の建ち並ぶ街区では、特に1階の部屋は照明無しでは暗く、1日中人工照明に頼り、風通しも悪く、不健康な生活を余儀なくされている例をよく見聞きします。
 
その様な環境の中で、如何に快適で健康に住める住宅をつくるかという課題に取り組み、そこで暮らす方々が心豊かな人生を送っていただけるようになるための手助けをしていきたいと思っております。
 

住宅密集地のメリット・デメリットを教えて下さい

 
駅や、色々な店舗、病院や他の公共施設なども近くにあって、日常生活を営む上で、利便性の高いところには人が集まってきます。そうすると、土地の価格が上がり、細分化して販売することになり、その結果どうしても住宅密集地となってしまいます。

また、昔は栄えた街道沿いや商店街、長屋住宅なども、住宅密集地として残っていますが、今は廃れて空き家が目立つ場所も増えています。
この場合は、色々とその地域ごとの対策が必要なので、今回は外してお答えします。
 
住宅密集地のメリットはやはり、日常生活の利便性にあると思います。
徒歩で、日常の様々な用が済み、駅が近いので、どこへ行くにも便利です。
 
その反面、敷地が狭く、家の中で快適な日常生活を過ごすという面からいえば、通例的なプランニングでは、なかなか良い環境での暮らしが出来にくいと思います。
 
部屋の間取りの制約、充分な採光や通風が取りにくい、植栽なども植えるスペースが取れないなど、自然との関わりが少なくなり、郊外の住宅に比べ、色々な制限がでてきます。
 

 

住宅密集地の日当たり・採光で気をつけている点を教えて下さい

 
敷地の形状や大きさにもよるのですが、中庭や吹き抜けをつくって、上部からの採光を、各部屋に届けるというプランにすれば、良い住環境に出来ることが多いのですが、かなりの狭小敷地では、面積的に、中庭や吹き抜けなどのボイド空間を取る余裕がなく、採光が取れるのは、道路側の壁面と屋根面と言う場合が多いのも現実です。
 
一日の生活の中で、一番採光が必要な部屋は、リビング・ダイニングだという場合が一般的ですが、そこにどのように太陽光を取り入れ、気持ちの良い部屋を造るかは、敷地と周りの建物の状況や、ご家族の生活パターンによって異なります。
 
それぞれ特徴を総合的な見地から良く把握し、そのご家族にとっての心地よさが何にあるのかを探り、より良い住環境になるための方策を考えていきます。
 
 

住宅密集地の風通しで気をつけている点を教えて下さい

 
家や人は、「酸化することで劣化」を起こします。
通風は外の空気がマイナスイオンを含んでいるため、「酸化を還元する」と言う意味でもとても大切なものです。
 
風上と風下に窓を2箇所、開ければそこに風が流れます。
また、温かい空気は上昇するため、風は下から入って上に抜けることを上手に利用するよう心がけています。
 
その地域に流れる風の流れを読んで、適切な場所に窓を開けることが大切です。
また、心地よい風の流れを家に呼び込めば、エアコンに頼らずとも、過ごせる日が増えます。
 
防犯を考えながら、夜間、窓を開けたまま就寝できることも大切かと思います。
 

 

安立の家で工夫した点がありましたら教えてください

  1. 明るい太陽の光を各部屋に届けるための工夫
     
    安立の家は二世帯住宅なのですが、建物の北側の1階にお母さんの寝室ゾーン、3階を娘さん夫婦の寝室と書斎(SOHO)ゾーン、そして、その間の2階に、二世帯が使う居間兼食堂とキッチンというゾーニングにし、それら各階のゾーンに太陽光をふんだんに届けられるよう、プランニングの工夫をしています。
     
    まず、お母さんの寝室がある1階にまで、程よい光が届くように、上部を大きな硝子屋根のトップライトにした3層吹抜けの光庭(光の筒)をつくりました。
    その中の、2・3階の廊下は透光性の確保のため、スノコ床にしています。
     
    そして、家族の生活の中心である2階の居間兼食堂にも充分な光を届けるために、部屋の上部に吹抜けをつくり、3層吹抜けの光庭から光を招き入れるようにしました。
  2.  

  3. 建築材料で空気をきれいにし、湿度調整をする工夫
     
    空気の浄化作用、吸湿作用、還元作用のため、床下に炭を敷きました。
     
    また、1階土間はソイルセラミックスのタイル、壁には珪藻土の塗り壁に、床には無垢の木材(産直の秋田杉)を使いました。
    食堂のテーブルには米杉の無垢の厚い一枚板を手に入れました。
     
    それらの材料は湿度の高いときには水分を吸収して湿度を下げ、逆に湿度の低いときには取り込んだ水分を放出し、湿度を程好い状態に保つという調湿作用があります。
    この家はそれらの材料を使って湿度の調節や空気の浄化をしています。
     
    それから、洗面室と風呂はヒノキの板を使っているので、玄関から中庭に移動するとき、ヒノキの香りが漂ってきて、心地よさを引き出しています。
  4.  

  5. 植物との共生ができる工夫
     
    人は周りの植物からエネルギーをもらっています。
     
    屋外的な内部空間である1階中庭の隅に、縦長の通風スリット窓を設けて風を入れ、常緑の植物(棕櫚竹)を植えることで、生活に活力と潤いを与えるようにしました。
    (建築内部で植物を育てるには、トップライトの下であっても、風通しを良くすることと、適正樹種を選択することが大切です。)
  6.  

  7. 二世帯での生活音の軽減のための工夫
     
    1階と2階の床の間に防音対策のためにALC版と防音シートを敷きこみ、2階の生活音が1階に響きにくいように工夫しました。
  8.  

  9. 防犯+通風の工夫
     
    門扉(格子戸)を閉めて鍵を掛け、玄関扉の横の格子の裏に設けた小扉を開けておけば、1階の寝室への通風が確保され、窓を開けたまま就寝できるようにしました。
  10.  

  11. 間口の狭い家のファサードの工夫
     
    表札とインターホンのカバープレートとポストの口を一体化したデザインをし、格子の門扉と格子の壁で壁面のリズムを作り、その中にそれを嵌め込みました。

 

 

安立の家の設計で特に拘った点やそれに対する建築主の感想を教えてください

 
「癒しの空間」づくりという点に拘りましたが、すでに、隣は切り離されて3階建て住宅に建て変わっている、間口2間の長屋住宅の建替えです。
 
自然の少ない大阪の下町で、癒される住空間を造るには、かなり意識して太陽光や風などの自然を導きいれなければなりません。
 
肌に心地よい風、程好い湿度を持った風、嗅覚を満足させる風、それらを通すために、無垢の木材を多用し、床下には炭を引き、土間にはソイルセラミックス、壁には、藁入り珪藻土の塗り壁に、屋根は光を取り込むためにガラス屋根にしました。
 
透明のガラスを通して、雲の流れていく様子や、月の満ち欠けを楽しみ、光庭の緑は、心を潤してくれます。
 
入居後、奥様から「2階のデッキにおいた椅子に座って空を眺めていると時間の過ぎて行くのを忘れる」と言っていただきました。
 
周りの3階建ての家に挟まれ、窓からの眺望は望めませんが、屋根の大きなトップライトを通して、空の流れる雲や、夜空の星を眺めたりしながら、忙しい日常の中にも、ゆったりとした時間を楽しんでいただいているご様子が窺え、とても嬉しく思っています。
 

安立の家・間取り図

 

安立の家・間取り図

住宅密集地に家を建てたいと思っている方になにかアドバイスがありましたら教えて下さい

 
家にいる時間をどのような空間で過ごすかということは、心身の健康に取って、とても大事な要素になってきます。
特に周りを高い建物で囲まれた家は、暗く、風通しが悪くなりがちです。
 
それらを解消して、快適な暮らしを手に入れるために、敷地の特徴を良く分析し、プランを作ることがとても重要になってきます。
  

 

ARKSTUDIO一級建築士事務所 茶之木 宏次さん・羽木みどりの住宅密集地・設計事例

  

画像 建物の名称 紹介文
安立の家

■家の採光は密集地のため、光庭を家の中央につくり、ガラスの屋根からの天空光が、吹き抜けのスノコデッキやスノコブリッジを通し、一階にまで届くようにしています。
■2階床には防音シートとALC板を敷き、1階の母親の部屋に2階の音が伝わりにくいようにしています。

  

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