安全性に配慮した児童デイサービス・江川竜之建築スタジオ 江川竜之さん


 
児童デイサービスでは児童が予想外の行動を起こすことも十分に考えられます。
鋭角部はもってのほかで、ちょっとした角も面取をして、ケガをしにくくなるよう配慮する必要があります。
 
児童デイサービスについて江川竜之建築スタジオ 江川竜之さんに伺いました。
 

お話を伺った建築家

 

ユーザー 江川竜之建築スタジオ 江川竜之 の写真
名古屋市西区名駅2-28-1フェニックスビル5F
052-433-1930

 

児童デイサービスとは何ですか?

 
児童デイサービスという正式名称はなく、『児童福祉法』で規定される“障害児通所支援”内の3種別「児童発達支援」「医療型児童発達支援」「放課後等デイサービス」の総称で使われる用語です。
『建築基準法』では保育所などと同じ「児童福祉施設」のジャンルにカテゴライズされています。
 
身体・精神・発達などに障害のある児童が昼間の一定時間、日常生活における基本的な動作の指導や集団生活への適応訓練などを受ける、日帰りの通所介護サービスのことを示します。
児童発達支援事業は小学校就学前の幼児を対象とし、放課後等デイサービスは小学校1年生から高校卒業までの児童生徒を対象としています。
 

児童デイサービスを設計する際に注意しているポイントを教えて下さい。

1.安全性

 
予想外の行動を起こすことも十分に考えられるので、鋭角部はもってのほかで、ちょっとした角も面取をして、ケガをしにくくなるよう配慮しています。
また不要な段差も極力つくらないように計画しています。
  
ガラスについての配慮も必要で、なるべく割られやすい低い位置に設けないようにし、もし低い位置に設ける場合も、割れにくい強化ガラスや破片になりにくい合わせガラスなどを使用するよう心懸けています。
アクリル、ポリカーボネードで代用する方法も有効です。
 

2.スタッフと児童のゾーン分け

 
サービスを行う児童エリアと事務エリアは明確にゾーン分けをします。
児童の動線と事務エリアが交わることの無いように設計しています。
 
反面、事務エリアから児童エリアが見渡せることも重要な要素です。
お互いが離れすぎないよう計画する必要があります。
 

3.死角をつくらない

 
限られた人数のスタッフで多くの児童を見守る必要があるので、児童エリアには死角をつくらない配慮が必要となります。
 

4.保護者の視点

 
バスによる送迎を行う施設もありますが、多くは保護者が児童の送り迎えを行っています。
保護者が送り迎えに来た際に、スタッフがすぐに気が付ける位置関係としています。
 
保護者とスタッフの信頼関係は非常に大切なことで、玄関付近で交わされる毎日のちょっとしたコミュニケーションが保護者の安心に繋がります。
 
この玄関付近から、児童エリアの学習の様子を見ることができる位置関係にも気を使っています。
活動の様子を実際に見ることができる、という点も保護者の安心に繋がるからです。
 

5.プライバシーの確保

 
入所の申込や相談、入所してからの保護者からの相談など、プライバシーに配慮すべき会話を行う場面もしばしば発生します。
全体的にはどこにでも目が届くオープンなつくりとしていますが、その中にきちんとした個室の相談室を設け、気兼ねなく話ができるスペースも確保しています。
 

 

児童デイサービスにはなにか設計基準があるのでしょうか?

 
一般的に知られている『建築基準法』『消防法』のほかに『児童福祉法』の中に施設基準が規定されており、これを遵守する必要があります。
そのほか『バリアフリー法』や『省エネルギー法』についても要チェックです。
 

補助金の手続きなどのお手伝いもしていただけるのでしょうか?

 
はい、お手伝いさせていただいています。
自治体の補助金申請には図面類の添付が必須となってきます。
建物に関する書類の準備は、通常の設計監理費内で準備させていただています。
 

土地や建物を購入する前の相談にも乗っていただけますか?

 
はい、大丈夫です。
当事務所の管理建築士は一級建築士以外に宅地建物取引士も取得しており、不動産取引業務も行っております。
インフラに始まり、各法令を遵守するために余分な費用が必要かどうかなど、建築士の視点だけでなく、宅建取引士の視点も加味してアドバイスをさせていただいています。
 

児童デイサービスを開業したいけどなにから始めたらよいかわからない方の相談にも乗っていただけますか?

 
当事務所が設計デザインさせていただいた施設は、【運動】を中心に学習を指導し、自立に向けた療育を行うことをコンセプトとした「放課後等デイサービス」でした。
このように【運動】などのような“コンセプトづくり”が非常に大切な第一歩だと考えています。
 
コンサルティング的な業務は行っておりませんが、共にコンセプトを詰めていく段階からお手伝いさせていただくことは可能です。
もちろん建物に関するご相談は随時お受けしております。
 

デイサービスを開業したい方になにかアドバイスがあればお願いします。

 
児童デイサービスは福祉事業ですが、継続させていくためには当然のこととして事業として成立させていくことが大前提であります。
そのためには多くの児童数を受け入れていく必要があります。
小さなスペースで少人数にて事業を大きくしていくことは難しいと感じております。
 
大きなスペースをローコストで改装し、児童が安全・快適に過ごすことができ、かつ保護者が安心して預けることのできる施設を整備していくことをお薦めしています。
 

江川竜之建築スタジオ 江川竜之さんの児童デイサービス・設計事例

  

画像 建物の名称 紹介文
児童デイサービスセンター『ふぃっとくる』

施設利用者のメインエリアとスタッフエリアは、内装デザインのベース色を変えることで、感覚的に異なると意識できるよう意図しました。
またムラのある木目やランダムな照明器具の配置は、児童それぞれの個性を尊重する姿勢を表しています。